麻酔から覚めて、お昼を食べた後
また眠りたかったのだけれど、
同室の方の見舞客のおしゃべりに
閉口した。
同室の方は80歳を過ぎた
湯婆婆によく似たやさしい
典型的なウィーンの
上流階級の奥様だった。
とても上質なコートに、素敵な身なりの
50代の娘さんとその夫が
毎日、長時間お見舞いに来た。
私が麻酔から醒めた時も、
その娘さんが大声でおしゃべりしていた。
娘さんは毎回、
病院のスープがまずいなど、
自分が食べるわけでもないのに
食事の文句を言った。
そして自宅のお手伝いさんの悪口を
延々と続けた。
ガン病棟に入院したときは
寛容になることを教わった。
あの入院は私の人生で必要不可欠な
ものだった。
今回はとにかく2日後には帰れるんだと
それだけを自分に言い聞かせた。
ガン病棟では、隣の患者さんの娘さんが
毎日スープを作って持ってきた。
湯婆婆の娘さんは、
病院食の悪口を言うだけで
自分で作りさえもしない。
家には食事を作ってくれる
お手伝いさんもいるというのに、
そのお手伝いさんに作らせて、
持ってくることもしない。
湯婆婆が気の毒だった。
私の執刀医が来て、
手術がうまくいき、あと2泊で帰れると
告げにきたとき、
湯婆婆から、
「あなた、お家に帰れて
本当に羨ましいわ」
と言われた。
胸が痛んだ。

