(前回の記事→株価ってランダムウォーク?2


データの性質に気をつけて解析する


データ分析で重要なことですが、データの性質については十分に気を配る必要があります。

分析の基礎であるシグマ(標準偏差) ですが、これはデータ要素が均質な前提でないと意味がありません。


同じラインから生産されるベアリング部品。

これはシグマを用いて品質管理してもいいでしょう。


また、同程度の教育を受けた生徒の成績。

これを偏差値で成績管理しても、それほど違和感はありません。


しかしイベントが起こって連続した値動きをしやすくなっている株価を、「明日はランダムだ」という前提で管理するのは無理があると思うのです。



シグマによる逆張りは失敗する


ちなみに野田解散からここまでの日経平均の前日比は、上昇80回・下降46回と圧倒的に上昇に偏っています。

言ってみればベアリングの部品だと思っていたのが、何かの間違いでゴルフボールがどんどん紛れ込んでくるような状態になっているのに、「これは異常値だ」と言ってみても意味は無いのです。

黒田バズーカが炸裂しているときに、ボリンジャーバンド を2σに設定しようが、3σに設定しようが、いくらでももっていかれるだけです。


ブラックショールズ方程式 によりノーベル賞を受けたマイロン・ショールズ (Myron Scholes) とロバート・マートン (Robert C. Merton) は、その後LTCM というヘッジファンドを作りました。


LTCMはドリームチームと言われ、世界中から巨額の資金を集めて1兆ドル以上の契約を世界中の金融機関と結んでいましたが、ロシア財政危機 に巻き込まれてあえなく破綻しました。


あまりに巨額であったためFRBも動き、緊急融資とFFレートの急激な引き下げを行い、これが後の急激な利上げとITバブル崩壊の遠因ともなっています。


ロシア国債が財政危機によりどんどん値を下げていくのに、「割安」と判断したLTCMのシステムはどんどんロシア国債を買い進めて行きました。


「異常値だからそのうち上がる」と判断したのですが、現実には「異常な事態が起こっているからどんどん下がる」だったのです。


確率は状況によって変わります。

モンティーホール問題 では、それまでの経緯を知らない人にとってはどちらのドアも1/2の確率に見えますが、経緯を知っている人は片方のドアの方が2倍当たりやすいことを知っています。

情報を持っている人間は有利なのです。


LTCMの経営陣はロシア財政危機という経緯を知っていたのですから、システムを手動で止めなければいけなかったはずです。

システムは経緯を知らないのですから。


ちなみにマイロン・ショールズ はその後別のファンドを立ち上げますが、これも2008年の金融危機で破綻しました。

LTCMの教訓で十分な安全策を用いたと思いますが、それでもダメだったのです。


結局ランダムウォークというのは方向感の無いときにはいいのですが、ビッグイベントが起こっているときは通用しないんじゃないかなと思います。


反面、イベントが起こっているときには、勢いや連続した値動きに関するテクニカルが役立つことが多いです。

このあたりはまたいつか機会があれば書こうかなと思います。



それでも正規分布に従う


しかしながら長期間の株価を捉えると、やはり正規分布に従っています。

1989年バブル崩壊から今日までの日経平均の前日比は上昇2862回・下降2885回でほぼ互角。

最近は上昇の確率が高いので、このまま行けばあと3ヶ月程度で並びそうな勢いです。


株価は部分部分では、イベントによって意思を持って整然と動く。

そして全体としてはやはり正規分布に従う。

ブラウン運動に代表されるような不規則な動きには、通常はならない。


「ランダムなら→正規分布に従う」は正しいですが、

「正規分布に従う→ランダム」とは限らない。

そういうものではないかと思います。


株価

technote投資ダイアリー-kabuka



ランダムウォーク
technote投資ダイアリー-rand


株で儲ける事は可能か?

これは可能だと思います。


明日の株価がコインを投げるようなものでまったくランダムならば、これは不可能です。

サルが運用してもファンドマネージャーが運用しても同じ。

手数料分だけコツコツ負けていきます。
しかしそうではありません。

株価の値動きには完全にランダムではないいくつかの癖、偏りがあります。

これをうまく利用することで、利益を生むことができるはずです。


世の中にはさまざまなテクニカル指標、ファンダメンタル指標がありますが、玉石混合であり、ほとんどが石といっていいと思います。

稀に玉が混ざりこんでいますが、それもそのままでは使い物にならず、何重もの限定条件が必要です。

それをうまく組み合わせてトレードシステムを作るのですが、完全に自動化するのは難しいです。


イベントで株価は動くのですが、そのイベントがどんな性質のもので、どんな大きさでどのくらい続くのか?

このあたりは人間の情緒的な判断が勝っています。

完全な自動売買システムは、見果てぬ夢ですね。


もっとも、完全自動売買にする必要は無いのかもしれません。

イベントごとにシステムを手動で切り替えてもいいでしょう。

特に今のようなわかりやすい金融バブル相場では、金融バブル相場用のロボットを走らせればよいのです。

というわけでバブル専用ロボleaping_carp 君、今後ともよろしくですニコニコ


・・・・・


結局のところ、散々数字をひっくり返して小難しい方程式を駆使してみても、とても当たり前の結論に落ち着きそうです。


「大きなイベントが起こったら、しばらくまとまって動くよ」


ファンドマネージャーは、サルより少しだけ賢いんじゃないかなと思います。


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