消費増税の再延期、アベノミクス失速浮き彫りに

【東京】安倍晋三首相は就任時、日本経済の健全性回復と長きにわたるデフレからの脱却を約束した。
 安倍首相が1日表明した消費増税の延期は、この約束がまだ果たせておらず、いつ実現するかも分からないことを浮き彫りにした。増税延期は日本が抱える巨額債務の軽減を難しくするが、景気の低迷によって選択の余地がほとんどなくなったと首相は考えたようだ。

http://jp.wsj.com/articles/SB10513819889225894892604582103143611592460

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表題を「アベノミクス完全終了」にしようかと思ったのですが、やめました。
センセーショナルな表題を付けなくても、マーケットの反応を見れば、アベノミクス・リフレ政策が失敗だったと思う人の方が多いということは明白です。


2回のアイランドリバーサル

6/1の取引終了後、国会会期末後の会見で、安倍首相は消費税増税の再延期を表明しました。
数日前からメディアの報道合戦が過熱し、日経平均株価は5/30に窓を開けて上昇。5/30-6/1の3日間揉み合った後、増税延期表明後の6/2は一転して窓を開けて下落。アイランドリバーサルを形成しました。

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上記は日経平均の半年チャートです。

前回のアイランドリバーサルは2/1-2/2でした。
サプライズのマイナス金利が導入され、いったん窓を開けて上昇。2日間揉み合った後、今度は窓を開けて下落。この2日間は離れ小島のようになっています。

そしてその後4/25に戻り高値を試しに行きますが、ギャップを埋めることができず、反落に転じています。

technoteは、窓というのは相場を考える上で一つのカギになると考えています。
何かのイベントにより株価が離れたところに形成され、それが冷静に考えると誤りだったということになり反転する。それがアイランドリバーサルです。


マイナス金利は誤った判断

マイナス金利で一瞬沸いたものの、よく考えるとおかしな政策だと市場は判断したのでしょう。
だからこそ、4月の日銀金融政策決定会合に向けて戻りを試しに行ったが、ギャップが埋まらず押し戻されてしまった。
おそらくこの会合で追加緩和が出ていたとしても、マイナス金利の拡充であれば同じことであり、やはり反落していたのではないかと思います。

オカルトではありません。
日本は独自の板寄せ方式を採用しており、よく窓を開けることがあります。
マイナス金利に期待を寄せた人は、翌日以降市場で合意できなくなってしまった。
マイナス金利が誤りであることを認識した人だけ売買が成立し、合意できた。
そこにはやはり、重い意味があります。


消費税増税延期は誤った判断

消費税を増税せず、国債に頼っていくことを安倍首相は宣言しました。
しかしそれは失われた20年と同じやり方です。
素直に考えれば、経済状況も株価も、アベノミクス以前に戻ります。

消費税増税を延期すれば株価が上がるように思った人も多かったと思います。
その人たちが買ったため、株価は5/30-6/1の離れ小島を形成しました。
しかし以前「消費税増税で株価は下がる?」でも書きましたが、消費税は増税時に駆け込み需要とその反動減があるだけで、長期的な消費を冷やすことはありません。

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今回も同様で、駆け込み需要と反動減はありましたが、消費は元に戻っています。

2012年 税率5% 消費税収10.4兆 消費総額208兆 

2013年 税率5% 消費税収10.8兆 消費総額216兆←駆込需要 

2014年 税率8% 消費税収16.0兆 消費総額200兆←反動減 

2015年 税率8% 消費税収17.6兆 消費総額220兆(予) 

2015年度消費税収はまだ確定値は出ていませんが、ほぼ予算通り17.5兆円前後で着地が見込まれています。
消費が冷えていないのですから、消費税でアベノミクスが頓挫したという考えは、明らかな誤りです。

景気低迷と感じるのは異次元緩和という偽薬に効果がなくなり、海外需要を取り込めなくなったことが原因であり、国内は変わらず順調なのです。


アベノミクス終了

お金とは経済にとって血液であり、民間と国の間でお金がぐるぐる回っています。
どちらかに傾けてよいものではありません。
民間への減税は、国にとって収入減少となります。

日本はもう何十年もプライマリーバランスを怠り、民間にお金を傾けすぎています。
そしてその代償として、国の借金が膨らんでいます。
民間のお金が膨らむ中で、株価が上がらなかったことは事実です。

経済規模が拡大すれば多少借金をしてもいいのですが、人口減少社会では規模の拡大は見込めません。
人口増加時は、膨らむ民間にお金を傾ける。
人口減少時は、それに応じて借金を縮小する。
そうでないとバランスが取れないのです。

増税することにより民間と国の間のお金の流れが太くなり、血流が良くなります。
消費税増税は、長期的に見れば、日本経済にも株価にもプラス要因だと思います。

1997年の消費増税後には2000年の株高がありました。
今回も2014年の消費増税後に、2015年の株高がありました。
増税後には、増税前の高値を必ず抜いています。

しかし今回、2017年の増税を行わないことを決定しました。
2015年の日経平均高値20952円を抜くことはもうないでしょう。
増税延期表明前の6/1の安値16909円は手の届かない高値になり、マイナス金利の時と同様にギャップは埋められないかもしれません。

消費増税が消費を冷やすという亡霊におびえた安倍首相。
おばけはいなかったのに。
心の弱い人だったんだなと思います。

※追記
2019年の東京オリンピック前まで増税延期との目論見ですが、以前「東京オリンピック決定で株価は上がる?」や「東京オリンピックの経済効果は150兆円?」でも書きましたが、オリンピックの効果は大きくはありません。

事実、ロンドンオリンピックの時のイギリスの株価は、アメリカやドイツより低調なものに終わりました。
オリンピック景気を当て込んでも、それは起こりません。おそらく2019年も増税できないと思います。

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