ロガリズム -23ページ目

ロガリズム

読んだ本の感想と、戯言です。戯れてあげてください。



石田 衣良
平成13年1月号~平成15年9月号「問題小説」


2222年の未来に、末期の脳腫瘍で余命3ヶ月の瀬野周司が意識だけタイムスリップするSFファンタジー。


石田さんの作品はあまり数を読んでない。

4teen
親指の恋人
波の上の魔術師
5年3組リョウタ組

の4作品だけだ。代表作は池袋ウエストゲートパークシリーズだろうし、きっと面白いのだろう。だからシリーズが続くのだろうし、売れるのだろうから。
けど、私は他の作家さんを読む時間が足りなくなるから、という理由でシリーズものにはよほど思い入れがない限り手を出さないことにしている。

実は4teenを読む前までは敬遠してた作家さんだった。波の上の魔術師と5年3組はそこそこ楽しめたのだけど、すごく好きな作品ということもなく、他人から薦められて読んだ親指の恋人がどうしても受け付けなかった。登場人物の出した結論に拒絶反応が起きたからだ。

敬遠していたのに、4teenは何故読んだのかと言えば、当時好意を抱いてた(音信不通になった今でも好きだけど)男性が、映画にとにかく詳しい人で小説はあまり読まない人だったのだけど、その人が「いま読んでる」と言った小説が4teenだったからだ。そんな、ものすごく不純な動機によって久々に石田さんの作品を読んだらハマったのである。

そして、好きなタイプの作品を読めたことで、何故他の作品は受け付けなかったのかも理解した。

垣根涼介さんの小説が好きなのだけど、たまに「垣根涼介さんは少年が主人公の話は書かないほうがいいんじゃないのかな」と思うことがある。少年が少年っぽくなく、おっさんにしか思えない雰囲気を漂わせてるからだ。大人びた少年には思えない。まるでおっさんだろレベルなのである。

それと逆のことを石田さんに思った。この人の書く30代、40代の男性におっさんぽさを感じない。TVて拝見する限り、御本人もあまり歳を感じさせない雰囲気だ。

企業人が出てきても、その人に「仕事をしているリアルさ」が感じ取れないのはキツい。作品にのめりこめなくなるからだ。

だから少年が中心に描かれていて、少年目線で周囲の大人を書き出す作品は平気なのだ。ということを理解した。

もう1冊、文庫本で「6teen」を購入済。4teenの続編だ。今から楽しみにしてる。

で、今作はSF小説をたしなむ人にとっては王道の設定。現代の人間の意識だけ別時代のとある人物の中に入り込むというもの。
こういう設定はたいがいにおいて過去に跳んで「歴史上有名人」に入り込んで歴史を変えるというパターンが多い。そうでなければ主人公がその時代背景を知らないから動けないという事態にハマり流れが悪くなる。生身でトリップするならどちらでも展開出来るけれども。
意識だけ未来に飛ぶんだ、どうするのかな、と思って読み進めたら、腕時計型の超高性能AIパーソナルライブラリアンがどんな質問にも3Dホログラム再生付きで説明してくれるという展開になった。それは主人公の飼っていた猫の顔をしたスーツ姿の執事なのだ。猫型執事ロボット。ドラえもんか(笑)とニヤニヤする。

こうなってくるとおっさんがおっさんっぽくないというのは気にならなくなる。SF小説は荒唐無稽なものなのだ。リアリティーは必要ない。どれだけ“劇的な展開”で最後まで読み手を興奮させ、引きずり回せるか、が鍵になる。
私は猫型執事ロボットに夢中になった。SF好きにとって「人口知能生命体との友情」ものは大好物だからだ、ある意味、これを出すのはズルい。逆にコレに失敗し、人口知能生命体のキャラクターを読者に嫌われた時点でその作品は失速する。

SFはもともとが架空だから、どんなに科学的御託を並べても穴はあるし、気になる部分は出てくる。大事なのはリアリティーじゃなく、設定やキャラクターに魅力があるかどうか、で。

私は主人公の周司はそこまで好きではないが、猫型執事ロボットと周司のボディーガード“ソーク”にハマった。こういうガタイのいいあっけらかんとした軍人(異常に強ぇ)に弱いね。えーと。ワンピースのルフィの爺ちゃんみたいな奴です。

そんなわけでワクワクして最後まで楽しく読めたはずだったのだけど、最後のエピローグでちょっとしょんぼりした。あとがきを読んで好きなSF作品のオマージュだったのだと判ったけれど、もっと違う形で終わって欲しかった。楽しく読めた小説ほど、エンディングに期待して、思い通りじゃなかったりするとがっかりしてしまうね。

終盤の猫型執事ロボットとのやりとり最高!
超萌えたし、燃えた。AI知能との友情ではありがち設定だけど、いいのさ。ありがちな王道を王道のままで書ききってあるものはそれだけで価値がある。王道から外れなきゃ価値が高くないみたいに言う人が私は嫌いだ。ありきたりで何が悪い。

SF小説が好きな人にはオススメ。