27日のユーロ圏財務相会合、「プランB」協議の可能性=政府高官


[ブリュッセル 26日 ロイター] - ユーロ 圏の政府高官は26日、ギリシャ問題をめぐり27日に開かれるユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で、ギリシャのデフォルト(債務不履行)から域内の各国経済と銀行を守るために、どのように「プランB」を実施するかについて協議することになるとの考えを示した。


http://jp.reuters.com/article/financialsSector/idJPL3N0ZC4C720150626


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プランBとは、ギリシャの債務問題に関してギリシャと合意を目指すのではなく、ギリシャのデフォルトやユーロ圏からの離脱を含めた協議を行うという意味です。

日本時間27日午後9時から、最後のユーロ圏財務相会合が行われています。

デフォルト回避のためには30日のマーケットオープンまでに合意に達する必要があるといわれており、それまでに合意できない場合にはデフォルトとなります。



ギリシャCDS


ggbcds


上記はギリシャ国債のCDSチャートです。

あまりデフォルト確率が高まっているようには見えませんが、これにはわけがあります。


まず今回問題になっているのは、6月30日に期限を迎える16億ユーロのIMFへの資金返済です。

ラガルド専務理事は返済猶予は設けないと明言しているので、6月30日までに返済できなければ7月1日をもってIMFからの借り入れはデフォルトとなります。

それに対してギリシャCDSはギリシャ国債に対する信用保証料であり、IMFへの返済がデフォルトとなったとしても、ギリシャ国債が直ちにデフォルトになるわけではないこと。

これが一点。


もうひとつはギリシャCDSの売り手(保障する側)はドイツの銀行であり、デフォルトになればドイツの銀行が痛手を受けるため、ギリシャ国債はデフォルトではなく債権放棄になると見られていることです。

どちらにせよお金が返って来ないのであれば、デフォルトで市場混乱を招くより、債権者側が自主的に債権を放棄することでドイツの銀行が保証料を支払うことのないようにしようということですね。


長いギリシャ問題の紆余曲折により、2012年には25000bpを超えたCDSが現在は1827bp。

それでも5年以内のデフォルト確率は70%程度あります。

CDSが上昇していないことは、ギリシャ国債が安全になったということではなく、単に技術的な問題であることは注意が必要です。



ギリシャはデフォルトするのか?


個人的には今回はデフォルトという形はとらないんじゃないかなと思います。

6月3日のECB理事会でドラギ総裁が債券市場のボラティリティに備えよという発言したことにより、欧州債券市場は動乱。ドイツ国債はユーロ創設以降で最大の下落に見舞われました。

発言がギリシャのデフォルトを指したものであるとの見方も少なくありません。


しかしながら欧州がギリシャを見捨てる方向に舵を切り、ドラギ総裁の発言がそれを示唆するものであったとしても、1ヵ月後にデフォルトさせるというのは少し考えにくいです。

ギリシャ国債はほとんど民間銀行は持っておらずIMF等が所有しており、ギリシャの経済規模から見ても仮にギリシャ債務すべてが返済不能になったとしても現実にはそれほど大きな混乱はないと思います。

それよりも突然のデフォルトにより金融市場が混乱することになればそちらの方が大きな痛手となります。


債権団の年金の削減などを含む要求は不当であるとギリシャは反発しており、債権団の提案についてギリシャでは7月5日に国民投票を実施すると表明していますが、おそらく否決されるでしょう。

またIMFも返済期限の延長は無いと明言しており、両者が合意に達することはまずありません。

おそらく今後はギリシャの債務返済不能を前提として整理回収機構を別枠で設立して、IMFなどに散らばっている債権を一箇所に集めて、市場に影響が出ない形でギリシャ問題を収束させるという方向になるのではないかと思います。


ECBもFRB以上に市場への対話を丁寧に行う姿勢であることから、段階を踏んでメッセージを伝えていくことでしょう。

ギリシャに関しては返済不能の前提で行動していくことになるが、市場への影響を最低限に留める。今回はそのような方針表明になるんじゃないかなという気がしています。

あくまで個人的な予想ですが。



ギリシャはユーロ体制から離脱するのか?


これはまったくわかりませんが、ギリシャが全債務の減免を得たとしても、ユーロ圏に留まる限り将来必ず同じ問題が起こります。

以前「DAX指数9000到達とユーロ問題 」で書いたのですが、社会インフラが整っておらず競争力のないギリシャが同一通貨ユーロを使うことに無理があるのです。

同一通貨を維持しながらこの問題を解決するにはギリシャ国民が出稼ぎに行くか、ユーロ諸国がギリシャにお金をあげるしか方法がありません。

能力で劣り働いていない国はそれなりの貧しい暮らしをすることになるはずであり、債権団は年金の削減を含めてそれを求めていますが、貧しくなれと言われてもギリシャ国民は受け入れないと思います。


一方のドイツもギリシャにこれ以上お金をあげるという気持ちはないでしょう。

国内の地域格差ならともかく、なぜ外国のギリシャをドイツ国民が養わなくてはならないのか?

ギリシャ人の労働者を受け入れるという方法もありますが、これまでの経緯からそれもなさそうです。


同一通貨下で資本移動を自由化し、労働力の移動に制限があるユーロ体制は、事実上強国ドイツが下位国からお金を集める集金システムとなっています。

ドイツはその利点を理解していて、ギリシャを手放すことは避けたいと思っていますが、そうそういいとこ取りもできません。

ドイツはギリシャを扶養し続けるか、切り離すかの選択を迫られていますが、ギリシャ国民が貧困を選ぶはずもなく、おそらく切り離さざるを得ないでしょう。




ユーロ体制の崩壊


仮にギリシャがユーロを離脱した場合、そこで終わりではありません。

次はキプロス、その次はスペイン・ポルトガル・イタリアが集金される側に回ります。

現行のユーロ体制下では別の国で同じ問題が起こるだけであり、今回のギリシャ問題でユーロ加盟国はそれをはっきりと認識することになります。

「なんだ俺たちはドイツに吸い取られてるだけじゃないか」と。


2008年の世界金融危機はサブプライム問題、リーマンショックなどさまざまなテーマがありましたが、ここまでの経緯を見る限り、実質的にはユーロの物語だったのではないかと思います。

1990年代にユーロが誕生し壮大な社会実験を行った結果、問題が露呈した現行のユーロ体制は終焉を迎えるのではないかと思います。

ドイツがギリシャから集金したお金は、ギリシャへの貸付が返済不能となることで、事実上ギリシャに戻ってきて終わることになります。

その後の体制がどうなるのかわかりませんが、うまい話はないという結末になりそうです。



最後に


テーマ外ですが、もうひとつのうまい話。日本の年金問題について。


制度発足時の積み立て不足と人口減少から、維持不可能といわれている年金問題。

それを政府債務に置き換える形でここまで進んできました。

世代会計の問題はユーロの地域格差とどこか似ていて、高齢者による下の世代からの集金システムとなっています。


年金保険料の積み立て不足を国債に置き換え、そのつみあがった国債を日銀が買っています。

うまい話はあるのでしょうか?


ギリシャ問題が決着すれば、ユーロの物語もそろそろ終盤。

次は日本の物語になるのではないか。

そんな可能性も考えておいたほうがいいのかもしれません。



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