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(前回の記事→アベノミクス8-金融政策4



デフレの原因-少子高齢化時代の需要と供給


アベノミクスでは貨幣数量説的な考えに基づき、お金の量をふや増やすことによってデフレをインフレに変えようとしています。

消費低迷の原因はデフレであり、世の中に出回っているお金の量を増やせば-貨幣価値を毀損させれば、相対的に物の価値が上がる-インフレになるとの考え方からです。


しかしながら前回までの記事で触れたように、「インフレにできるのか」「インフレにできたとして消費が上向くのか」については、お金を増やすだけで単純に物事が解決できるというわけでもなさそうです。


その是非はともかくとして、今度はどうしてデフレになってしまうのか?その構造を考えてみたいと思います。


物の値段はどうやって決まるのか。

それはあくまでも需要と供給によります。

(円安によるコストプッシュについては別の機会に取り上げます)


供給の方が需要より多い場合にはどうしても逆セリの状態になり、物の値段は下がっていってしまいます。

同じ商品ならば安いものから売れて行き、売る方は売れ残りが出ないように値段を下げる競争を続けます。

これは手持ちのお金が増えても同じことです。

持っている金額の多寡にかかわらず、同じものなら安いところで買う。

経済の基本原理です。


商店の店主は日銀の量的緩和のニュースで値札を変えるような事はありません。

「おっ、黒田さんが総裁になったか。じゃあうちも値段を上げるか!」なんて行動はしないのです。

今日も「売れないなあ」と言いながら赤札を書き換えています。


日本は少子高齢化の時代に入り、消費量はこの先もどんどん減っていきます。

この人口減少と消費量の減少の間には密接な関係があります。


需要側はほぼ100%人口に左右されます。

お金があっても2台目のテレビ・・3台目のテレビ・・4台目・・5台目と買う事はありません。

人はいくらお金があっても、不必要なものは買わないのです。

人口が減少すれば、その分だけ需要量は減ることになります。


これに対して、供給側は人口に左右されにくいです。

すべての商品が手作りであれば、労働人口減少によって供給量も減少するかもしれませんが、一度作ってしまった生産設備は供給をやめません。


工場等の生産設備は、需要せずに供給のみを行う擬似人口だと考えてもいいかもしれません。

日本の場合、少子高齢化で需要側の人口は少しずつ減りますが、生産設備を考慮した供給側の擬似人口はなかなか減らない。

これがデフレを作り出す要因になっています。


企業も消費が減っているからといって、生産を落とすようなことはしません。

生産を落とすことはその分シェアの減少につながります。

また人減らしも簡単ではなく、人的資本は最大限に活用しようとします。

設備稼働率の減少は企業会計に打撃を与えるため、ラインを止めようとはしません。

結局商権維持のため、稼働率維持のために、売れ残るとわかっていても企業は供給を落とすという戦略は取れないのです。


ようやく人員整理を断行し、生産設備リニューアルの時期が来て次は生産量を減らしたとしても、人口の減少は待ってくれないのでまたギャップが生じてしまいます。


需要側(人口の減少)はなだらかな下り坂であり、供給側(生産設備の縮小)は段階的にしか下がらず、常に供給過多のギャップが発生する。

このギャップがデフレを生み出している基本的な構造です。


逆に昭和の時代のような人口増加期においては需要側はなだらかな上り坂であり、供給側は段階的にしか上がらないため、常に需要過多のギャップが発生するということになります。


日本の供給過多は半端ではありません。

エコポイントを使って需要を先食いしてもその間値段は下がり続けており、その後の需要後退でさらに大きな価格破壊となったのはまだ記憶に残っていることと思います。

全力以上の需要を創出しても、供給能力はさらにそれを上回ってしまうのです。


つまりデフレが原因として買い控えが起こっていることは日本の経済低迷の主要な要因ではなく、デフレは人口オーナス期における自然な経済現象なのではないかと思います。


こう言うと「ドイツだって少子高齢化で人口が減ってるじゃないか」という反論が出そうですが、ドイツにはユーロシステムという特殊な事情があります。

経済力の弱いユーロ加盟の下位国にドイツと同じ通貨ユーロを使わせることにより、「どうせ買うならドイツ製」という需要を作り出すことができます。

ドイツの人口は減っていますがユーロ域内総人口は増えており、減るドイツ人口で増えるユーロ域人口の需要をまかなう構造になっており、ドイツ一人勝ちの状況です。

そのかわりユーロ域内の格差はずっと広がり続けることになり、破綻したギリシャなど下位国の面倒をドイツは見ざるを得ない構造になっています。

ユーロ圏の問題は、また機会があればトピックとして単体で取り上げたいと思います。


結局、ケインズ以降の近代経済学は、基本的に人口ボーナス期のみに通用する、状況限定的な経済学でしかないんじゃないかなあという気がします。


次回はそもそもどうして人口が減っていくのか?

その原因を考えて行きたいと思います。

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