こちらの記事の続きです。
トランプ米大統領、連日のFRB批判 利上げ「ばかげている」
[ワシントン 11日 ロイター] - トランプ米大統領は11日、連邦準備理事会(FRB)の利上げは利払い負担を重くしているため「ばかげている」と一蹴、前日に続きFRBの政策を批判した。
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-fed-idJPKCN1ML28A
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連日の株価下落で、中間選挙を控えたトランプ大統領は焦ってるようです。
金利を上げるなというトランプ大統領。
坦々と金利を上げたいFRB。
どちらが正しいのでしょうか?
長期金利は市場で決まる
これはマーケットのクラッシュを防ぐという意味では、トランプ大統領が正しいと思います。
意味がわかって発言しているとは思えませんが笑
というのも、今回の長期金利急騰の引き金を引いたのは、トランプ大統領自身だからです。
長期金利は市場で決まります。
政策金利は中央銀行の姿勢を示す意味で有効ではありますが、長期金利を直接操作できるものではありません。
https://jp.investing.com/rates-bonds/u.s.-10-year-bond-yield-advanced-chart
上記は2011年夏以降のアメリカの長期金利です。
政策金利は2015年末までゼロフラット。2015年末から利上げが始まりました。
しかし長期金利はこの間ボックスで動いているだけです。
いくら政策金利を誘導しても、市場はそれとは別に、アメリカ社会の妥当な金利水準を見積もります。
アメリカの成長力から見て「いいとこ上限3%くらいじゃないの?」というのが、リーマン・ショック以降の市場のコンセンサスだということがわかります。
市場コンセンサスが出来上がってる所に政策金利を上げてもイールドカーブはフラット化し、下げればスティープ化する。ただそれだけです。
仮にFRBがある日突然、「政策金利を10%にします!」と叫んだところで、すぐさまアメリカの社会構造が変わるわけではありません。
金利を生み出すことのできるのは企業。
カネを借りた企業が利益を上げ、その利益で金利を支払います。
量的緩和で爆発的にカネを増やしてしまっても、企業の利益はそれに合わせて爆発的に増えるわけではありません。
多すぎるカネのほんの一部が貸し出され、そこに企業が利をつけます。
アメリカ企業が束になって生み出せる利は、市場規模によってほぼ決まっています。
ある日いきなりアメリカ企業すべてが爆益を生み始め、GDPが突然2倍になるようなことはありません。
多すぎるカネ全体から見れば、アメリカの長期金利は小さくならざるを得ません。
政策金利を10%にするのは勝手ですが、社会がそれに合わせて変わるわけではありません。
中央銀行には社会そのものを変える力はないのです。
翁-岩田論争も
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88%E8%AB%96%E4%BA%89
Rethinking Japanも
http://krugman.blogs.nytimes.com/2015/10/20/rethinking-japan/
岩田日銀副総裁やクルーグマン氏の間違いの根っこは同じです。
中央銀行が魔法のように社会構造を変えることなど、できるはずがありません。
量的緩和のツケとチャイナ・ショック2
話が逸れましたが、政策金利が長期金利を直接コントロールできるわけではありません。
FRBの利上げは今回の長期金利の急騰の直接原因ではなく、トランプ大統領の指摘は当たりません。
それではなぜ10月に入って長期金利が急騰を始めたのか?
これは2つの要因があります。
一つは10月に入り、FRBがバランスシートの縮小を強めたこと。
FRBは金融正常化のため量的緩和からの離脱を図り、2014年10月からバランスシートの拡大停止。2017年10月からバランスシートの段階的縮小を開始しています。
そしてこの10月から、その縮小規模を500億ドルに増やしました。
予定通りではありますが、これが一つの要因。
もうひとつはトランプ大統領の貿易戦争で、中国が米国債を売らざるを得ない状況になったこと。
現在はチャイナ・ショック2と言っていい状況にあります。
2015年のチャイナ・ショック1の時、アメリカは中国が通貨安政策を行っていると非難しましたが、これは誤りでした。
むしろ海外の投資資金が中国から逃げ出したことにより、中国当局は元の買い支えを行ったものの市場の急変に抗しきれず、元安になってしまったことが明らかになっています。
そして今回も、トランプ大統領の貿易戦争により中国から投資資金が逃げ出しており、通貨安定のため中国当局は米国債を売却し、ドルを手当する必要に迫られています。
中国当局は今のところアメリカを攻撃するために米国債を売却しているわけではなく、売却によって得たドルを売って元を買い支えしています。
構図はチャイナ・ショック1とまったく同じですが、アメリカはまたもや中国が元安誘導を行っていると勘違いし、非難しています。
この勘違いも、チャイナ・ショック1のときと同じです。
FRBと中国。
米国債を買っていた2本柱がいなくなり、需給要因からアメリカの長期金利は急騰しました。
特に大きく寄与したのは中国。
通貨バスケット制を採用している中国では、海外投資家が「撤退するよ。元をドルに替えてちょうだい」と言えば、中国当局がその相手方となってドルを用意する必要に迫られます。
皮肉なことに米株の急落を招いたのは、トランプ大統領自身だと言えます。
マクロ・シーリング
上記はリーマン・ショック以降のS&P500のチャートです。
マクロ・シーリングというのはマクロ経済的な上限という意味でつけた言葉です。
ググっても出てきません笑
完全雇用にトランプ減税を重ね合わせ、マクロ経済から見ればこれ以上はありません。
日本でもよく日経平均が27000円・30000円とおっしゃる人がいますが、その方たちはどこからそんな利益が出てくると思っているのでしょうか?
今季10%増益、来季も10%増益、永遠に10%増益・・?
本当にそうでしょうか?
自分には理解できません。
GDPは人間の労働によって生み出された付加価値の総額です。
どうやったら日経平均30000円相当の付加価値が生み出されるのか?
働く人が増えれば可能ですが、今は完全雇用です。
残業しますか?今は人手不足で、もう既に残業してますよね?
効率化ですか?
発明や効率化によるGDPの成長寄与度は、年率1%未満です。
好況時の株価は企業利益に比例し、企業利益は生み出した付加価値に比例します。
日経平均30000円は24000円より25%上ですが、毎日会社に行っている自分を想像し、代わり映えのしない会社のシステムを使って自分が生み出す付加価値を今よりさらに25%上積みできるのかどうか?
自分だけではなく、全従業員・全産業の平均で25%上積みする必要があります。
それはちょっと想像しにくいのではないかと思います。
S&P500の話に戻ります。
効率化と人口増加を合わせたものは潜在成長率ですが、アメリカにおける潜在成長率から見た株価成長の上限が上図①のマクロ・シーリングです。
トランプ減税は織り込んでいます。
ここより上に株価が上昇するのは、市場が社会の妥当な成長速度を無視し始めた時。
糸が切れた凧のように飛んでいく、無軌道なバブルに向かうときだと思います。
そして②③はテクニカル的なもの。
エリオット波動に即して言えば、1波動目の起点と2波動目の終点を結んだものが②の下支えライン。
そして3波動目はこの②下支えラインをこらえきれなくなった頃に頂点を迎えます。
そして1波動目の起点と4波動目の終点を結んだものが③の修正下支えライン。
そしてこの③修正下支えラインをこらえきれなくなった頃、最後の5波動目が終わります。
「①マクロ・シーリング」を超えれば無軌道なバブル。
「③修正下支えライン」を下回れば景気後退。
安定的に成長できるのは①と③の間の黄色いエリアですが、これはどんどん小さくなっていきます。
そして先週末、株価は下落し、③の修正下支えラインギリギリまで来ています。
今週は大きな分岐点になるかもしれません。
現状ではまだ株価の下落は小さく、大天井の確率を計算してもまだ10%未満というところです。
しかし他の情勢を考え合わせると、大天井を迎えた可能性が高いのではないかと思っています。
ここまでの各国の状況
中国上海総合
チャイナ・ショック1の2016年2月の安値を先週割り込みました。
2年越しの下落相場確定。
チャイナ・ショック2になりそうな気配です。
2007年の頂点は、アメリカ超えを囁かれたときのバブル。
日本で言えば1989年に似ています。
2015年のチャイナ・ショック1は、人口動態によるもの。
働き盛りの46歳人口がピークを迎えたのが2015年です。
日本で言えば、これは今年2018年に当たります。
このあたりはまたいつか記事にしたいと思います。
ドイツDAX
赤の修正下支えラインを割り込んでいます。
2018年1月が頂点になる可能性が高そうです。
日本
チャートは省略しますが、日経平均はNYダウと類似。TOPIXはS&P500と類似しており、まだギリギリ踏みとどまっています。
今週跳ね返せるのか、それとも割り込むのか。分岐点に来ていると思います。
無軌道なバブルは来ない
①のマクロ・シーリングを超えて、無軌道なバブルは来ないのか?
これが一番の疑問点でした。
何しろ世界中で量的緩和という大実験をしたのですから、爆発的なバブルになっても不思議じゃないなというイメージもありました。
株バブルでなければ、あとは土地バブルですが、アメリカの住宅価格指数は以下の通り。
https://jp.investing.com/economic-calendar/monthly-home-price-index-1287
2007年のサブプライム当時の価格を超えています。
そして2018年7月にはほぼ横ばいとなり、頭打ち感が出てきています。
そしてアメリカ住宅建設大手レナー
これも修正下支えラインをとっくに割り込んでおり、波形はよくありません。
諸々考え合わせると、今回は無軌道なバブルは来ない。
マクロ・シーリングで大天井となる可能性が高いと思います。
続きはこちら
世界の株価は最後の上昇?⑥
https://ameblo.jp/technote2012/entry-12413214758.html