(『人間革命』第8巻より編集)
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〈明暗〉 14
わずか一日半の工程であったが、戸田と一夜を共にした野外研修は、すでに青年たちに大きな変化を及ぼしていた。
和気あいあいのなかで、元気横溢した彼らは、帰途の車中では、次々と学会歌を歌い、意気軒昴であった。
胸中の満ちたりた思いは、清新な息吹に変わりつつあった。
水滸会の第一回野外研修を終えた戸田は、あらためて青年の育成が急務であることを痛感した。
”青年たちに、確たる目標を与えて、大きく飛躍させなければならぬ”
戸田は思索した。
そして、その思索の結晶を、十月一日発行の『大白蓮華』の巻頭言に、『青年よ国士たれ』と題して発表したのである。
巻頭言の冒頭で、彼は、創価学会が信奉する日蓮大聖人の仏法が、科学的批判に耐え得る哲学性をもち、
法理的に最高の教義を備えた宗教であることを訴えていった。
「われらは、宗教の浅深・善悪・邪正をどこまでも研究する。
文献により、あるいは実態の調査により、日一日も怠ることはない。
いかなる宗教が正しく、いかなる宗教が邪であるか、また、いかなる宗教が最高であり、いかなる宗教が低級であるかを、哲学的に研究する。
また、いかなる宗教が人を救い、いかなる宗教が単なる観念的なものであり、いかなる宗教が人を不幸にするかと、その実態を科学的に調査している」
宗教は、観念であってはならず、現実の生活を変え、社会を変革する力を備えていなければならない。
宗教は独善的であってはならず、あらゆる批判に耐えられるものでなければならない。
それは、戸田が、先師・牧口常三郎から教えられた宗教観であった。