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JIZOU峠~第2幕の(39)~

周囲に目を向けると、灯りでまるく浮き上がった足許に黒い斑点が飛び散っているのがわかった。

スイカでも投げつけたように周りの石壁にぐるりと沁みは飛んでいた。

研介の頭上ほどまでそれは跳ねているようだった。それがなにかはすぐに判断できた。

血痕である。

血の噴出す物体が真上から放りこまれたら、もしくは、この底まで自ら飛び込んできたとしたら、きっとこんな液体が高く飛散するに違いないと判断のつくものだった。

石黒が人形のように井戸からひしゃげながら落下するシーンがしぜんと頭に描かれた。

しかし、この高さでは自らダイブしても命は助からないだろうと研介は冷静に考えていた。

ということは、やはり石黒は死んでいる可能性が強いのかもしれない。

自分からこの井戸に向かったのではなく、なにものかが石黒の屍骸を放り投げた疑いが強い。

研介は周囲の血痕を何度も見廻し即座にそう判断した。

JIZOU峠~第2幕の(38)~

ランプをロープの先に括りつけ、真下へするすると妙子は下ろした。
研介は休むまもなく石階段を数段上り、それを受け取った。
慣れればそれほど難しい石段ではないと感じた。

そして今度は研介が真下から妙子を照らした。
妙子は身体能力に優れているせいか、研介の目の前までやってくるのに、十分と時間は懸からなかった。
無事二人は天国か地獄か判然としない、冥い世界の入口に立っていた。

予想通り、石壁の蔭にはなっていたが膝元に木製の扉が存在した。

腰を屈めなければ通過できない勝手口ほどのものだった。

腐敗し、ささくれだった板張りの扉は、まるで二人の登場を待ちくたびれたように、すでに半分ほど口を開けていた。隙間からは冷たい風が洩れてきて、二人の躰に纏わりついた。
――これがそうなのだ。
研介は乾いた唇をなめ、真田家の「隠れ砦」の全貌が明らかになる扉を凝視していた。

心臓が破裂しそうなほど興奮している。妙子も大きく呼吸をしているようだった。
二人は息を呑み互いに視線を重ねた。
いよいよだと、二人は目で会話をした。

JIZOU峠~第2幕の(37)~

上部の井戸穴が野球のボールほど小さくなった。

すでにランプの灯はほとんど届いていないようだった。

薄暗かったが、目が慣れてくると、内部の所々に亀裂が抜けているのが解った。

その隙間から毬藻にも似た植物が緑色で生えていた。呼吸を思わず止めていた。

あと一メートルほどだと感じたが、右足が次の階段を見つけられないでいた。

そのとき、男の耳に冷んやりとした空気が当るのを感じた。

ひょっとしたら階段が終了したのかもしれないと、そこで察知した。何度か爪先で宙を探り、背後を窺った。すると、すぐそこに隆起した地表が見えた。
――ここからは飛び降りろということだろうか。
男は真上を見上げ、頷いた。

果たして妙子がその行動を確認できたかは定かではなかった。

男は下唇を噛みしめ、おもいきって手と足を離した。

ふわっ、とジェットコースターの急下降にも似た感覚が肚底から浮んだ。

躰が宙をゆっくりと流れ、膝に強く鋭い振動がやってきたたとおもったら、靴裏で硬い土の感触を感じていた。だが、尻が勢いあまって壁におもいきりぶつかった。
研介は、無事地下の世界に到着していた。
手の皮膚は擦り剥け、水っぽい肉が赤く覗いていた。

額からは脂汗が噴出し、呼吸は乱れ、手首の血管はピクピクと蠢いていた。

背中にべっとりと汗が沁みている。

もしこの峠から巧く脱出できたら腕立て伏せを毎日、十回ずつしようと真剣に研介は考えていた。

真上を見上げながら、妙子に向かい、研介は両腕を大きく振った。
妙子は意味を理解したように灯りを左右へ振った。

三連休の最後ですので

今日は三連休の最終日ですから、本の紹介でいきます。


本日はこれ。「藤沢周平」先生の代表作、「蝉しぐれ」。

映画にもなったんですっけ?

でも、ビジュアルでは表現できないでしょうね。


藤沢先生の作品は。 脳のなかで漂う香りとか、雰囲気を行間から得るような作風ですから。

まあ、読んでみてください。ちなみに私が大変好きな作家のひとりです。


       ↓

※ 「クリックすると、詳細がわかります。」


明日からは、「JIZOU峠」に戻る予定です。

「芥川龍之介」、凄いです

今日は、どんな本を紹介しましょうか。

エンターテインメント系もいいですが、

敢えて、こいつでいかが?


純文学の王道。

「芥川龍之介」


はっきりいって、国語の授業を受けていたときは

大嫌いな作家のひとりでした。


しかし、いま、なにも考えずに読むと、

最高にかっこいい作家だと思う。

というよりも、わたしが読んだいままでの

作家のなかで、もっとも日本語の使い方が

うまい作家だと思う。


早死が悔やまれますが、後半の「河童」なんて

作品は完全にイッテマス。


わたしが好きな作品は「藪の中」。


読んでみると、勉強になりますよ、日本語が!

そして、構成、深み、すべてが。

「ひまだったら、近くの本屋ででも買ってください。」


わたしも最近、また、あさるように読んでいます。

それにしても絶妙な日本語つかいますよ、このひと。

さすが、夏目漱石も絶賛するわけです。



これは基本!!

作者の手児奈です。


「JIZOU峠」も中盤に差し掛かり、この後が

非常に気になりますが、時々、小休止を入れながら、

話をすすめていきたいとおもいます。


このサイトも、多くのかたに読んでいただいているようで、

日々、ビューがあがっていきます。


そこで、私の作品を読まれているかたに、こっそりと

お勧めの本を今後はご紹介しようかなと考えています。


今日は、これ。


      ↑

※「詳しくは、クリック please!」


ミステリーホラーの王道。「スティーブン・キング」作・

「ミザリー」です。

私は個人的に洋物というか、翻訳ものは好きではありません。

なぜなら、日本語に長けた訳者があまりいないからです。

「本」というものは、作者の心や、文化が行間からにじみでて、

なんとなく文字にはなくても雰囲気を感じ、面白さを痛感するものです。


そして翻訳ものは訳者が作者になりきり、かつ翻訳語に長けていて

はじめて良い作品になりうると思います。


翻訳本のなかでも、私はこの「ミザリー」が好きです。


日本語がうまいというよりは、私の知る限り、キングの訳者では、

「矢野」さんが、なぜか一番、心に響き、状況が目に浮かびました。

好き嫌いはあるかもしれませんが、キングのなかでも、この「ミザリー」が

好きだという方は多いですよね。

そんなところに秘訣があると私は感じています。


「真面目に面白く、真面目に身近な恐怖を

感じれる作品です」

ぜひ、読んでみてください。


JIZOU峠~第2幕の(36)~

「大丈夫―?」
妙子が唇に手を添えて聲を陥とすのがきこえた。
研介は朦朧とし頭上を見上げた。

ロープの先がすでに残り少なくなっていて、片腕がやっと握れる程度だとわかった。

あとは手足を駆使し、石段をロッククライマーのように降りるしかないようだと悟った。

研介は左の爪先をふんばり、なんとか右足を許の石段に戻した。
岩場を横断する沢蟹のようだと自分を感じた。肩越しから恐る恐る背後の底を窺った。

すでに終点は近いようで、空井戸の底があと二メートルほどにみえた。

だが飛び降りるにはまだ危険であり、研介の顔の前に凸の一段目が確認できた。

彼はおもいきり右手の五本指でそれを掴んだ。ひんやりとした無機質な感触だった。

靴底に泥が付着しているため、足許はまだ滑りやすくなっている。し

っかりと右手で一段目の石を握った。なんとかいけそうだと感じた。名残惜しかったが、彼は左手もロープから離した。生まれたばかりの赤ん坊と引き離される母親の寂しさとはこんなものだろうかと研介は感じた。体重が後方にすこし流れたが、手足は石段にしっかりと噛み合っているようだった。指だけで石段を握っているため、肩の筋肉がプルプルと震えた。何度も背後に落下する映像に脅かされた。
男はその後、五歩下ることに成功した。

慎重に振り返っては熱い息を吐いた。

頑張れ、あと少しだと、何度も自分に言い聞かせ、黙々と足を降ろした。

JIZOU峠~第2幕の(35)~

ギッ、ギッと静寂に鈍い音が感覚をあけて反響する。

次第に、ぼんやりと浮かぶ妙子の愛らしい表情が上部で小さくなっていく。

弦月の放つ黄色い光が、狭まった視界の先に映っていた。

腕の筋肉が震えはじめ、足の爪先で一つ目の石段を探った。

右へ左へロープが軋む。研介の推測ではこの辺りから一段目の石段が始まる筈だった。

ロープが揺れるせいか位置が定まらず、肩と腕の筋肉がゴムのように伸びきる感覚がした。

綱に全体重が載っているせいなのだろう。

足を井戸の壁面に固定しようとしても、どうしても滑ってしまう。

早くしなければ。限界に近いと感じた。そのとき、左足の爪先が石の窪みを捉えた。

硬い感触だった。そのまま左の爪先をその上に引っ掛ける。

靴底の半分ほどに石の粗忽な感触が伝うのがわかった。

予想よりも石段はかなり大きめのものだと理解できた。レンガの約半分ほどの幅だろうか。
研介はその後、ロープに手をかけたまま、なんとか五段ほど注意深く下へ降りることに成功した。

研介の額には滝のような汗が溢れている。

慎重に足先で探りながら降りたが、真っ直ぐに階段が下へ続いているのがわかった。

これなら平気かもしれないと、研介の意識へ余裕の気持ちが張りついたとき、突然、右足がバナナの皮でも踏んだようにツルッと滑った。
「あああっ!」
研介の聲が井戸内に反響し、するすると潜っていく。研介の右膝に激痛が抜けた。壁におもいきり擦ったようだった。だが左足がなんとか石段に固定されていた。研介の右半身は不安定に宙を揺れていた。ロープはそんな姿をあざ笑うように、左右へ振り子のように波うっていた。

JIZOU峠~第2幕の(34)~

研介は妙子に視線を向け、縁に両手を引っ掛けて脚を穴に滑り陥とした。

闇に吸い込まれるような感覚が襲った。

太っているせいなのか、かなり息苦しく感じた。

肩が狭い囲いに擦れている。見た目ほど大きくない空洞であり、恐怖がじわじわと沸き起こる。

蜘蛛の糸を伝い天界まで昇ろうとたくらんだ大悪人を芥川龍之介の本で過去に読んだが、そいつはさぞかし肝の据わったやつだったのだろうと研介は現況に照らし合わせ考えていた。

自分はたかが数メートルで及び腰であり足が竦んでいる。
握力測定器の針を振り切ってもおかしくないほど掌に力をこめ、研介は綱を掴んだ。
さあ、ショーの始まりだと、闇が叫んだ気がした。
研介の手の皮膚はすぐに熱を帯びた。テ

ニスをしたせいか、掌には水脹れがいくつか浮んでいることに気づいた。

親指の肚の水泡が痛く、研介は眉をしかめていた。

しかし気を抜いたら即座に、真っ逆さまに転落してしまうだろう。

石壁に両脚を拡げ踏ん張った。靴のゴム底が滑り、汗が顎から滴っていた。

肩で呼吸をして研介はゆっくりと進んだ。

ぬるっ、という厭な感触が掌に走ったと思うと、次の瞬間火傷のような激痛が親指を抜けた。

温い液体が滴り指の皮膚がヌルヌルと変化し、水脹れが破裂したのだとわかった。

研介はしばらくその場で動作を停止していたが、たかが指の皮一枚だと己を鼓舞した。
――気にするな。ここまできたらやるしかないんだ。

JIZOU峠~第2幕の(33)~

9「地獄への扉」


研介が、過去にこの峠を所有していたのは真田家だと詳細を説明すると、妙子は黙ってしまった。衝撃が強かったのか、涙を浮かべたまま暫く家紋を見上げていた。
研介は、妙子が真田家の末裔であるなら、この寺に隠されている数々の秘密を暴いてやりたいという心境に駆られていた。

「隠れ砦」など伝説だと半信半疑だった先ほどとはすでに訳が違うと研介は拳を握っていた。

なんらかの謎が秘められた峠だということは、もはや自明の理なのだ。なにかが、この峠を霧のように包んでいる。疑う余地はないと感じた。
――「曹洞宗蓮華寺」。真田家所縁の寺。
敷地には涸れ井戸と鐘突き堂、観音堂しかない。

巨大な仏像に異様な鼠や蛙。厠も見当たらない風変わりな寺、しかしその背後には……なにかが潜むと研介は考えていた。
――裏の世界が拡がっているのだ。
研介はその確信に導かれるように行動を開始していた。

鉄パイプにくっついた結び目を刃物で切除し、トランクから運んできた真新しいロープを改めて固く結んだ。井戸の縁に鉄棒を固定させ、地下にロープを放り投げた。
研介は小豆ほどの大きさの小石を足許から拾い、井戸に放り投げていた。闇を切り裂きそれは陥ちていく。二秒ほど経ってから石が小さく跳ねる音が井戸の底から届いた。

さほど深くないことがそこで解った。せいぜい二メートルから四メートルの間の深さなのだと感じた。
研介はロッククライミングなど未経験だったが、ロープを握り締め井戸の縁を黙って跨いでいた。

ロープの長さは底まで遥かに満たないようだったが、途中からは握力と足の力で、石段を這えばいいと考えていた。
研介はおもいきり呼吸をした。
――行くぞ。
研介はポーチを腰のほうへ廻し、手に唾をかけた。

運動不足の感が否めない自分は、これからの困難を打破できるだけの躰力を具えているのだろうかと不安が纏わりついた。

脇には、心配そうにランプで井戸の底を照らす妙子がいる。

彼女の目には、明らかに心配と落ち着かない心境が混在していた。

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