ITプロジェクトにおいて、私が顧客先と直接会話ができる位置に居るときは、顧客と後々揉めたり仕様変更が発生することは極めて少ない。プロジェクト終了後も円滑な関係が保てる。手前味噌だが、成功しているといえるだろう。余談だが、間に入っている会社と私との間で揉めることは多い。
しかし、大規模プロジェクトで大手ベンダーが取り仕切っている場合、横で見ていて不思議なくらい揉め事や仕様変更が発生する。会議中に怒号が響いたり、顧客の無理難題がどんどん出てくる。これは失敗といえるだろう。

その差は何だろうか?

よく聞く話は、「顧客がわがままだ」とか「顧客が話をひっくり返す」とかである。では、私はたまたま良い顧客と出会う強運の持ち主なのか?そんな偶然はそうそうない。
そう、運ではない。やはり何かの違いがあるからだ。

何が違うか、というと、私の場合は「先にやることを決め、顧客と合意する」ということを行っているだけの話である。
これを読むと「じゃあ、合意さえすればいいんだな」と思うかもしれない。しかし「合意のレベル」には注意する必要がある。
合意というからには、顧客側に正しくこちらの主張内容が伝わらなければならない。しかし、多くの場合は流行り言葉、専門用語、自分が分かる言葉だけで合意を得ようとする。それでは顧客側では何を言っているのか分かるはずもない。つまり、「顧客に合意してもらう」という気持ち、配慮が足りないのだ。精神論ではない。顧客が分かるレベル、用語を使って説明すれば、意思疎通は図れる。
顧客が分かるレベル、というと難しいかもしれないが、いかに顧客側に歩み寄るか、という努力をすれば自ずと策は分かるはずである。真剣に顧客の立場になって考えればやり方はいくつも思い当たるだろから、具体的にどうこうやればいい、ということは記載する必要はなかろう。真似たって魂が入っていなければ何もならないから。

これができるだけで、価格が他より高かろうが、工期が他より長かろうが、受注に結びついている。顧客のマネジメント層や経営層からすれば、細かい話は分からないだろう。しかし、いつまでにいくらでどんなことができるのか、ということが分かり、問題なく事が運ぶなら彼らとてありがたいだろう。


失敗するプロジェクトは、「思い込みで仕事を進めている」ケースがほとんどである。IT以外なら当たり前に行われているだろうこと、もっとIT業界の連中は学ぶべきではないかと思う。