野良猫の傷の手当て

 

私の仕事は鍼灸師です。

2020年の4月、

患者さんが来なくなり仕事は激減しました。

する事がないので庭仕事をしておりましたら

一匹の白い野良猫ちゃんが現れたのです。

 

当時私は、

正直猫ちゃんが苦手でした。

ですから、シッシッと追い払ったのです。

しかし、よーく見てみると、

どうやら首元に傷を負っていました。

しかも、かなり大きな傷です。

皮は剥がれて、

血だらけで、

剥がれた皮は垂れ下がっていました。

 

追い払った私は、

「かわいそうな事をしてしまったな」

と思いました。

そこで、もしまた来たら、

助けてやろうと思ったのです。

 

すると次の日も現れました。

「お腹すいてないか?」

そう言うと、猫ちゃんは

「にゃ~」と泣きべその様な

声を出しながら寄ってきました。

「そうかそうか、ちょっと待ってろよ。」

そう言うと、家の中から、

食べられそうなものを持ってきました。

すると彼は一心不乱に食べ始めました。

 

ここで、

野良猫に餌を与える行為に関しまして、

賛否両論あると思います。

世の中には、猫嫌いも必ずいるわけで、

決して社会生活をする者として

全肯定できるものでは

ないかもしれません。

しかし、自分の目の前に、

血だらけで、

皮が剥がれて、

今にも倒れて亡くなってしまいそうな

生き物が現れたら、

助けるのが生き物である

人間なのではないでしょうか?

 

猫ちゃんも、

わんちゃんも、

人間も、

いのちを持つ、

生き物です。

この地球という星に住む、

同じ生き物です。

その生き物が今亡くなりそうなときに、

見殺しにするのは、

私にはできませんでした。

賛否両論あると思いますが、

私は食べ物を与えるという

選択をしました。

 

彼は、次の日も来て、

段々と元気になっていきました。

ただ、傷はあまりよくなっていません。

そのような状態が数か月続いた時に、

彼は再び襲われて

さらに大きな怪我を負ってきました。

これはまずいと思い、

動物病院に連れていこうと思ったのですが

何せ私は猫を触ったこともないですし、

相手は野良猫で

捕まえることはできませんでした。

 

何よりも、

無理やり捕まえて

動物病院へ連れていくことも

正しい事かはわかりませんでした。

 

ただ、

傷の手当てはしなければいけないと思い

とりあえず

動物病院に電話をしてみました。

野良猫なので

連れていけない旨を伝えると

薬だけ出してくれると言うことでした。

私は一目散に病院へ行き、

猫ちゃんの傷の写真を見せて

薬をもらいました。

先生は、

「これは大変な傷で、

普通なら手術です。

長い時間がかかると思います。」

とおっしゃっていました。

 

それでも出来る限りの事はやろうと、

その日からお薬を食べ物に混ぜ、

塗り薬を塗るようにしました。

塗薬は初めの頃は完全に無理で、

塗らせてもらえなかったのですが、

段々と時間をかけて、

ゆっくりと食べている間に

塗ったりしました。

 

あれから2年近く経ち、

それから何度もまた

猫同士の喧嘩はあったのですが、

初めよりは随分とよくなりました。

最初の頃は熱があるようで

ふらふらしていましたが、

最近の彼の姿は、

元気を取り戻したようでした。

 

このように、

目の前に傷ついた

野良猫ちゃんが現れた場合、

どうすれば良いか

迷うこともあると思います。

私の様に

動物病院に電話をして

お薬を処方してもらうのも

一つの方法です。

 

動物病院に行かなくても、

軟膏であればドラックストアで買えます。

動物病院で出るような

医薬品のゲンタマイシンは買えませんが、

クロマイ軟膏という

抗生物質入りの軟膏を購入できます。

 

抗生物質自体は

ドラッグストアでは買えないので、

病院でもらうしかありません。

人間用の抗生物質があれば

4分の1に割ってあげれば大丈夫です。

サワリシンなどの抗生物質があります。

 

野良猫ちゃんの傷は、膿みます。

臭いもきつくなります。

それは膿が原因です。

抗生物質を飲ませ、

軟膏を塗ることで

段々と膿が引けていきます。

 

黒いかさぶたが厚く出来ますが、

かさぶたは剝がして大丈夫です。

その下に

膿が溜まっていることが多いですから、

拭き取れたら取って、

無理でしたらその上に

軟膏を塗れば良いと思います。

 

軟膏は、

指で塗るのはまず初めは無理です。

綿棒につけて、

少しずつ少しずつ、

嫌がらないようにつけてみてください。

自分で舐められる場所でしたら、

軟膏は塗らずに

そのままでも良いと思います。

ただ、首の後ろや後頭部は

舐められないので、

ケアしてあげないと

膿が溜まっていってしまいます。

 

本当に時間がかかる手当てですが、

冒頭にも述べましたように、

大切な一つのいのちです。

一つのいのちを、救うことは、

私は悪い事ではないと思います。

 

ご近所の目もあるかもしれません。

しかし、いのちを助けるという行為は、

私は

天は見守ってくれていると思います。

 

この一件から、

私は大の猫好きになりました。

こんなに猫ちゃんが

可愛いものかと思いました。

 

人生何が起こるかわかりませんね。

コロナのお蔭で、

こんなにも美しい野良猫ちゃんに

逢うことができました。

コロナのお蔭で、

猫ちゃんとの素晴らしい人生を

送ることができました。

 

何事も前向きに考えて、

人生を歩んで行きたいものです。

 

そして、いのちを大切にして、

みんな仲良く生きていきたいものです。