(前回の記事→アベノミクス5-金融政策1
)
インフレターゲットと円安効果
少子高齢化でパイが縮小する中、いくら金利を下げても(従来型金融緩和)、貸し出し枠を増やしても(量的金融緩和)、肝心の企業がビジネスチャンスだと思わなければ貸し出しはなかなか増えず、経済は活性化しません。
そこで経済を活性化させるための別の仕組みが必要となります。
アベノミクスの金融政策ではそれをインフレターゲットと円安効果に求めています。
他国との関係上、円安誘導はしていないというスタンスを取っていますので、円安効果と呼んでおきます。
インフレターゲットとは、ある一定のインフレ状態(マイルドインフレ)をターゲットにしますよ、と中央銀行が宣言することです。
黒田日銀は具体的には2%の消費者物価をターゲットとして、2年以内になるべく速やかにこれを実現するために量的金融緩和を継続すると宣言しました。
アベノミクスではデフレが日本経済低迷の元凶であり、インフレになれば消費が活性化され、経済が好転すると考えています。
また、量的金融緩和により円安になれば輸出産業に有利に働き、経済を活性化できると見込んでいます。
いったいどういう道筋でそうなると考えているのか、順を追って見ていきます。
量的緩和でお金を増やす
まず、量的緩和でお金を増やすプロセスを考えてみます。
今回ここで言うお金とは、日銀が供給する強権通貨(マネタリーベース)を指します。
市中銀行は信用創造により企業等にお金を供給しますが、その大元になる通貨(紙幣)は日銀が発行するものです。日銀が直接コントロールできるこの強権通貨を市中に押し出そうというのです。
とはいえ、日銀が「お金あげるよ」と言ってお金を誰かに一方的に譲渡することは出来ません。
FRBのバーナンキ議長は「ヘリコプターベン 」というあだ名で呼ばれ、「デフレ克服のためにはヘリコプターでお金を撒けばいい」と発言したとされますが、それはあくまで物のたとえであり、実際にはそんなことは出来ません。
中央銀行は何らかの取引によりお金を市中に押し出す必要があります。
それが買いオペと呼ばれる手段であり、日銀は市中から継続的に国債等を買うことにより通貨を市場に押し出そうというのです。
ただしその国債が償還されてしまえばお金は日銀に戻ってきてしまうので、償還されるまでという条件付ですが。
日銀は従来、健全性の観点から買いオペを残存期間の短いものに限ってきました。
それを黒田日銀は残存期間のより長いものにも対象を広げることにより、市中での通貨の滞空時間を長くする作戦です。
しかし、日銀が直接コントロールできるのはここまでです。
市中に押し出したお金が実際にどうなるか。
ここから先は市場の機能にゆだねられます。
量的緩和はインフレを作り出せるのか。
次回はその構造を見ていきたいと思います。