(『人間革命』第8巻より編集)
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〈多事〉 5
(つづき)
こんなわけで、今の騒ぎは道門増上慢であることは間違いない。われわれの活動も、ようやく、ここまできたと喜ぶべきであろう。
この後、広宣流布が進むにつれて、いよいよ最後の第三類の強敵、
僣聖増上慢(せんしょうぞうじょうまん:世間から厚く尊敬され、聖者のように思われている似非聖者)の時代が必ず来るだろう。
これは手強いことを覚悟しなければならない。
その時、もし退転でもするようなことがあったら、なんのために、せっかく信心してきたのか、わけがわからなくなってしまう。
その時こそ、しっかりしなくてはなりません。そこで、自分の一生が、栄光か破滅か、そのいずれかに決まることを知らなくてはならない。
今は、まだ序の口の序の口だが、広宣流布の方程式を、ちゃんと進んでいるわけだ。
あわてる必要はない。沈着に学会の方針通りに進んで行けばよいのだ」
戸田は、まるで他人事のような落ち着き方であった。
十月二十一日夕刻、ある大新聞の記者三人が、戸田に面会を求めて学会本部に来た。
その時も、戸田は、応接室で極めて落ち着き払ったものだった。
「折伏で弊害が社会に起きていると思いませんか。宗教の道場破りといった感じがしませんか。この点はどうですか」
一人の記者が、多くの質問のあとに、意気込んで、こう言った。
戸田は、軽い微笑を含んで口を開いた。