今週は興味深い記事がたくさん出ました。
いくつか簡単にまとめておきます。

日銀資産が膨張、ついにFRB超え 次世代に禍根残す恐れ
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO06488980V20C16A8000000/

日銀のバランスシートが国債や上場投資信託(ETF)の「爆買い」によって膨張している。日銀の統計によると、8月20日時点の資産残高は447兆9747億円あまりで、1年前から約90兆円増えた。20日は土曜日だったため、19日夕時点の円相場(1ドル=100円13銭)で計算すると約4兆4739億ドル。米連邦準備理事会(FRB)の8月17日時点の資産残高4兆4664億ドルを上回った。

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日銀の資産がついにFRBを超えました。
文中ではアメリカのGDPは日本の2倍超となっていますが、2015年のGDPは4倍超です。
http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html

人口比が2.5倍であることや、高齢化・生産性の差を考えると、だいたい4倍は妥当なところだと思います。

前回の金融政策決定会合で、日銀はETF買い入れを年6兆に増額することを決定しました。
本文中にある通り、これは将来大きな禍根を残すことになりそうです。

そもそも償還のないETF・株を購入している中央銀行など、世界中で日銀だけです。
株価が下がったらどうなるのか?

現状の規模のまま日銀が買い続けるとして、黒田さんの任期満了までに25兆円程度ETFを買うことになります。
例えば平均取得単価が日経平均で14000円レベルだとして、日経平均が7000円になれば、日銀ETFは12兆円の評価損を計上することになります。
それに対して日銀の引当金は現時点でわずか2.7兆。これから積み増す額を考慮しても、到底足りるものではありません。
日銀は債務超過に陥ることになります。

日銀が債務超過に陥れば、政府が資本注入せざるを得ません。
日銀から何百兆も借りている政府が、日銀に資本注入するというカオスな状況になります。

日経平均が7000円を割る状況は、おそらく来ると思います。
世界景気減速は今後も定期的に起こり、日本では人口が減少し続けます。
次の安値は普通に7000円を割るでしょうし、最後のギャンブルのアベノミクスが崩壊して日銀が債務超過であれば、さらに1000円程度オーバーシュートしても不思議ではありません。

日銀もおそらくそれは理解しているでしょう。
ETFを増額すると言っておきながら、購入ペースは落としており、月当たりの購入額は増えていません。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/etfreit.zip

日銀は損したくないのでしょう。
仕手本尊として買いあがっていく姿勢ではなく、なるべく購入単価を下げたいと思っているはずです。
売り抜けできないのであたりまえですが。

日銀のETFは今後も相場の下支えにはなるかもしれませんが、買いあがる材料にはならないと思います。

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GPIF:評価損5.2兆円、運用改革後の全収益が消失-4~6月
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-26/OCI01Y6K50Y801

世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2四半期連続で巨額の運用評価損を計上した。国内株価の下落や円高を背景に、運用資産額は基本ポートフォリオを前例のない大幅な見直しを実施する前の水準まで目減りした。

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GPIFはアベノミクスで運用方法を変更しましたが、その利益がすべてなくなったという記事です。
先ほどは日銀でしたが、こちらはさらに打つ手がありません。

人口が減少していく日本において、年金の基金も当然将来に向かって縮小していきます。
年金は今後、年金支給額>支払保険料の状態で進行していきます。
つまり新規に株を買うお金は、これ以上ありません。
今後は、株を売る額>株を買う額の状態で進行していくことになり、年金は株価押し下げの売り方として機能していくことになります。

さらに運用損が出た部分はどうするのでしょうか?
年金保険料の値上げや国債で賄うなら、ますます若年層の負担は重くなり、婚姻出産に支障をきたし、人口減少が加速することになります。

年金が株価を押し下げ、年金が人口を減少させ、年金がデフレを作る。
デフレスパイラルは今後も続きそうです。

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しかし日本は年金により、莫大な個人金融資産を形成しています。
お金が増える中でデフレになる。
もしこの状態が平穏にずっと続くなら、日本人全員がビルゲイツになれます。
それもあり得ません。

いつか財政の維持に現実味がなくなり、清算しなくてはならない時が来ます。
国の借金の裏で膨らむ個人金融資産。
国の借金の部分は嘘の資産なので、これが大きければ大きいほど清算の際のショックも大きくなります。

財産税や預金封鎖というギブアップ方式をとるのか?
あるいはハイパーインフレになるまで放置するのか?

ちなみにハイパーインフレは、夢の世界の出来事ではありません。
日本円は最初、1ドル1円でした。
それが100円を超えてしまったのは、日本がハイパーインフレを繰り返してきたからに他なりません。

日本の金融当局は、歴史的に見ても、運営が下手なのかもしれませんね。
以下も今週の記事ですが、日本円の歴史が書いてあって面白いです。

コラム:なぜドル円だけが3桁なのか=佐々木融氏
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN10Z0O8?sp=true

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