11/8の大統領選挙は衝撃的な結果となりました。

事前の世論調査とは大きくかけ離れ、トランプ氏が大統領に選出されました。

 

 

予想と結果

選挙予測では圧倒的な知名度を誇るネイト・シルバー氏も、もちろんヒラリーの勝利を予想していました。

最終予想では70%を超える確率でヒラリー勝利となっています。

http://projects.fivethirtyeight.com/2016-election-forecast/#plus

 

それに対して、実際の結果はトランプ勝利

http://graphics.wsj.com/elections/2016/results/

 

なぜこのように世論調査とかけ離れた結果になってしまったのでしょうか?

 

 

予想が外れた背景

ネイト・シルバー氏は2008年の大統領選挙では1州を外したのみ。

2012年の大統領選挙では50州をパーフェクトに的中させ、ホワイトハウスから祝辞が送られました。

 

「ビッグデータの前に政治専門家は不要」「大統領選の真の勝者はネイト・シルバー」等々、賛辞が送られ、ネイト・シルバー氏本人も威信をかけて全力で当てに行ったはずですが、結果は大きく外れました。

 

アメリカでは大統領選挙直前まで、毎日のように世論調査が行われています。

http://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/us/general_election_trump_vs_clinton-5491.html

 

サンプルを2000も調査すれば3億人の母集団をほぼ正確に反映することができるはずですが、繰り返し調査を行ったにもかかわらず、トランプ氏優勢のデータは出てきませんでした。

 

もちろん確率ですので、ひっくり返ることはあります。

しかしひっくり返る可能性も、どちらかに偏ることはありません。

しかし今回は大きな偏りが見られました。

上記はネイト・シルバー氏の事前予測と選挙結果の偏りです。

全体的に赤が多く、、結果が大きくトランプ氏側に傾いていることがわかります。

 

ほぼ前日まで世論調査を行い、5000万人近い期日前投票者がいたにもかかわらず、このような結果になることは、統計上はまずあり得ません。

アメリカ国民の多くが、当日投票時に心変わりをしたのでしょうか?

おそらくそれもないでしょう。

 

あり得るのは、ウソの存在です。

 

 

BREXITとの共通点

イギリスのEU離脱も事前予想がひっくり返りましたが、BREXITとトランプ氏の勝利。

両者に共通するのは、どちらも「公然と支持するのがはばかられる」側が勝ったということです。

 

BREXITは移民排斥と結びつき、トランプ支持も同様です。

本心ではトランプ支持だったとしても、破天荒で無軌道な発言を繰り返すトランプ氏を支持していると、調査に対して正直に答えるのはなかなか難しかったのかもしれません。

 

世論調査はインターネットもありますが、各調査機関は正確性を期すため、電話で行うことが多いです。

そして電話調査の際には、人種や教育水準なども同時に尋ねられます。

 

トランプ氏の支持者は、低所得の白人男性が多いとされています。

黒人やヒスパニック層と混じって工場で働き、生活は苦しい。

「なぜ白人の自分がこんな生活をしなきゃいけないんだ」

そういう鬱憤が、エリートのヒラリー氏より、成り上がりのトランプ氏を支持させたんじゃないかと思います。

 

そんな人が電話調査に対して「自分は低学歴低所得の白人であり、成り上がりのトランプを支持する」

そんなルサンチマンまみれの回答をすることは、出来なかったのかもしれません。

 

 

人間の本性が顕わになった選挙

考えてみれば、インターネット上では様々な汚い言葉が飛び交っています。

人種・性・収入・学歴・障碍・犯罪被害者・・、様々な場面で公然と口汚く罵る人々。

リアルの場面ではほとんど出くわさないのに、どこに隠れているんだと思えるほどたくさんの差別発言が、匿名のインターネット上では飛び交います。

 

人間のドロドロした部分は、普段は隠れている。

匿名で意見を表明できる場では、顕著にそれが増加する。

そういった人間の本性が、今回のような統計との誤差に現れたように思います。

今後も同様の場面では、データの嘘に注意する必要がありそうです。

 

一体なぜアメリカはトランプ氏を選んだのか?

トランプ氏の政策のどこに共感したのか?

国境に壁を作りたかったのか?

おそらくそんなことはないでしょう。

 

投票動機は単に、現状に対する不満だと思います。

そして完全雇用と過去最高の所得水準を実現した米国でさえ、このような大きな不満が渦巻いていることに驚きます。

 

行動経済学が教える通り、人は他人との差に感じて行動を起こすものであり、全体の底上げは意味がない。

どんなに全体の水準が上がっても格差が存在する限り、人々の不満は消えない。

そういうものなんだと思います。

 

政策面においては、ヒラリーは格差を縮小させる社会を目指していました。

しかしそれは有権者には理解されませんでした。

そんなことより、日本をやっつけろ、メキシコをやっつけろ。

そんなメッセージの方が受けたようです。

今回、アメリカの低所得者層は自分の首を絞める選択をしましたが、おそらくそれに気づくことはないと思います。

 

ヒラリー候補の最後の演説は、胸を打ちます。

事前に用意されたものではなく、一日かけて自分の言葉を用意したのでしょう。

いろいろな批判はありましたが、彼女が理想に燃えて政治活動を行ってきたことは疑う余地がありません。

彼女ほどの女性が再びアメリカに出現することがあるのだろうか?

アメリカは大きな財産を失ったのではないか。

そんな気がしています。

続きます。

※追記

すみません。自動リロード機能がついているので、動画をご覧になるときはYOUTUBE本体に移動してから見てください。(5:50過ぎからです)

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