2012/10/11の新聞で読んだが、特許庁のシステム開発失敗で 54 億円が無駄になったとか。会計検査院が指摘している。
落札した会社をT、プロジェクト管理支援の会社をA、その他下請けや協力会社は下請け、とする。特許庁はそのまま。
指摘内容として
・特許庁の進行管理が十分でなく対応が後手に回った。
・特許庁やT社のシステム担当者は、庁内から出てくる追加条件を次々に求められ混乱し、設計が定まらない状態が続いていた。
・会議体が複数設定されたが位置づけが不明確で、特許庁、T社、下請けの担当者間でのコミュニケーションが取れなかった。
ということらしい。
大手ベンダー主導の場合、プロジェクトが遅れたり開発費が増えたり、という失敗はよくある、むしろ守られることが希くらいなので、反応することはそうそうない。
しかし、このニュースに興味を持ったのは、会計検査院は、要するに「プロジェクトマネジメントがうまく行われなかった」旨を指摘していることだ。
上記ケースでの話に移ろう。すべて推測(憶測)の域を出ないが、当たらずとも遠からず、といったところにはなると思う。
[特許庁の進行管理が十分でなく対応が後手に回った。]
正直なところ、特許庁側での進行管理は行えていないといけなかっただろうが、できるとはとても思えない。ひとつは人材面。もう一つは情報面。
人材面では、プロジェクトマネジメントは、「試験勉強をしてPMP試験に合格しました」というレベルではお話にならないと思う。受験要件として一定の実務経験を求めているが、PMP保持者と話をしても「こいつ実務経験無いんじゃ?」という話や質問が飛ぶことがままあるからだ。
逆にいえば、プロジェクトマネジメントの経験を積んでいる人は頼りになる。更に知識の裏付けがあればより強力だろう。
しかし、そういう人材は滅多にみかけない。T社にもいなかったのだろう。そこで外部のA社にそれを託したものと考えられる。しかし、実はA社にもいなかったのかもしれない。
情報面では、それほど正確な情報がT社やA社から上がってきたであろうか、という点である。通常少々の遅れはごまかし、手が付けられなくなったら報告する、ということをするケースは嫌と言うほど見てきた。今回もそれはあったであろう。
この指摘は分かるものの、ちょっとかわいそうな気もする。
[特許庁やT社のシステム担当者は、庁内から出てくる追加条件を次々に求められ混乱し、設計が定まらない状態が続いていた。]
こういうケースはよくある。おそらくおおまかな情報の内容や情報の流れは把握できていたのだろうけれど、それとは異なるケースが多々あった、ということだろう。
プロジェクトマネジメントの基本はPDCAであり、C(チェック。モニタリングともいう)で問題があれば改善の手を打つ(A、アクション。コントロールともいう)必要があったのだが、そのあたりは有効に機能していなかったのだろう。それが成されない、ということは、そもそもP(プラン)段階で、変更要求の取り扱いをどうするかを決めていなかったのではないだろうか。
そうだとすると現場で声を上げようとも変えることはできなかったのかもしれない。
本来は、変更要求の取り扱いが決めておいて、この状況を見れば「仕切り直し」をするべきだったのではないだろうか。
そもそも特許庁の業務の流れなんて、一般的なものではない。特許庁のシステム担当者でさえ把握していないのだから、民間のIT技術者や経営コンサルタントという人々が知る由もないだろう。特殊な業務であるという認識があればもう少し丁寧に現状分析をする必要があっただろう。
私が担当していたら「業務の詳細を知る」ということで、現場の手伝いを期間限定で行うことを申し出ただろう。実務の詳細を知らずしてシステムなんか構築できないからだ。更に、要件定義や設計段階に入っても現場との人間関係が残っており、確認しやすくなるうえに現場の協力も得やすくなるからだ。
これは、実際にかなり効果があった。機会があれば試して頂きたいほどだ。ただし、腰の重い人、横柄な人、など、接客業のバイトで落とされそうな人は向かないかと。
・会議体が複数設定されたが位置づけが不明確で、特許庁、T社、下請けの担当者間でのコミュニケーションが取れなかった。
会計検査院がコミュニケーションを指摘したというところが秀逸だ。逆に言えば「プロジェクトマネジメントが不在」だったと、この指摘から想像できる。
まあ、これは言わずもがなの結果だったのだろうと思う。
最後に私見を。
システムの仕事は、いかにお客様に楽してもらう、喜んでもらう、効率を上げてもらう、等の、お客様のメリットになることが重要であり、その対価を頂くものだと考えている。それを実現するための禁じ手はない。
経験上、必要あればお客様の業務フローも変えてきた。例えば社内だろうが企業間であろうが分断していたデータの流れを変え業務効率を大幅に改善することで会社の残業支給額/社員の残業を減らしたり。
そのためにはその過程でお客様に大胆な提案も必要である。お客様の要望、という上っ面ではなく、その根本、本質を突き詰めることも必要になるし、複数のステークホルダーとその思惑の利害を調整したりと、多方面への根回しや交渉が必要にもなる。しかし、こういう交渉ごとをうまく終え、プロジェクト進行がよりスムースに進行できたり、目指すものが完成させるという結果を出すことがプロジェクトマネジメントの醍醐味ではないかな、と私は感じている。
世間でプロジェクトマネジメントという立場にいるものの、うまくいかないとお嘆きの方、もっと奮起されたい。
落札した会社をT、プロジェクト管理支援の会社をA、その他下請けや協力会社は下請け、とする。特許庁はそのまま。
指摘内容として
・特許庁の進行管理が十分でなく対応が後手に回った。
・特許庁やT社のシステム担当者は、庁内から出てくる追加条件を次々に求められ混乱し、設計が定まらない状態が続いていた。
・会議体が複数設定されたが位置づけが不明確で、特許庁、T社、下請けの担当者間でのコミュニケーションが取れなかった。
ということらしい。
大手ベンダー主導の場合、プロジェクトが遅れたり開発費が増えたり、という失敗はよくある、むしろ守られることが希くらいなので、反応することはそうそうない。
しかし、このニュースに興味を持ったのは、会計検査院は、要するに「プロジェクトマネジメントがうまく行われなかった」旨を指摘していることだ。
上記ケースでの話に移ろう。すべて推測(憶測)の域を出ないが、当たらずとも遠からず、といったところにはなると思う。
[特許庁の進行管理が十分でなく対応が後手に回った。]
正直なところ、特許庁側での進行管理は行えていないといけなかっただろうが、できるとはとても思えない。ひとつは人材面。もう一つは情報面。
人材面では、プロジェクトマネジメントは、「試験勉強をしてPMP試験に合格しました」というレベルではお話にならないと思う。受験要件として一定の実務経験を求めているが、PMP保持者と話をしても「こいつ実務経験無いんじゃ?」という話や質問が飛ぶことがままあるからだ。
逆にいえば、プロジェクトマネジメントの経験を積んでいる人は頼りになる。更に知識の裏付けがあればより強力だろう。
しかし、そういう人材は滅多にみかけない。T社にもいなかったのだろう。そこで外部のA社にそれを託したものと考えられる。しかし、実はA社にもいなかったのかもしれない。
情報面では、それほど正確な情報がT社やA社から上がってきたであろうか、という点である。通常少々の遅れはごまかし、手が付けられなくなったら報告する、ということをするケースは嫌と言うほど見てきた。今回もそれはあったであろう。
この指摘は分かるものの、ちょっとかわいそうな気もする。
[特許庁やT社のシステム担当者は、庁内から出てくる追加条件を次々に求められ混乱し、設計が定まらない状態が続いていた。]
こういうケースはよくある。おそらくおおまかな情報の内容や情報の流れは把握できていたのだろうけれど、それとは異なるケースが多々あった、ということだろう。
プロジェクトマネジメントの基本はPDCAであり、C(チェック。モニタリングともいう)で問題があれば改善の手を打つ(A、アクション。コントロールともいう)必要があったのだが、そのあたりは有効に機能していなかったのだろう。それが成されない、ということは、そもそもP(プラン)段階で、変更要求の取り扱いをどうするかを決めていなかったのではないだろうか。
そうだとすると現場で声を上げようとも変えることはできなかったのかもしれない。
本来は、変更要求の取り扱いが決めておいて、この状況を見れば「仕切り直し」をするべきだったのではないだろうか。
そもそも特許庁の業務の流れなんて、一般的なものではない。特許庁のシステム担当者でさえ把握していないのだから、民間のIT技術者や経営コンサルタントという人々が知る由もないだろう。特殊な業務であるという認識があればもう少し丁寧に現状分析をする必要があっただろう。
私が担当していたら「業務の詳細を知る」ということで、現場の手伝いを期間限定で行うことを申し出ただろう。実務の詳細を知らずしてシステムなんか構築できないからだ。更に、要件定義や設計段階に入っても現場との人間関係が残っており、確認しやすくなるうえに現場の協力も得やすくなるからだ。
これは、実際にかなり効果があった。機会があれば試して頂きたいほどだ。ただし、腰の重い人、横柄な人、など、接客業のバイトで落とされそうな人は向かないかと。
・会議体が複数設定されたが位置づけが不明確で、特許庁、T社、下請けの担当者間でのコミュニケーションが取れなかった。
会計検査院がコミュニケーションを指摘したというところが秀逸だ。逆に言えば「プロジェクトマネジメントが不在」だったと、この指摘から想像できる。
まあ、これは言わずもがなの結果だったのだろうと思う。
最後に私見を。
システムの仕事は、いかにお客様に楽してもらう、喜んでもらう、効率を上げてもらう、等の、お客様のメリットになることが重要であり、その対価を頂くものだと考えている。それを実現するための禁じ手はない。
経験上、必要あればお客様の業務フローも変えてきた。例えば社内だろうが企業間であろうが分断していたデータの流れを変え業務効率を大幅に改善することで会社の残業支給額/社員の残業を減らしたり。
そのためにはその過程でお客様に大胆な提案も必要である。お客様の要望、という上っ面ではなく、その根本、本質を突き詰めることも必要になるし、複数のステークホルダーとその思惑の利害を調整したりと、多方面への根回しや交渉が必要にもなる。しかし、こういう交渉ごとをうまく終え、プロジェクト進行がよりスムースに進行できたり、目指すものが完成させるという結果を出すことがプロジェクトマネジメントの醍醐味ではないかな、と私は感じている。
世間でプロジェクトマネジメントという立場にいるものの、うまくいかないとお嘆きの方、もっと奮起されたい。