156【JSA】'00年公開の韓国映画。[シュリ]('99年)の翌年なんですね。韓流ブームの始まるちょっとだけ前とか、かな。監督はパク・チャヌク。キャストはソン・ガンホ([シュリ]、[パラサイト 半地下の家族])、めっさ若いイ・ビョンホン([HERO]、[G.I.ジョー]、[ターミネーター:新起動/ジェニシス])、イ・ヨンエ([親切なクムジャさん])。ちなみに北朝鮮軍中士のオ・ギョンピル役のソン・ガンホの声は山路和弘さん。所謂〈フィックス声優(担当声優)〉で[パラサイト]や[シュリ]のイメージのまんますんなり耳に馴染むのですごく観やすいです。他にジェイソン・ステイサムやヒュー・ジャックマンの声も担当してらっしゃるらしいのできっとみなさんも聞いたことある声やと思います。きちんとした声優さんの吹替なので安心して観れます。ちなみにぼくが観たのも地上波の深夜に放送してた吹替版です。韓国映画は半々の確率で吹替版で観ますね。韓国語のイントネーションや抑揚がよくわからないので声優さんの技量にお任せしてるという感じで。
タイトルの[JSA]は「共同警備区域」の意味で〈Joint Security Area〉。北朝鮮と韓国の軍事境界線上にある約800m四方の地域を指してこの区域には会議場施設などが設けられ、板門店と呼ばれている…との事です(Wikiより)
ストーリーは〈AREA〉〈SECURITY〉〈JOINT〉の3つのパートに分かれて話が構成されてます。これはタイトルの[JSA]を上手く活用してる。上手いですよね。このパート別の構成で頭に浮かんだのは'23年の邦画[怪物](是枝裕和監督)。こちらもすごく良くできたシナリオで観終わった後に唸らされました。ただ、[怪物]の方はミスリードが上手く使われていてパートごとの見える角度が微妙にズレるように組み立てられてる。そのミスリードが最後に絡まってひとつの線に結ばれたシナリオがまぁとにかく上手い。(珍しく)何の前情報もなく観た後でしばらく呆然としたくらい(Wikiで調べて観たりするタイプの人なので)で久し振りにおもしろい邦画やなぁと思いました。お薦めしますよ。
話を今作に戻します。
北側と南側の銃が使い分けられてるんですよね。北側のオ・ギョンピル(ソン・ガンホ)達が使うのはブローニングで南側のイ・スヒョク(イ・ビョンホン)達が使うのはベレッタ。これはそれぞれの軍が当時(作中では'98年)正規採用してるとかの背景もあると思うんですけど単純な言い方をすれば銃で新旧のメリハリをつけてる意図もあるんじゃないかな、と。若干、韓国の方が先に進んでるというか。まぁ特にソースとかもない妄想なんですけどね(こんなん考えるの好き)。
韓国映画でぶっちぎりで好きなのは[シュリ]なんですけどそれに並ぶくらい良かったです。「はじめまして」の作品やったけどかなり良かった。正直、〈華〉みたいなのはないかもしれんですね。恋愛要素とか明るいプロットがないから。男女の許されない恋愛を描いた[シュリ]の方がやっぱ〈華〉あるじゃないですか。今作はそんなんまるでないもん。男4人の友情なんで。でもぼく的にはそっちの方がシンプルでよかったです。純粋にシナリオで殴りにきてるから。まぁ確かに他の推理モノとか警察の取り調べや鑑識の技術とかを観たりしてると多少のツッコミ処はない事はないです。でもそんな野暮なスタンスじゃなくで色気のない漢気や友情、作中でも何度も出てきた『命の恩人』の重さが沁みます。あと、今作が観終わった後にネガティブになり切らないのは"クズ"や"(極)悪人"が出てないんですよ。中には「対北」や「対南」を煽るキャラもいましたよ。でもほとんどストーリーの進行の邪魔にならないモブ中のモブなんで気にならない。トラブルのきっかけになった北朝鮮側の上司も素行が良くないけどあの時とった行動は間違ってない。「先に銃を下ろせば…」と答えてるし。あのタイミングでラジカセが急に動かなければあんな騒ぎにはならずに別の運命のルートが動き出してたかもしれない(それがハッピーエンドかは別として)。ソフィーの志を邪魔するかのような将軍も嫌な奴だけど悪人じゃない。それは「対悪」を描写するのではなく「4人の友情」、もっと言えば「2人の友情を超えた絆」をフィーチャーするシナリオだからだと思ってます。『あれが南の歩哨場で起きていたら…私が先に撃っていた』って言った兄貴の無骨な優しさが良かったなぁ。シナリオついでに言えば、最後に4人が集まった時にふざけて屁をしてキャッキャしてて「空気が悪いから扉を開けろ」となってあってはならない遭遇に繋がる流れ…、上手いなぁと思いました。すごく自然で特に目立つ演出や流れでもなかったけど。"最悪の鉢合わせ"を無理なく自然に演出してたと思います。
3人目の主役にあたる女性少佐のソフィーを演じたイ・ヨンエさんが綺麗で演技もお上手やったので主演作品の[親切なクムジャさん]も観てみたくなりました。なかなか観応えのある復讐劇のストーリーらしいですからね。おもしろそうです。
所謂《38度戦》が素材になってる作品。こーゆー作風を観るたびに思うし"無知"を露呈してしまうのかもしれないし表現としては良くないのかもしれないけど、《フィクション》の枠を超えてこないんですよ。世界史や日本史とかに疎い事もあるしまぁ実際にそっちの方は無知やし。乱暴な言い方をすれば恐竜やゾンビや宇宙戦争、西部劇やギャングの抗争や幕末の動乱や時代劇とかヤクザ同士のアウトレイジ、その辺りとジャンルがあまり変わらないというか。もっとぶっちゃけて言えば日本史に対しても致命的に弱いので終戦や敗戦、日本の核に対する心理的抵抗(もちろんその悲しい経験は知らないワケじゃないですが)とかもどちらかと言えばフィクションに寄っちゃう。いけない事なんでしょうけどね。
板門店を訪れた観光客のシークエンス、「写真は禁止」と案内されてるのにパシャパシャ写真を撮る観光客を制してる場面、「写真撮っとるやん」くらいの軽い気持ちで観てたけどラストのラストで予想を超える上手い使い方をして唸りました。あれはキレイな使い方。もしスヒョクの最期を見て唖然とするソフィー…からのエンドロールやったら観終わった後の後味が全然違ってたと思う。シンプルな鬱エンドになってたんじゃないかな。あの写真で昇華された…というとチープで都合良過ぎかもしれんけど。苦味は緩和されてると思います。切なさは増したかもしれんけど。
おもしろかったです。前述の背景とかの違いはあるのかもしれないけど、韓国映画のおもしろい作品のシナリオの秀逸さはずば抜けてると思う。観た事なかったぼくにこの作品を薦めてくれた仲のいいFFさんに感謝したいです。
○
勝126
分22
負8
