日蓮大聖人今月のお言葉

『祈祷抄』（きとうしょう）

されば法華経の行者の祈る祈は、響の音に応ずるがごとし。影の体にそえるがごとし。すめる水に月のうつるがごとし。方諸の水をまねくがごとし。磁石の鉄をすうがごとし。琥珀の塵をとるがごとし。あきらかなる鏡の物の色をうかぶるがごとし。

文永9年（1272）執筆

『昭和定本日蓮聖人遺文』673頁

（訳）
法華経の行者が祈る祈りは、必ず成就するのです。それは、響きの音に応じるように、影が本体に添うように、澄んだ水に月が映るように、水の精が水を招きよせるように、磁石が鉄を吸い付けるように、琥珀が塵をとるように、明鏡があらゆる物の色を映し出すようであります。

『祈祷抄』は、複数の著作が結合して、ひとつの著作となりました。また、宛先は不明でありますが、最蓮房とする説もあります。本書は、題号に｢祈祷｣とあるように、祈りに関することが主たる内容です。
釈尊が説かれた教えのうちで、最も肝要ある法華経によらなくては、まことの祈祷は叶えられないことを明示し、その当時の事例を挙げて、具体的な論証をします。
冒頭に挙げた一節では、法華経の行者(法華経の信仰者・法華経の修行者)による祈りは、必ず成就することを示すのです。祈りが成就することの譬喩として、

①響きの音に応じること、

②影が本体に添うこと、

③澄んだ水に月が映ること、

④水の精が水を招きよせること、

⑤磁石が鉄を吸い付けること、

⑥琥珀が塵をとること、

⑦明鏡があらゆる物の色を映し出すこと

の７つを挙げています。

法華経の行者の祈りは、必ず成就することを説いていますが、同じく『祈祷抄』にて「法華経の行者の祈のかなはぬ事はあるべからず」(『昭和定本』679頁)とあり、法華経の行者の祈りにおいて成就しないものはないと、説示されていることからも明らかです。

自己の日々の安穏はもちろんのこと、縁者の安寧や社会・国家の安泰という祈りも、法華経でなければなりません。法華経の行者の祈りは、必ず成就するのであります。

※今回は、４９号です。

バックナンバー（過去号）も、当ページにて公開しております。

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