秋らしい季節になってきましたね
オリンピックの熱気も落ち着き、これから10月に向けて日本では消費税を増税するのかというところに市場の関心が移ってきます。
安倍内閣は10月1日の日銀短観を最後の判断材料として、消費税増税の判断を下すようです。
消費税の増税はほぼ織り込み済みですが、段階的に上げるのか、今後どのようなペースで上げていくのか、法人税減税や財政出動はどのようになるのか等が焦点となります。
市場関係者も含めて、消費税に関しては圧倒的にネガティブな意見が多いようですが、
果たして消費税増税が決まると、株価は下がるのでしょうか?
消費税増税前後の株価の推移
下記は平成9年(1997年)消費税増税前後の株価の動きです。
1994.9 村山内閣閣議決定(97年4月から消費税を上げると決定)
1996.6 橋本内閣閣議決定(予定通り97年4月から実施すると決定)
1997.4 消費税が3%→5%へ
株価は上がってるのか下がってるのか、これだけではよくわかりませんね。
実際の消費動向を見ると97年4月を境に、前後3四半期程度の駆け込み需要と反動が起こったようです。
消費税は消費を冷やすのか?
結論から言うと、そのようなことはなかったようです。
これは私も意外でしたが、消費税は安定した税と言われている通り、コンスタントな税収に寄与するだけでなく、消費そのものも減退させません。
◆消費税収の推移
平成 7年(3%) 5.8兆
平成 8年(3%) 6.1兆・・駆け込み需要
平成 9年(5%) 9.3兆・・反動の需要減
平成10年(5%) 10.1兆
平成11年(5%) 10.4兆
以降ほぼ10兆前後で推移となっています。
消費税1%あたり、大体2兆の税収と考えればわかりやすいですね。
消費税が消費を冷やすのであれば、当然消費税収が落ち込むはずですが、そのような影響は見られません。
平成9年の反動の需要減も、その後の2年でほぼ取り返しています。
これはなぜなのか。
私も以前は消費税が消費を減退させると思い込んでいたのですが、自分の消費行動をよくよく思い返してみれば、そういえば消費税のために消費をあきらめたという経験は一度も無いのです。
みなさんもおそらくそうではないでしょうか?
買い物をしていてお金が足りないかもしれないじゃないか!という反論も聞こえそうですが、そもそもそういう時は消費税分足りないわけじゃなく、消費税に関係なく大幅に足りなかったのです。
それに後でお金を持ってきて、やっぱり買いますよね?
マンションはどうなんだと考えてみると、3000万円のマンションが税込み3150万円なら150万円もの大金が飛んでいくじゃないか!とも思うのですが、3000万円のローンは組めるけど、3150万だと組めなかったなんてケースもちょっと考えにくいです。
それに一気に150万と考えると大きいのですが、マンションの耐用年数40年で割れば月々3000円程度です。月々引かれている税金や社会保険料に比べればなんてことはありません。
いろんなケースを想定してみるのですが、実際に消費税収が減退していないことがすべてだと思います。
消費税増税は駆け込み需要とその反動があるだけで、長期的な消費動向には影響を与えないようです。
消費税増税は株価には影響しないのか?
しかしながら消費税が予定通り8%に決まれば、実際には株価に影響があるでしょう。
消費税が悪と思い込んでいる人は存外に多いので、初動は下落に見舞われるかもしれません。
実需にも駆け込み需要と反動が存在するように、やはり株価にもそれなりのボラティリティを生み出すのではないかと思います。
しかし現実には消費税は消費には影響が無く、財政の持続性には好影響を与えるので、長期的には株価にはプラスの材料だと思います。
今一度チャートを見ると97年の消費税増税後になんとなく株価が下落してるようにも見えますが、これはこの時期の経済状況を考慮する必要があります。
当時はまだ不良債権問題が処理できておらず、金融機関がバタバタと倒れていた頃でした。
特に97年の都市銀行の一角である北海道拓殖銀行の破綻や山一證券の破綻。
98年の長銀・日債銀の破綻などは、高格付の長期信用銀行でもダメなのかと衝撃を与えました。
◆失われた10年
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F10%E5%B9%B4
また、97年7月に始まったアジア通貨危機も、アジアを得意先としている日本に大きな影響を与えました。
◆アジア通貨危機
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E9%80%9A%E8%B2%A8%E5%8D%B1%E6%A9%9F
実際には消費税増税などよりも、これらの経済状況のほうが株価には重大な影響を与えたと思われます。
すべての経済イベントを書き込むと、消費税増税前後の株価推移は以下のようになります。
消費税悪玉論
ちなみに消費税悪玉論を唱えているのは誰なのか?
ソースをたどっていくと、どうも共産党のようです。
例えば政策担当のこの方のブログ
http://wajin.air-nifty.com/jcp/2010/06/post-2255.html
なんか消費税のせいで税収が落ち込んだり自殺者が増えたりすごいことになってますが、大丈夫でしょうか
たとえばこの方、次のように主張されています。
◆国税収入 トータルでは減収に!
消費税 法人税 所得税 計
96年 6.1 14.5 19.0 39.6兆円
97年 9.3 13.5 19.2 42.0兆円
98年 10.1 11.4 17.0 38.5兆円
99年 10.4 10.8 15.4 36.6兆円 増税前の96年から3兆円減
増税したのが原因で景気が悪くなり、税収が減ったのならえらいことです。
しかしながら先にも見たとおり、駆け込み需要と減退を除けば、消費税は税率に比例してきちんと増えています。
消費税が景気の足を引っ張るためには、消費減退→消費税収減少というプロセスが必要なはずですが、消費税の税収は増えていますね・・
減ったのは法人税と所得税ですが、別に消費税のせいで景気が落ち込んで税収が減ったわけではありません。
98年と99年には法人税減税と所得税減税があったのですが、それがこの方のブログには書いてないのです。
◆法人税率の推移
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/082.htm
◆所得税減税(98年は定額の特別減税、99年は税率改正による恒久減税)
http://www.cao.go.jp/zeicho/siryou/pdf/kiso09c.pdf
税率を下げれば、その分税収が減るのは当たり前ですよね?
むしろ日本では減税が景気高揚には役立たないという一例でもあります。
このあたりはアメリカなんかと国民性が違うのかもしれません。
消費税反対の共産党のチラシをよく見かけますが、彼らも消費税で人が死ぬなんて本気で思っているわけではないと思います。
消費税で人が死んでしまうなら、欧米はとっくに滅んでますって
そういえばアジア通貨危機のことも書いてありませんね。知らないはずは無いと思いますが。
おそらく大衆心理を利用したキャンペーンなのだと思いますが、惑わされないようにしたいですね。
ちなみに私は消費税賛成ではありません。
消費税を上げざるを得ないのは社会保障費が膨大だからですが、全員がもらう年金を全員が支払う消費税で賄うなど馬鹿げています。
両方やめればいいと思います。
日本の根本的な問題は過度な社会保障制度とそれによる世代間格差にあると考えていますが、それはまたあらためて別の機会に書こうかなと思います。