山内惠介特別公演

場所 新歌舞伎座

日時 平成30年2月23日(金) 千秋楽

    開演 一部 11:30~13:05(幕間35分)

        二部 13:40~15:30(終了は10分弱押)

観覧場所  1階やや前列、中央


第一部 「若さま走馬灯」

時は江戸、寛永2年頃、谷中・西念寺裏にある長屋に暮らす浪人、来馬信兵衛。

剣は道場破りで、長屋の人たちの生計も助けるほどの剣術の腕前。

おっとりと、温和な優しい物腰で、長屋の住人からは「若さま」と呼ばれ慕われていた。


配役

来馬信兵衛(浪人) 山内惠介


沖石主殿(浪人) 丹波貞仁

鶴之助(沖石の子) 高垣眞清・藤原詩音(Wキャスト)


(長屋の住人)

お六(元芸人・手内職) 大原ゆう

重助(夜鷹そば屋) 朝倉一

おぶん(重助の孫・丸源の女中)

竹造(大工)戸田都康

お杉(竹造の女房) 長谷川かずき

玄斎(元御用人の八卦見)桂団朝


お勝(居酒屋「丸源」の女将) 西川美也子



根本嘉兵衛(本条藩の元藩士) 青山良彦

八重(根本の娘) 清水佐紀


大河原蔀(本条藩の元御用人) 高井清史

野口左衛門(大河原の家来) 大村健二

松原角十郎(大河原の家来) 橋本隆志

七兵衛(長屋の大家)大河原鉄之助(大河原蔀の息子) 吉若靖弘




第一場

幕が上がり、薄暗い中、腰が少し曲がった大家が、提灯をかざしながら、

左上の階段をゆっくり降りてきます。

後には、子供を背負った浪人が・・・。

夜中に、この長屋に引っ越してきたので、挨拶は翌朝という事に。


朝になると、左手前にある井戸に、長屋の住人たちが集ってきました。

左端には長屋の玄関が、そして舞台中央から右手には信兵衛の部屋が。

(千秋楽では、おぶんが、クシャミをし、、後から出て来られた3名が全員

クシャミをされてました。・・・凄い連帯感と、千秋楽の高揚感の幕開け)

昨晩は、居酒屋「丸源」で、重助と、竹造が信兵衛にゴチになったとの話。

そして、竹造が「若さまが帰ってきた」と花道の奥を見ると、信兵衛が、

五合ほどのひも付きの徳利を肩に引っ提げて登場。

まだ酔っぱらっているのか、ふらふらと二階を見たり、花道下を見たりと

ゆっくり舞台へ。

はんなりとした柔らかな笑顔が長屋の人たちをいやします。

信兵衛、少し寝るとのことで、大工「奥の間ですか?」

向ったのは、押し入れの上段でした(爆笑)。


沖石親子が現れ、長屋の住人に挨拶し、その後、信兵衛の家に。

ある藩の勘定方であったが、飢饉のあおりをくらい、責任を取らされ浪人に。

さらに、妻にも先立たれた。

信兵衛は、白い包みを、10両ほどありますので、生活の足しにと渡します。

もう一度寝るから起こさないようにといい、また押し入れへ。


夕刻になり、突然子供の泣き声がし、長屋の人が信兵衛を起こします。

子供の懐には、信兵衛に宛てた手紙がはいっていて、読むと、もう一度,

名を上げ、家を再興したいので、子供をしばらく預かって欲しいと。

家を興すために、母に死なれた幼い子を捨ててゆく、武士というものに

憤りを感じる信兵衛でした。

最後、立ち姿の信兵衛の悲しみと憤りの混じった顔に、スポットがあたり、幕。


幕前A

大工の竹造と女房が、上手から現れ、「丸源」へ、信兵衛から集まるように

言われたと、おぶんからの伝言で、丸源の近くの道を行きます。

下手花道奥から、若い娘が現れ、舞台まで走り抜け二人に出くわすが、

そのまま怯えたように、下手袖に逃げる。

追っての侍が、娘の行った方を聞くが、女房は機転をきかし反対を教える。

この時、武士に押されて、二人は抱き合うような形に。

竹造は「やっぱり太っている」とか「久ぶり」とかアドリブが毎回変わってました。

二人は、宴会に遅れるからと慌てて、下手袖に駆け込んで行きました。


第二場

幕が開くと、そこは居酒屋「丸源」。

「せつほんかいな~」の掛け声とお六の三味線にのって、上手側で重助が踊ります。

若さまは、真ん中で、女将にお酒を注いでもらいながら、上機嫌。

大工の夫婦げんかでは、若さまに助けを求めると、「ぶちかましてやれ」(これは、千秋楽

で、「やっておしまい」とか「やれやれ」とか色々ありました)

で、なんの宴会かとの話になり、「若さま、嫁をもらうのかい?」

「違うよ」(これは小さな独り言のように言う信兵衛というか、惠ちゃん)

おぶんちゃんは、驚き、女将から若さまに惚れているとからかわれる。

ここで、千秋楽は長屋の人々全員で「ほれたねほの字だね~ホッホ~」と歌いだし、

信兵衛も、一緒に大合唱。

なんの宴会かの話に戻り、若さまはおもむろに懐中から取り出した紙を女将さん

に、衝立に張るように指示(この衝立には浮世絵がはってありました)

「いろはにほへと」3枚ほどの半紙に書かれた鶴之助の手習いの文字。

「勢いがある良い字だ」と、若さま、親ばかぶり発揮。

「鶴之助はここがいいのだな」と頭なでたり、顎をさすったり。

千秋楽は、チューしてたようにも。

「こっちの方もなかなかのものだぞ」と剣を振りかざす仕草。

鶴之助に、素振りを見せてやるようにと言い、鶴之助は紙を丸めた剣で素振りを。

そのうち、木刀を作ってやるつもりと、信兵衛。

そして、八卦見の玄斎に挑み、鶴之助は面をとりました。

謝る鶴之助にもっとやれといい、千秋楽は信兵衛が玄斎のお尻をペンペン。

惠ちゃん、楽しそうでした(笑)。


しばらくすると、追っ手に追われた先ほどの娘が来て、信兵衛は匿って逃がそうとする。

すると、娘は信兵衛の高潔な気性を見込んで、「私の命と思召して」といいながら

抱えていた木箱を翌朝まで預かって欲しいと頼む。

信兵衛は、詳細もわからないまま、翌朝まで預かることに。

そして、寝ずの番をするといい、長屋の連中と、飲み明かすぞ!と。

重助が十八番の「かっぽれ」を踊りながら舞台が暗くなって行きました。


第三場

朝が来て「丸源」では、寝ずの番をしているはずの信兵衛は、女将さんに

起こされます。

そこへ、娘が来て、箱を返して欲しいと。

娘の名前を聴かせてほしいと信兵衛は言い、娘は「八重」と名乗ります。

信兵衛は悪いが中を見たと言い、その茶碗は「青嵐」という名で、本条藩が太閤秀吉

殿下から頂戴したものだと見破ります。

それを、陰で聴いていた八重の父、根本はそこまで知られては生かしておけぬと

切り付けるが、信兵衛が元上役の息子であることがわかり、仔細を話し出す。

信兵衛の父は前の藩主に重用され、要職についていたが、藩主がかわり、藩主の代わり

に藩政を牛耳っていた大河原に疎まれ、お蔵方という職に追いやられた。

そこで、「青嵐」を紛失したと疑いをかけられ、自らの潔白を示すため切腹したと。

やがて、大河内の悪行がばれ、藩から追放。

そして、心ならずも、大河内の部下になっていた根本に「青嵐」を盗むように言いつけます。

その「靑嵐」を、老中に貢物として渡し、要職を得ようとの魂胆でした。

盗まなければ、娘の命はないと脅して。

それを、八重は父を悪人にしたくなく、家から持ち出し、藩に届け出ようとしたのでした。

仔細を聴いた信兵衛は、陥れられた父の濡れ衣を晴らさねばと、策を練ります。

青嵐の木箱に、欠けた茶碗を入れ、二人に持たせます。

そして、青嵐を自分の懐にしまいます。

中央スポットが当たり、見えを切るように、懐に靑嵐をしのばせます。

(カッチョエーエコハート)・・・幕。

 

幕前B

浅草寺近くの道を行く、 大河原蔀一行は、旅支度をしています。

茶碗を奪い、根本親子を殺す算段をしながら・・・。


第四場

浅草・浅草寺境内の五重塔の下あたり、イチョウの大きな木が下手後方にあり、

葉がはらはらと落ちていました。(美術さん、リアルでした)

木の下で、根本親子と大河内一派が茶碗をめぐって争って、結局大河内の手に。

しかし、中を開けると、欠け茶碗が入っていました。

大河内は「たばかったな~」と鬼の形相で根本親子を殺すように命じます。

そこへ、信兵衛がはかま姿で、助っ人に現れます。

しかし、八重を人質にとられたので、信兵衛は懐から出した茶碗を放り投げます。

(この距離が10Mほどあり、良くお茶碗転げてましたが、何故か割れません)

大河内は「来馬のこせがれか~」と言い、切るように命じます。

信兵衛は、まず、居合抜きの達人を切り、次は2人を。

最後、大河内と立ち会うとき、銀杏木の下で、「来馬信兵衛参るー」と言いながら

舞台を背にした大河内に剣を構えます。(めちゃくちゃカッコイイですハート)。

そして「十六夜の月がご照覧だ、お前にはもったいない晩だ」と言い放ち、立ち合いながら、

茶碗を奪います。

そして、「人の命と茶碗どちらが大切か教えてやる」と怒り、井戸に投げ入れ割ってしまします。

大河内は、激怒し、信兵衛に立ち向かいますが、勝てるはずもありません。

根本は責任を感じ、切腹しようとするが、八重と信兵衛に止められます。

信兵衛はもう父のような悲劇は沢山だと言い、切ない顔にスポットライトが当たります。…幕。


幕前C

幕がスクリーンのようになり、江戸の飛脚や人々の暮らしが走馬灯のように流れます。


第五場

半年後の春の朝、井戸のまわりには長屋の住人が集っています。

八重は信兵衛に助けられた恩義を感じ、ちょくちょくお世話をしに来ています。

八重も、井戸で洗濯しています。

そこへ、花道後方から、花見をしてきた信兵衛と鶴之助が帰ってきます。

鶴之助に「若さまおじちゃん」と呼ばれ「お兄ちゃんでしょ」と返すと、

「お兄ちゃんにしといてあげるよ」といわれます。

千秋楽では「ありがと」(美空ひばり風)。

そして、鶴之助は、おぶんに遊んでもらうため、おぶんの家に行きます。

信兵衛は家に入り、八重も入ろうとすると、大工と占い師が「また、丸源行きましょう」

と八重も誘っています。

「おかみさん綺麗ですから・・・昔は」とか、「魚が美味しいんです、タタミイワシ」とか、

ここの大工のアドリブが毎回違い面白いです。


そうこうしていると、なんと、沖石が立派な身なりをして、階段の上に登場。

住人たちに声をかけるが、知らんふりして家の戸をピチャリと、閉じてしまいます。

大工が、信兵衛に伝えると、「会おう」と穏やかに。

沖石は、仕官先が見つかって、仕官先の島根に鶴之助を連れて行きたいと。

以前、借りた10両に足して渡そうとしましたが、信兵衛は「そういう事とは違う」と。

そして、「子供は返します」と。

おぶんの家から呼び出された鶴之助は親子の涙の対面を果たします。

信兵衛は「鶴之助、良く辛抱したな」と、優しく声をかけます。

鶴之助は、信兵衛に手習いや剣術をおしえてもらってありがとうと礼を述べます。

「あっちに行っても、怠けるでないぞ」と答え、旅立ちを促します。

沖石親子は、長屋の人たちに礼をいいます。

大工は犬の木彫りを渡し、お六は仕立てた鶴之助の浴衣を渡します。

八重は風呂敷に鶴之助の着物等を包み、信兵衛に渡します。

信兵衛はその上に、先ほどのお金を乗せ、沖石に渡します。

そして、「鶴之助、木刀は差して行け」と言い、鶴之助は差します。

「沖石鶴之助参る」といい、思わず、信兵衛に抱きつき泣きます。

そして、長屋の連中に見送られながら、沖石親子は、階段を上り、旅たちました。

信兵衛は、ぼんやりしながら家に入ると、風車が居間に残っていたので、思わず

手に持ち、後を追うように階段上で「鶴之助~」と叫びますが、聞こえるはずもなく

引き返し、家の前で、うつろな表情で息を吹きかけ、風車を回します。(超切ないうぅ・・


そこへ、根本嘉兵衛が現れ、藩にお咎めもなく、戻れた礼をいいます。

信兵衛にも、親の職を引き継ぎ500石で召し抱える話がありましたが、嬉しいが

「主取りはせぬつもりです」と断ります。

いきさつから、根本は納得し、藩に連絡しようと立ち去ろうとします。

しかし、一緒に聴いていた八重は「私からもお願いがあります」と、言います。

「信兵衛さま、そしてみなさま(長屋の住人は立ち聞きしていました)にも聞いて

頂きたい事があります」と。

この長屋で暮らしたいというと、お六が、夫婦になるという事かと問います。

しかし、「いいえ、信兵衛さまのおそばで、身の回りのお世話をさせていただきたいのです」

そして、信兵衛に手をついて「お許しいただけますでしょうか?」

信兵衛、「それは困る」と言いながら、照れて下を向き、汗を拭く仕草も(爆笑)。

根本からも頼まれ、照れまくり(大爆笑)。

丸源の女将が、「よ~し決まった、仮祝言は丸源が引き受けた」

長屋の住人たちが、用意をする間、新郎新婦は、花見でも行って来いと、花道に二人

を送り出します。

花道で信兵衛は「八重殿、今宵から、拙者が、あなたを預かります・・・一生」

信兵衛の言葉に八重は「一生」とくり返し、二人で花道をゆっくりと歩いて行かれました。

(この時の八重の手を取り、見えを切るかのような仕草、流し目も最高矢印


【註】DVD等の画像が企画されていないため、うろ覚えで相違点等多々あるかと思い

ますが、記憶に残しておきたく記載しておきました。