こちらの記事の続きです。

 

米アップル、時価総額1兆ドル達成 米上場企業として初

[サンフランシスコ 2日 ロイター] - 米アップル(AAPL.O)の株価が2日の取引で2.8%高の207.05ドルまで上昇し、米国の上場企業として初めて時価総額が1兆ドルを超えた。

 

https://jp.reuters.com/article/apple-stocks-trillion-idJPKBN1KN2I8

 

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アップルの株価がついに1兆ドルの大台に乗りました。

上場来の株価上昇率は50000%を超え、売上高はポルトガルやニュージーランドなどのGDPを上回るそうです。

 

しかし割高かというと、そうでもありません。

PERは19倍。他の企業とそれほど変わりません。

 

現状は理性的なバブル

アメリカ株の現状は、理性的なバブルだと思います。

「理性的なバブル」―変な言葉ですが、アメリカ株はずっとPER20倍前後で推移しており、極端に買われ過ぎの兆候は見られません。

 

S&P500―PER

 

S&P500は2015年夏にPER24に乗せて以降、概ね23-24の間で推移しています。

しかしPERがあまり変わらないにもかかわらず、株価は2016-2018に大きく上昇しました。

これはひとえに、トランプ減税のおかげです。

 

10年間の時限立法ではありますが、ブッシュ減税を超える大減税をトランプ大統領は実施しました。

大規模な法人税減税によって、企業の見かけ上の利益は増え、PERが見合う水準まで株価が押し上げられたというのがトランプバブルのカラクリです。

しかしこれは、維持し続けることは不可能です。

 

「バブル」という言葉に明確な定義はありませんが、弾けることを前提として「泡」という言葉が使われており、

トランプ減税が人気取りのための維持不可能な減税であることを考えれば、バブルと言っていいと思います。

しかし2000年のような「夢見るバブル」ではなく、PERが同水準になるまで自動的に買われただけであり、市場は理性的です。

なので「理性的なバブル」。

あからさまにカラクリの入った政策では、人々は夢は見られないんじゃないかなと思います。

 

ちなみに財政赤字のアメリカで株価を伸ばす効果的な施策は、減税ではなく増税です。

過去の例でも株価が伸びたのはクリントン政権の増税時であり、ブッシュ減税の間の株価の伸びは鈍いままでした。

増税というとあたかもお金が掃除機で吸い取られて消えてしまうように思う人もいますが、そうではありません。

増税した分は政府が何らかの形でお金を使い、100%民間に再配分されます。

財政赤字とは「民間→政府」のお金の流れが悪くなっていることであり、減税は逆効果です。

減税してもらっても、人々はお金を使いません。

人々は自分の生活に必要な分だけ消費をするのであり、減税されたからといって一日6食食べることもなければ、2台の車に同時に乗ることもできません。

人気取り減税に乗ってしまうとお金の流れを悪くして経済を萎縮させ、将来の税負担が重くなり負のスパイラルに陥ります。

このあたりは経済学者やエコノミストでも誤った考えをしている人が多いので、注意が必要です。

 

 

完全雇用と潜在成長

欧米では雇用をドラスティックに切るため、株価の天底はきれいに失業率の上下と一致します。

職を求めてさまよい、公園で菓子パンを食べて過ごす人はGDPには現れてきません。

もちろん生活に最低限必要な消費はしますが、2000円のランチを食べていた頃とはまったく違います。

失業とはその人がこの世から消え、人口が減少したような経済効果をもたらします。

経済とは人なのです。

 

そして潜在成長率とは、ヒト・モノ・カネすべてを効率的に使い切ったときの、その国の経済成長の巡航速度を表します。

完全雇用が続けば、経済成長率は潜在成長率に一致します。

雇用回復期には一時的に潜在成長率を超える高い成長を記録しますが、これは雇用回復により人口が増加したのと同じ効果が出るためであり、潜在成長力以上の力が突然沸き起こったわけではないのです。

 

2015年夏にはアメリカは完全雇用に達していました。

2000年のITバブルの頂点も完全雇用でした。

この完全雇用同士の株価の頂点を結ぶと、面白いことがわかります。

 

 

2007年の頂点はサブプライムショックで途中で腰折れしてしまった感があるので、これは除外して考えると、

①2000年のITバブルの頂点

②2015年夏(チャイナ・ショック前)の頂点

③2016年大統領選挙前の頂点

これらがきれいに一直線に並ぶことがわかります。

 

2000年と2015年はともに完全雇用でした。

その株価の頂点同士を結ぶと、仰角年率2.1%

アメリカの潜在成長率が2%前後であることを考えれば、当たらずとも遠からず。

何のことはない、株価の頂点同士を結べばほぼ経済の巡航速度。株価成長率≒潜在成長率であることがわかります。

 

そして2016年の大統領選挙前、株価はチャイナ・ショックから立ち直り、2015年の頂点を越えますが、これもやはり同一直線上。

ヒラリーが勝っていたら、この直線より上には行かなかったんじゃないかなと思います。

しかし維持不可能な減税を打ち出したトランプ大統領が勝ったため、この天井ラインを超えてバブルが発生したものと思います。

 

 

トランプバブルは天井付きバブル

そしてトランプバブルが理性的なバブルであることを考えると、青天井で膨らむことはないと思います。

 

S&P500は今週、2018年1月高値更新を前に足踏みとなりました。

しかし足踏みばかりもしていられません。

前回「世界の株価は最後の上昇?②」で書いたように、上昇ノルマである下支えラインが迫っており、これを割り込むとおそらくリーマンショック以降の右肩上がりの上昇は終わります。

 

一方2018年1月の高値を更新したとしても、PERをにらみながらの理性的なバブルである限り、あまり上値は望めません。

2018年1月の頂点が正しい見積もりだったとすると、そこから年率2.1%程度上積みすれば、そこが新しい天井となるでしょう。

 

そしてこの2つ。下支えラインと天井ラインは、2019年夏頃交差します。

 

つまり、行き止まりです。

おそらく2019年夏までは持たないでしょう。

貿易戦争がすでに勃発していることを考えれば、2018年1月の高値を更新できなくても何の不思議もありません。

そして更新したとしても、そこから年率2.1%程度上積みした天井ラインまで。

たかが知れています。

ここから買い目線で株式投資を考えるのは、やめたほうが無難だと思います。

 

もし天井を抜けてさらに上伸することがあるとすると、トランプ大統領が新しいイカサマをやり始めたときかもしれません。

しかしトランプ大統領は割と律儀で、選挙前に発言した公約を忠実に実行することに全力を注いでいるように見えます。

新しい話は聞こえてきません。

 

AIによる近年の技術革新を考えれば「夢見るバブル」に変化してもおかしくはない気もしますが、貿易戦争の砲撃でしょっちゅう起こされるようでは、夢を見るのは難しいのかもしれません。

 

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https://ameblo.jp/technote2012/entry-12408383136.html