いよいよ9/8(日)未明に2020年オリンピック開催都市が決まります。
最終プレゼンが始まるのが午前3:45、結果発表は午前5時(日本時間)。
市場関係者の関心は非常に高く、日本を代表する経営者たちも口をそろえて「これで日本は復活する」「3丁目の夕日の世界が実現する」「高度経済成長がやってくる」と鼻息が荒いです。
ホンマかいな
というわけで、今回は開催都市が東京に決まった場合に、どのくらいの経済効果があるのか。
株価はどのくらい上がるのかというテーマで考えてみようと思います。
いつもの土日の読み物としてアップしようと思ってたのですが、東京に決まらないとゴミ記事になってしまうので今のうちにあげておきます。
1964年東京オリンピックとの比較
昔の東京オリンピックの予算規模はどのくらいだったのか?
ちょっと調べてみたところ、関連インフラ予算を入れて1兆800億円程度だったようです。
新幹線、首都高整備なども入れてこのくらい。
当時は開催都市の決定が5年前だったようで、単純計算で単年度あたり2000億円程度の公共事業上乗せだったと思われます。
当時のGDPはだいたい100兆円程度でした。
今回の予算規模は関連インフラ整備を入れて総額1兆2000億円程度と見積もられています。
これを開催までの7年で割ると、単純計算で単年度あたり1700億円程度の公共事業上乗せ。
1964年の時より額が小さいのです。インフレを考慮していないのにこれです。
現在のGDPは約500兆円です。
1964年当時とはGDPで約5倍違うので、すべて5倍にして比較してみると
◆1964東京オリンピック(準備期間5年)
GDP500兆円(実際は100兆円)
総予算5兆4000億円(実際は1兆800億円)
単年度あたり1兆800億円(実際は2000億円) ― GDP比0.22%
◆2020東京オリンピック(準備期間7年)
GDP500兆円
総予算1兆2000億円
単年度あたり1700億円 ― GDP比0.035%
・・1桁違いますね。
まあコンパクトに予算をかけずにやるという方針のようですし、仕方ありません。
遊休施設を活用するようで、やはりインフラの整っていなかった時代のオリンピック開催と比べると、その経済効果は小さいと言わざるを得ません。
今回は3兆円程度の経済波及効果を期待しているようですが、実際にはいろんなものがダブルカウントされているので、総予算に対して現実の経済波及効果が本当に黒字になるかすら怪しいところではないかと思います。
黒字と言わなければ国民の許可が下りないんでしょうけど
株価へのインパクトは?
さて、仮にこの経済波及効果3兆円が風呂敷を広げていない正しい数字だったとして、日本の経済規模に対して3兆円と言うのはどのくらいのインパクトなのか?
言わなくてもお分かりかと思いますが、日本の国と地方の累積債務残高は1000兆円に迫る勢いです。
小渕政権が行った経済対策は総額100兆円規模です。
麻生政権は世界金融危機対策のため、平成20年に40兆円、平成21年に50兆円を超える補正予算を組みました。
これらの規模から見て、波及効果3兆円と言うのはあまりに小さすぎます。
日本の公共投資は、年6兆円前後です。
それに対して今回は単年度1700億円程度の上乗せでしかありません。
つまり、どう見ても誤差の範囲です。
現実の効果としては、波風すら立たない程度の規模です。
ちなみに2012年ロンドンオリンピックは、総予算1兆1000億。
経済効果は1兆5000億円でした。
為替で大きく違いますが、日本のGDPはイギリスの約2倍くらいです。
GDP比で言えばロンドンオリンピックの方が2020年東京オリンピックより経済へのインパクトが大きいはずですが、それで大英帝国が復活したと言う話は聞きません。
開催決定から2012ロンドンオリンピックまでの株価推移
上記はロンドンオリンピックの開催決定から、実際のオリンピックまでの株価の推移です。
青がロンドンFTSE指数、緑がドイツのDAX指数、赤がNYダウです。
株価の推移を見ても、オリンピックの影響はほぼ見られないことがわかると思います。
株価は上がらないのか?
それではなぜ日本の大企業の経営者たちはオリンピックに熱い視線を送るのか?
それはおそらく、昭和の時代へのノスタルジーではないかと思います。
こう言ってしまうと身も蓋もありませんが、経営者クラスの人はほとんどが東京オリンピックを体験していることでしょう。
私は生まれていませんが、当時がすごかったと言う話はよく聞きます。
日本の発展は東京オリンピックや大阪万博とともにあり、どんどん世の中が変わり、オイルショックを乗り越え、平成バブルまで突っ走っていった。
そんな原体験があるため、オリンピックで日本は躍進したんだと感じているのかもしれません。
実際には、先進国に比べて足りない社会インフラが追いつくまでの怒涛のロングランであり、オリンピックが魔法のように世の中を変えたわけではなかったはずですが。
石原都知事が、都民の支持が上がらないにもかかわらずオリンピック招致にこだわったのも、オリンピックと日本の躍進をもう一度見たいという感傷が強かったからではないかと思います。
(別に悪い意味ではありません。誰もが持つ、素直な感情だと思います)
では株価は上がらないのか?
おそらく上がると思います。
実態経済へのインパクトはほとんどありませんが、これだけ多くの人が熱狂的に信じているのですから。
うっかり設備投資を増やしすぎてしまう経営者もいるかもしれません。
株価を決めるのはあくまでも需給です。
東京オリンピック世代の人が共通に持つ、オリンピックの存在の大きさの前では、現実の数字の大きさなど耳に入ってこないでしょう。
実際、ロンドンオリンピックは去年の話であり、イギリス経済が大躍進した気配の無いことは誰でもわかると思いますが、ニュースなどではオリンピックの効果を大きく謳うものばかりです。
しかし一方で、数字はやはり現実です。
オリンピックの準備をする7年間の間に、何度も企業業績が発表され、オリンピックの影響はほとんどないことがわかり、株価は本来の位置に戻るでしょう。
「オリンピックが決まれば日経平均は20000円を超える!」「いや、10年後にはバブルの高値を超える!」なんて声も聞かれますが、いくらなんでもそれは無いんじゃないかな
あるとすれば他の経済イベントの発生によるものであり、オリンピック単体の影響はほとんどないはずです。
株価はある程度上がりすぎて、それが修正される。
東京オリンピックは、市場に中期的なボラティリティを生み出すのではないかと思います。
月曜日の値動きは?
ちなみに、2012年のオリンピックを争ったロンドンとパリですが、開催地決定翌日(2005年7月7日)の株価はほぼ同じ値動きでした。
日中4%超の大幅下落の後、3%ほど戻して引けています。
勝っても負けても同じ動きというのは面白いですね。
はたして週明け月曜日の日本株は同じような値動きになるのか?
2005年の結果はあくまでも過去の一例なので、実際の投資に関してはご自身で考えてくださいね。