非伝統的金融政策(リフレ政策、量的緩和、QE)について、何回かに分けて書いていきたいと思います。

 

結論から言えば、雇用の回復が早かったわけでもマイルドインフレが実現できたわけでもなく、マネーは使われず置き去りにされたまま。

リフレ政策は役に立ちませんでした。

日米欧で行われた世界規模の壮大な社会実験は、失敗に終わったと言っていいと思います。

リフレ理論自体が間違っていたと言わざるを得ません。

 

何がいけなかったのか、どうすればよかったのか、今後どうなっていくのか?

アベノミクスだけでなく、リフレ政策の総括と今後の展望について。

 

はじめに断っておきますが、technoteは反安倍でも反自民でもありません。

特に支持政党もありません。

安倍首相の経済政策、中でも特に量的緩和政策・リフレ政策は失敗であった、というだけです。

まあ世界中でやりましたからね。安倍首相を責める気もありません。

 

 

インフレ率の推移

日本は途中で消費増税があり、リフレ派としてはアベノミクス失敗の原因を是が非でも消費増税になすりつけたいところだと思うので笑

消費増税のなかったアメリカを例にとって話を進めたいと思います。

FRBは政策目標として『インフレと雇用』を掲げています。

量的緩和政策を導入して、インフレと雇用で目覚ましい結果が出たのかどうか?

まずはインフレ率から。

 

https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=PCPIPCH&c1=US&s=&e=

 

量的緩和がマイルドインフレの醸成に寄与するというリフレ派の主張はあたりませんでした。

古典的金融政策と何も変わらなかったどころか、逆にデフレ気味に推移していることがわかります。

 

2011-2012年のインフレ率は2%を超えました。しかしこれはドル安の影響が大きかったと言えます。

ちょうどこの頃は円が史上最高値をマークした頃であり、生活必需品の多くを輸入に頼っている貿易赤字国のアメリカにとってはコストプッシュのインフレとなりました。

「ドル安は量的緩和政策の恩恵だ」と言えなくもないのですが、これはむしろそれ以前から進められていた円キャリーの巻き戻しという面が大きかったと思います。

 

最後の2年、2017-2018年も2%を超えましたが、これはトランプ大統領のアメリカ・ファースト政策によるものです。

暴君トランプ大統領に恭順を示し、各企業がアメリカ国内に次々と工場を作りました。

2015年頃にはほぼ完全雇用水準だったところに雇用を増大させたため、NAIRUの水準を超えたものと思われます。

失業率はどこまでも減らせばよいものでもなく、ある一定の水準を超えるとインフレを招きます。

NAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment
インフレ非加速的失業率)については、またあとで触れます。

 

結局2%を超えることができたのは、円キャリーの巻き戻しとアメリカ・ファースト政策が原因であり、量的緩和の期間中かなり低いインフレ率で推移しました。

量的緩和がマイルドインフレの醸成に役立ったという兆候は見られず、「マネーを増やせばインフレになる」というリフレ派の主張は間違っていたと言わざるを得ません。

これは考えてみれば当たり前のことであり、市場を歪めてまで金利を押し下げれば淘汰されるべき企業まで生き残り、需要を上回る商品が供給され、デフレ圧力となります。

 

インフレ率の推移を見る限り、リフレ政策はデフレ政策だったという笑えない結果に終わりました。

 

 

雇用の推移

次に雇用です。

https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=LUR&c1=US&s=&e=

 

2008年の世界金融危機によって、アメリカの失業率は9%台まで上昇しました。

同じく9%代まで上昇したのは1979年のイラン革命に端を発する第二次オイルショックです。

9%台だった失業率が完全雇用と言われる5%台に下がるまでどのくらいの期間を要したか?

 

<2008世界金融危機>

2010→2015の5年間で失業率は9%台から5%台に低下。

<1979オイルショック>

1983→1988の5年間で失業率は9%台から5%台に低下。

 

これまた古典的金融政策と何も変わりません。

2018年にはそのまま3%台に突入しますが、これもトランプ大統領のアメリカ・ファースト政策によるものです。

量的緩和政策を用いたことにより、雇用の回復が早かったという兆候も見られませんでした。

 

これも当然であり、中央銀行が市中から債券を吸収し、市中に現金を置いて好きなだけ使えと言われても、誰も使いません。

人間は必要な時に必要なだけしか行動しません。企業も必要なだけしか投資をしませんし、必要もないのに人を雇うこともまたありません。

「おお、中央銀行が量的緩和を始めたぞ。じゃあ2倍の人を雇おう」

こんな経営者はいないのです。

 

FRBの仕事はインフレと雇用のはずですが、インフレも雇用も、古典的金融政策を用いたときと何も変わりませんでした。

一体何のために量的緩和政策を実施したのか?

意味がありません。

 

そして今、景気後退期に突入しようとしています。

来年は利下げが必要かもしれないとさえ言われています。

景気後退期に突入する際の政策金利は2000年は6.5%、2007年は5.25%。しかし現在は2.5%です。

利下げ余地がありません。

 

古典的な金融政策でよかったのではないか?

量的緩和政策は効果がなかっただけでなく、不安定さを増大させた分失敗だったのではないか?

そんな気がします。

 

今回のような量的緩和の大実験だけではなく、これまで経済政策は間違いや失敗の連続でした。

なぜ間違ってしまうのか?

続きます。