今日も名前を呼ばれない。


名前を忘れているのか、名前をわざと呼ばないのか、どちらなのかは判らない。

家族の中で私だけが名前を呼ばれない。


それは今に始まったことじゃなくて数年前からだけど、やっぱり自分だけが名前を呼ばれないのは気になる。


もう年で、ボケ始めてるというのもあるかもしれない。

けど、あの人はひねくれているところがあるからボケたフリをすることもあるし、本当のところは判らない。


ボケたフリをする理由は寂しくて構って欲しいからだろうけど、だったら素直になって欲しいと思う。

ボケたフリをする必要はないと思う。


何度教えても姉の名前で呼んだり、私の名前以外で呼ぶ。

あの人の中で私の存在は抹消されているのだろうか。


もうあの人に名前を呼んでもらうことは諦めてしまった。

名前を呼ばれないことに違和感はあるけれど、別に今更素直に呼んで欲しいとも思えなくなった。


昔は好きだったあの人も、いつも間にか私の中で、好きではなくなってしまっていたようだ。


卒業してから一ヶ月くらいしたころだろうか。

昔お世話になった先生が地元の学校から他の学校へ移るということで送別会をすることになった。


そこでやはり、というか思い知らされた。

集まった周りの皆は自分の夢に向かって前に進んだり、仕事をしたりしているのに、私だけが何もせずに立ち止まってしまっているということに。


わかってはいたけれど、皆が頑張っているのに私は何もしていないということが気まずかった。

「今何してるの?」や「これからどうするの?」といった質問をされると本当に困った。

あまりされたくない質問だった。


自分自身がそういう状況を作ってしまったからいけないのだと思っても、実際そういう質問をされるのが嫌だった。


それから、私は仕事を探そうとはした。

バイトもしてみた。


だけど、選んだバイトがいけなかったのだろうか。

もともと他人と関わるのが苦手な私は、接客をしようと思うと手が震え、大きな声が出ず、常に緊張していた。


迷惑をかけるだろうということはわかっていたけれど、辞めたくて辞めたくて仕方なくて一週間と経たずに無理やり辞めてしまった。


本当に申し訳ないことをしたなと、今でも思う。


それからはまた引きこもり生活に逆戻り。

仕事を探して外へ出ようと思っても、一度引きこもってしまうと、なかなか外に出られなかった。


だから、何か家に引きこもっていて出来る仕事はないだろうか、と考えた。

要は人と関わることから逃げたのだ。

高校3年の冬、学校を長期休むことがなかった私が病気で2週間くらい家で寝込んだ。


その頃、進学しようと考えていたけれど、自分がどんな仕事ができるか、どんな仕事が向いているか、いろいろ考えた末に結局、自分がなにをやりたいのかわからなくなってしまっていた。

それで、進学せずに、就職先も探さずにいた。



求人広告を見たり、ハローワークに行ってみたりもした。

だけど、何をしたらいいのか全然わからなかった。



高校を卒業後、仕事が見つからなかった私は家に引きこもるようになった。


たまに外に出て運動はするけれど、他人と関わらない生活は引きこもっているのと同じだろう。



学校は卒業してしまったし、仕事はしていないし、やることは何もなかった。

でも、何もないからこそ、今まで溜めていたやりたいことをやろうと思った。



――絵を書く事。


自分が今まで時間を忘れてやってみたいと思っていたことだった。

だけど、絵を描くことは好きだけれど、何だかいくら描いても虚しくはあっても楽しくはなかった。



高校を卒業するまでは、友達とふざけて描いたり、友達に「こんなのを書いたら喜んでもらえるだろうな、面白がってくれるだろうな」と思いながら描いていた。



それが、卒業してからは友達に見せられなくなった。

絵を描く友達は新しい学校や職場に慣れるために頑張っていたので、会うこともなかったからだ。



友達がいたからこそ絵を描くのがあんなに楽しかったんだなぁ、そう思った。



ネットでもいいんだろうけど、私はネットではなくリアルの人がよかったのだろう。

ネットで絵を見せるということはしなかった。



小学生や中学生の時、美術や何かで賞をとっていたからそこそこ絵は得意といっていいのだろう。

だから、その時は絵が描ける仕事として、漫画家に憧れていた。

将来は漫画家になろうと思っていた。


今となっては、漫画をかけるほどに絵は上手いとは思えないし、儚い夢を見ていたんだなと考えてしまう。


そんなこんなで、絵を描くのは早々にやめてしまった。


気晴らしに大掃除をしてみたり、運動したり、姉がいない時にはピアノを弾いてみたりした。


ピアノを姉がいる時に弾かないのは、下手な演奏をあまり姉に聞かれたくないからだ(笑)

言っておくが、11年間ピアノを習ってはいたが、練習をサボっていたため、そんなに上手くはない。


こう考えてみると、私はいつも中途半端なままだ。


やることがなくなったら、PCで動画を見たり、本を読んだりした。


仕事を探すことをせずに堕落した生活を送っていたのだ。