こちらの記事の続きです。

「リフレ理論も政策も正しい、だが逆風で時間がかかる」=岩田規久男

 

12日 6月 2018

── 当初、「2年でインフレ率2%」を掲げたが、現時点では達成時期も見通せていない。


 岩田 一番の問題は、日銀の金融政策は完全にリフレのレジーム(枠組み)に転換したのに、財政政策は2014年4月の消費税率引き上げで緊縮的になってしまい、リフレレジームが壊れたことだ。

 

https://www.weekly-economist.com/20180612bojexit34/

 

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前回、経済学をクソミソに言いましたが、大げさでもなんでもないのです。

経済学を学んだ理系の人、そもそもそんな人は少ないのですが、そういう経験のある人は経済学のデタラメさに必ず呆れます。

「バイアスを排除して真実を追求しよう」という姿勢が、経済学には決定的に欠けているのです。

上記の岩田規久男氏のように笑

 

世の中にはいろいろな学問がありますが、科学の手法を真似ながらこれほどバイアスまみれになってしまった学問は他に見たことがありません。

なぜ経済学だけがそうなってしまったのか?

上記のインタビューの最後で岩田氏はこのように述べています。

私は学者として本や論文を書いて世間に訴えることで日銀の政策を変えようとしてきた。だが、副総裁に就任する2年ほど前には、それでは全然効果がないと思うようになった。日銀の正副総裁や審議委員を選ぶのは首相で、国会で人事が承認されなければならない。国会議員に働きかけるのが早道だと気づいた。

そうですね。

経済学というのは、常に政権にすり寄ってきました。

正しいか間違っているかではなく、政権に取り入ることが重要なのです。

ケインズは早くから政治活動に傾倒し、パリ講和会議やブレトンウッズ会議に関わっています。

クルーグマン教授はクリントン政権の政策ブレインでしたね。

 

政治と経済は不可分なので、どうしても山師のような”声の大きい”人間が、地位や名声を求めて政権にすり寄ってきます。

経済はいろんなものが動き、価値の尺度である通貨でさえ伸び縮みするので、いくらでも後で言い逃れできます。

結果が出なくても「消費税のせいだ」と言ってしまえばいいのですから笑

 

そして真実を追求しようという謙虚な姿勢を忘れ、その時々の政権において声の大きかった人の妄想が本になってしまった。

それが経済学の教科書なのです。

 

そして、そんなでたらめな教科書で学んだ人がまた経済学者になり、ノーベル賞を取ったり、中央銀行総裁の椅子に座ったりするのです。

え?言いすぎじゃないかって?「いくらなんでもノーベル賞学者や中央銀行総裁が間違うなんてことがあるの?」そう思うかもしれません。

そうですね。数学や物理学の世界ではそんなことは起こりません。

しかし、経済学の世界では、それが普通に起こるのです。

前回見たとおり、ノーベル賞経済学者のクルーグマン教授ですら、日本経済の根本的な理解を誤っていたのですから。

 

それでは冒頭の岩田規久男元日銀副総裁。リフレ派で最も声が大きかった方がどんなふうに間違っていったのか、見ていきたいと思います。

 

消費増税が経済の足を引っ張るという間違い

── 消費増税の影響はそんなに大きいのか。

 岩田 増税の需要下押し圧力は、私が心配していた以上に強く、かつ長引いた。1997年に消費税率を3%から5%に引き上げた時と比べて、はるかに強かった。

リフレ派が必死になって主張する消費税悪玉説。

これは本当なのでしょうか?

 

主要税目の税収(一般会計分)の推移

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/011.htm

 

上記は主要3税目(所得税・法人税・消費税)の税収推移です。

所得税・法人税はアップダウンが激しいですが、消費税は税率アップしたあとはほぼ安定していることがわかります。

 

消費税収から割り戻して計算される、消費税課税対象となる物品の消費総額は以下のようになります。

 

消費税創設当初は免税点も高く、多くの中小企業が免税となったため参考になりませんが、消費総額は概ね200兆前後で推移していることがわかります。

消費総額のみをグラフにすると以下の通り。

 

ずっと堅調ですね。

百年に一度と言われたリーマンショックでも、ほんのちょっと下押しした程度です。

消費増税は税率変更時に駆け込み需要と反動減が見られるだけで、長期の消費には影響を与えません。

これは経験上も理解できるはずです。

消費税を払うのが嫌で消費をやめたことって、今までにありますか?

私は一度もありません笑

 

よく言われる通り、消費税は景気の影響を受けにくいのです。

景気が良かろうが悪かろうが、人は生活するためにコンスタントに消費活動を続けます。

日経平均と消費税収のグラフは以下の通り。

http://www.garbagenews.net/archives/1778034.html

 

日経平均が上がろうが下がろうが、消費税収≒消費総額はびくともしません。

消費税悪玉論を唱える人は、それこそ消費税が呪いのように何十年も景気を押し下げたかのような主張をしますが、そんなわけがありません笑

消費税を取られるのが嫌だから、何十年もハンガーストライキをしたんですか?

もしそうなら欧米はとっくに滅んでいるでしょう。

 

消費増税が景気減速の悪玉になるからには、消費活動の減退というプロセスを踏む必要がありますが、そのような兆候は全く見られません。

前回オイルショックの例に触れましたが、生活で必要であればいくら高くてもガソリンを買わざるを得ず、どんどんインフレになりましたね。

逆に必要でないものは、いくら異次元緩和をやっても買いませんでした。

人は必要なものを必要なときに必要な量だけ坦々と買うのであり、商品券を配ろうが消費税をあげようが、期ズレが起こるだけ。

長い目で見たマクロの消費は増減しません。

消費税悪玉論はウソなのです。

 

上記「消費税収と日経平均のグラフ」の引用元のガーベージニュースもそのような消費税悪玉論者ですが、彼らはよく、「増税は景気を冷やすから、増税しても総税収は増えないんだ」という主張をします。

しかし消費増税は税率に完全に比例して税収を押し上げます。

消費増税時に総税収が減ったのは法人税収と所得税収が減ったからですが、これは同時期に法人税率と所得税率の引き下げがあったからです。

 

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c01.htm

 

所得税についても1998年には定額の特別減税が実施され、99年は税率改正による恒久減税が実施されました。

消費税悪玉論者はこのようなことを知らないわけがありませんが、絶対に言いません笑

必死になって自説に有利な部分だけを切り取って見せようとします。

 

そもそも増税がなぜ景気を押し下げるのか?

増税されるとお金が吸い取られてどこかに消えるような気がするようですが、そんな事はありません。

政府は吸い取った税金を、歳出という形で一円残らず民間に還元するのです。

政府が100円で物を買っても、民間が100円で物を買っても、GDPに与えるインパクトは同じです。

公務員の給与がどうこういう人もいますが、公務員給与だって民間家計です。

税収が100%民間に還元される限りにおいて、増税が景気を押し下げるという理屈には無理があります。

 

「増税は景気を冷やす」-経済学の教科書に書いてあるこの一般理論も、やはり時の経済学者がポピュリズム政権に近づくために用いた嘘だと思います。

実際、近年でも景気が良かったのは増税時のクリントン政権であり、減税時のブッシュ政権は低調なままでした。

お金に色はついてません。

政府が使おうが民間が使おうが、結果は同じなのです。

 

経済論争ではこのように、意図的に”ウソ”を並べて自説を補強する論調が目立ちます。

経済ではたくさんの数値が動くので、言い逃れをしようと思えばグルグルグルグルいつまでも屁理屈を並べることができ、そのうち時間切れに持ち込むことができます。

そして相手もそのようなことをするのだからと、自分もムキになって都合のいい話だけを並べるようになります。

結果、経済学の世界では、真実の姿をあぶり出そうという姿勢を持った人が一人もいなくなります。

 

経済学者の皆さん、経済論争が好きな皆さん。

あなた方の勝った負けたに興味はないのです。

投資家としては真実の姿が知りたいだけなのです。

保身のためのウソはやめましょう。

 

岩田副総裁は東京大学出身ですが、東大の中にもこのような人はいます。

高校までの学習内容は、評価の定まった間違いのないだろうという理論が教科書に用意されており、それを学びます。

そして正しい理論から正しい解答を得るという練習をします。

そのような「正しい理論→正しい解答」という作業が得意な人が、東大に合格するのです。

しかし大学でやることは、何が正しいかわからない世界の中に一般法則を見つけ出すという、高校までとは別の行為です。

正しい基礎知識を身につけていることは重要ですが、だからといって曖昧模糊とした世界から真実を見つけ出すことに長けているとは限りません。

そして雑多な情報から真実を見つけ出すのが研究であり、それを仕事にするのが学者です。

だから学者にはバイアスを排除し、フラットに考える姿勢が要求されるのです。

 

岩田副総裁は翁-岩田論争でも破れ、リフレ政策でも成果を出せませんでした。

岩田さん、結果はもう出てますよ?

百年に一度のリーマンショックですら、消費減退は僅かなんです。

消費税くらいで人が消費をやめるわけがありません。

「増税の需要下押し圧力は、私が心配していた以上に強く、かつ長引いた。1997年に消費税率を3%から5%に引き上げた時と比べて、はるかに強かった。」???

どこを見てそんなこと言ってるんです?

需要はずっと堅調。全く下押しされてませんてば笑

 

いくらなんでもさすがに、リフレ理論が間違っていたこと、失敗した原因が消費税ではないことは理解してますよね?

理解しているのであればクルーグマン教授のように間違いを認め、転身すべきです。

もし未だに消費税が原因だと、心の底から思っているのであれば、

-バイアスを排除してフラットに考えられないのであれば-

あなたは学者に向いていないと思います。

 

続きます。

 

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