成年後見制度は、判断能力が不十分な人の生活、療養看護および財産の管理に関する事務を、本人とともに支援者である成年後見人等が、本人の意思や自己決定を尊重しながら行う法律上の制度である。成年後見制度は、任意後見制度と法定後見制度に大別されている。

 法定後見制度は、後見、保佐、補助の三つの類型によって構成され、対象者の判断能力の程度に応じて、いずれかの類型を適切に選択して制度を利用する。後見類型は、判断力が全くない人、保佐類型は判断能力が著しく不十分な人、補助類型は、判断能力が不十分な人を対象としている。各類型の支援者、保護者に選任された者を成年後見人、保佐人、補助人といい、合わせて後見人、もしくは後見人等という。制度の開始は、本人または配偶者、四親等内の親族等の申立に基づき、家庭裁判所が開始の審判をし、本人の行為能力に一定の制限を加えるとともに、適任者を成年後見人等として職権で選任する。選任された成年後見人等が、付与された代理権・取消権等の権限を適切に行使することで、本人を保護、支援する。

成年後見の制度では後見人に、包括的代理権、取消権という権限が付与され、財産に関する法律行為について、本人の代わりに行うことができる。また、日用品の購入など日常生活に関する行為や婚姻、離婚、養子縁組、遺言などの身分行為を除く全ての法律行為について、後見人が取り消すことが可能である。ただし、代理権には制限があり、雇用契約などの事実行為、本人の居住不動産の処分には裁判所の許可が必要であり、本人と後見人間の売買等の利益相反行為は、特別代理人の選任が必要となる。本人を代理して行う営業を行う場合、または、民法131項各号に掲げる行為をするときは、後見監督人の同意を得る必要がある。

成年後見人が行う後見事務は、大きく分けて財産管理事務と身上監護事務2つである。財産管理事務では、印鑑・預金通帳の保管、払い戻し、年金等の収入の受領、管理、介護サービスの契約締結などの身近な事柄から、不動産などの財産の処分まで多岐にわたる。身上監護事務は、介護保険の認定申請、住宅の確保や維持管理に関する契約締結、医療契約の締結などが主な職務である。また、実際に本人を介護するなどといった事実行為については、身上監護の範囲には含まれない。

保佐の制度では、借財、保障、財産の売買など一定の重要な財産行為(民法131)について、同意権、取消権が付与され、保佐の事務を行う。例えば、本人が保佐人の同意を得ず、不動産の売却をした場合は、保佐人は取り消すことが可能である。しかし、本人の利益を害する恐れがない行為について、保佐人の同意が得られない場合は、本人は、家庭裁判所に対し、保佐人の同意に代わる許可を請求することができる。また、申し立てにより、同意権、取消権の拡張や代理権の付与についても可能となっている。

補助の制度では、預金の管理、重要な財産の処分、介護契約など、本人が申し立てた特定の法律行為について、代理権または同意権の付与の審判により補助人に代理権または同意権(取消権)が付与され、補助の事務を行う。

成年後見制度の問題点としてまず挙げられるのは、医療行為の同意である。医療契約の締結は、成年後見人の職務であるが、医療行為を受けることについては、本人の同意が必要であり、成年後見人には、その同意について代理する権限はない。しかし、後見実務上では、医療機関や関連する職種(施設職員、ケアマネジャー等)から医療行為の同意を迫られるケースもあり、後見人が不利益を被る可能性も高い。急変時など、どのように対応するのか明確な指針が必要と考える。

個人的には、後見人との連絡が取りづらいことが問題と感じている。後見制度を利用している利用者の契約等について、連絡しても1回で繋がることもなく、返信もない状況である。急を要する場合もあり、連絡体制の構築が急務である。

認知症高齢者や1人暮らし高齢者が年々増加しており、親族後見人や専門職後見人だけで支援していくことは難しいと考えられ、新たな後見の担い手として、市民後見人を確保できる体制の整備・強化、地域での市民後見人の活動を推進する支援など、より一層取り組んでいく必要があると考える。