びわを買ってきた。


懐かしい。


パパや娘は大喜びだ。


パパは記憶にある味覚を思い出し、


かぶりついた。


娘は初めて食べるその甘味に


感動した。


私は


いいのだ。


もう一生分食べたような気がする。






昔々


私が小学校低学年だったころ


斜め向かいのお宅に大きなびわの木があった。


その年、


びわが豊作だった。


垣根を越えたびわの木が


まぶしいオレンジ色の実をたっくさんならし、


食べてくれと言わんばかりだった。


私や兄弟たちはじーっとそれをながめていた。


すると、そこのお宅の人が気付いたらしい。


窓からこっちを見ている。


恥ずかしくなって、私たちは身をひっこめた。


しばらくすると


ピンポーン♪



山盛りのびわがやってきた!


「いやー今年はたくさんなったのでー…。」


なんと


私らの気持ちをくんで


びわをもいでくれたのだ!!!!!


その後の対応はどうなったかは知らない。


多分母親がやってくれただろう。


私らはありがとうしか言えなかった。


育ちざかりの


食べ盛りに


甘くて


独特の風味のあるその果実


山盛りだっただけに


気の済むまで食べた。


ほんとうにおいしかった。






その斜め向かいさんは


なぜかすぐ引っ越してしまったが


びわの実は震災前後まで生えていたはずだ。





その後


仕事でびわを扱ったり


久しぶりに会った友達とお茶したときに食べたケーキにびわが乗ってたり


時々お目にかかったが


そもそも大人になると


どうやら果物を食べる機会が減るらしい。


子供がいるから果物を買う。


さらに


パパが果物が好きなことが昨日分かった。


そうだったんだ。 


単なる甘いもの好きかと思っていた。




ではまた。