私には、少しだけ不思議な能力があります。

今日もお友達が来てくれたのね

さぁ、あなたの話を聞かせて

チュンチュン

「こちらは昨日遺体が見つかった湖です。湖の清掃中にビニールシートが引き上げられ中には白骨化した遺体が入っていたようです。」

私が見つかるまで半年がすぎました。

一枚のハガキが届いたあの日から…

「本当に行くんだな」

「うん」

「何か実感ないな、ずっと近くにいたからさ」

「そうだね…」

幼い頃から一緒にいた近所のお兄ちゃん
優しくて、私が悪いときはちゃんと諭してくれた。

そうなると必然的に私は彼に恋心を抱いていた。

そんな想いを告げる事無く私は東京の大学へと進学して、そのまま就職して、それなりに恋愛をして結婚をした。

夫は、それなりの会社に勤め不自由の無い生活をおくっていました。

ただ夫は繊細で少しだけ弱かったのだと思います。

「ただいま」

「お帰りなさい」

「お隣さん来週からオーストラリアだって~いいわね」

「へぇ~…」

「オパールの採掘所に行くんだって」

突然えりもとを捕まれ顔を殴られました
あまりの強さに私はその場に倒れ何度も蹴られます。

「そうだよ、僕が悪いんだろ?甲斐が無い僕が悪いんだろ!!」

「ごっ…ゴホッゴホッ…ごめんなさい…」

そんな暴力が続いてやがて夫は…

「ごめん、また傷つけちゃったね、本当にごめん、こんなに弱い僕を許してくれ」

「いいの、私が悪かったの、ごめんね私こそ」

泣きながら謝る夫のそばにいて抱きしめてしまう

第三者に理解されるとは思わないけど

私はこんな日々を送っていました。

ある日、実家から電話がありました。

「もしもし」

「元気にしとる?」
「うん」

「今、隣に誰がおるかわかる?」

「誰よ?」

「ちーと待っとり…いいて、おばさん…いいからいいから、ええから、ちーと話してやってよ~」

「…?」

「元気か?」

「おっ…お兄ちゃん?」

「久しぶりやな…なんか大人になってるから妙に照れるな~」

「う、うん、そうだね…」

「結婚したんやってな、幸せにしとるんか?」

「うん、幸せだよ」
「そか、なら良かった。んじゃ、おばさんにかわるな」

私は、幸せなんでしょうか?

そして一年が過ぎた頃
私宛に一枚のハガキが届いた。

「これ誰?」

「あっ、地元の友達だよ」

「へぇ~…」

嫌な予感がしました。

「どんな友達なの?」

「どんな…地元で幼い頃から近くに住んでた人で」

「へぇ~…」

「もう昔の話だよ」
「今こうして便りが来てるんだから昔の話じゃないだろ」

夫の右拳が私の顔にふりかかります。

「思ってるんだろ?俺と結婚して失敗だったてさ!こいつといれば良かったてさ!」

夫の拳は左、右、また左、右と私を殴り続けます。

「悪かったな!俺がこんなんでさ!」

「ゴホッゴホッ、ごめんなさい、ゴホッゴホッ」

夫の暴力は、おさまる事なく続きます。
もう、殴られる痛みも感じなくなり意識も遠のくなか

私は床に落ちたハガキをみました。

大人になったお兄ちゃんと見知らぬ女性が幸せそうに笑ってた。

そして

結婚しました。お互いに沢山の幸せ掴もうな

と書かれてました。
夫が言ったように
もし、お兄ちゃんに思いを伝えてたらと思うけど

ハガキのお兄ちゃんの笑顔をみてたら、その考えもむなしくなりました。

私は不幸だったと誰かは言うのかもしれませんね

でも、計るものなんて無かったから

私には今も分かりません

チュンチュン

ごめんなさい、私にはアナタに何もしてあげられない…

こうして話を聞く事しか出来ない

「お久しぶりですねみぃさん」

皇月くん…

「この魂はもらって行きますよ、コレはここにアルべき物ではありませんから」

その子は…どおなるの?

「分かりませんよ、僕が決める事ではありませんから、アナタも知ってるでしょ?元は第七使団の団長を勤めてらしたのですから」

……

「我々は神になる必要は無いのですから、現状を維持する為に歪みを生むものは排除する。それが我々の仕事ですから」
皇月くん、アナタはそれでいいの?

「愚問ですね」

まだ、追ってるの?彼の事?

「連絡でもあったんですか?」

…ないけど

「そうですか、僕は行きますね」

せめて、その子に新たなる明るい道がひらけますように

私には、少しだけ不思議な能力があります。

でも

それに何の意味があるのでしょう…