米8月雇用者数は15.1万人増で予想割れ、月内利上げの可能性後退

[ワシントン 2日 ロイター] - 米労働省が発表した8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが15万1000人と、市場予想の18万人に届かなかった。過去2カ月続いた大幅な伸びが鈍化し、賃金の伸びも控えめにとどまるなか、米連邦準備理事会(FRB)が今月利上げに踏み切る可能性は後退したとみられる。

http://jp.reuters.com/article/aug-us-payroll-idJPKCN1181Q3

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雇用統計が市場予想を下回り、9月の利上げ確率は21%に低下。12月ですら50%程度となってしまいました。
http://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html

NFPが3か月連続で20万人超となればあるいは、との状況の中、これで9月の利上げはなくなったとの見方が大勢となっているようです。

しかし一方で、9月の利上げを強く予想する人もいます。

NYの視点:ビル・グロース氏は9月利上げを確実視

市場関係者の多くは9月利上げに依然として懐疑的だが、米ジャナス・キャピタル・グループのビル・グロース氏は8月の米雇用統計で9月利上げがほぼ確実になったとの見方を示した。同氏はブルームバーグラジオとのインタビューで、「利上げは9月になるだろう。100%に近いと思う」、「このような内容の雇用が決め手にならないのであれば、何が決め手になるのか確信がない」と述べたそうだ。

http://jp.reuters.com/article/idJP00093300_20160903_00120160903


債券王ビル・グロス氏は、9月に100%利上げと7考えているようですね。
100%かどうかはともかく、technoteも9月利上げの可能性はかなり高いと思っています。
理由は時間軸です。

アメリカは2013年ごろから出口戦略を口にしてきました。
ところがバーナンキ前議長は出口をイエレン議長に任せて退任。その後もチャイナショックだのBREXITだので、利上げを大幅に遅らせてきました。

低金利であれば、景気後退は起こらないのかと言えば、そんなことはありません。

低金利が長く続けば淘汰されるべき企業が生き残り、供給は過剰になり、在庫は少しずつ積み上がって行きます。
1929年の大恐慌も、第一次大戦後の復興で欧州が生産能力を取り戻しつつあったのにもかかわらず、アメリカは欧州に製品を供給し続け、1924年ごろには明らかに生産過剰に陥っていました。

大恐慌とは経済事情も環境も違いますが、2015年頭のアメリカのCPIはすでに年率マイナスとなっていて(原油の影響が大きいのですが)、2016年頭にはアップルの減産がありました。
既に供給過剰はかなりの期間続いています。

そして今回、ISM製造業指数が再び50を割り込みました。

ISM201608
http://info.finance.yahoo.co.jp/fx/marketcalendar/detail/9011

昨年11月以来の50割れです。

2007年の時は2007年1月に50を割り込み、その後持ち直したものの2007年12月に再び50割れ。
その後はリーマンショックまでガラガラと崩れていきます。
http://fxtrend.jp/shihyou_ims.html

そもそも0金利というのは「やりすぎ」なのです。
ゼロコストでお金を借りることができれば、貸す側と借りる側のコストが同じになってしまいます。
本来こういうことは起こりません。

2004年以降FRBは政策金利をあげ続けましたが、上げても上げてもブレーキがかかりませんでした。
永遠の低金利の国=日本があったため、米企業は円キャリーでいくらでも低金利の資金が調達可能だったからです。
そして今回は円だけでなく、ユーロもゼロ金利なのです。
今回もまた、FRBがいくら金利を上げても、2007年と同様に米企業の設備投資・在庫投資に思うようなブレーキをかけるのは難しいと思います。

低金利でデフレ傾向になれば企業は自発的に生産を控えるかというと、必ずしもそんなことはありません。
野心的な企業はこれを機会にさらに赤字覚悟で製品を押し出し、ライバル企業の退場をもくろみます。
ビッグデータで需要予測が正確になった現在でも、作りすぎを抑制する機能を、世界は十分には備えていないのです。

このまま仮に1%以下の政策金利で景気後退に突入した場合、利下げ余地がほとんどなく、アメリカ金融政策当局はなすすべがありません。
それはFRBも理解していると思います。

また9月利上げを見送ると、次は12月です。
ヒラリー氏とトランプ氏の支持率が週ごとに逆転する中、イエレン議長を更迭すると言っているトランプ氏が大統領になる危険性が少なからずあり、FRBはその前に利上げをしておきたいという思惑も働くでしょう。

8月ISMは単月の結果ですのでこれで景気後退に突入すると確信できるわけではありませんが、ここからずっと50割れが続き、12月の利上げが不可能になる可能性も否定できません。
FRBは残り時間の少なさに危機感を覚えているんじゃないかなと思います。

9月の利上げは市場が予想してるほど低くはないような気がしています。

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