IT、特にソフトウェアの技術者は品質といえば「バグがないこと」だけを考えがちであるが、そうではない。

話はそれるが、「全てのバグを発見することは極めて難しい」とされている。ただ、ソフトウェアはいわば論理式なので、数学的に正しければよし、とする考え方もある。あまりそこは細かく言い出すと宗教論争に近くなる部分もあるので、敢えて「顕在化しているバグがない」と表現している。

さて、顕在化しているバグがないなら、高い品質と言えるだろうか?これは、顧客に何を提供しているか、という観点で考えればまだ不足していることが見えてくるだろう。


それを考えて頂くために、2つの実例を挙げる。

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例1:あるソフトウェア
展示会等では非常に使いやすく、業務効率が高そうなソフトウェア。
ただし、操作がもの凄く分かりにくい。画面の文言、挙動など、画面ごとにばらつきがあり、覚えにくいうえ、[ヘルプ]で表示されるのはバージョン情報のみ。
マニュアルもあるのだが、例えば印刷において、A0など、あらゆる用途で出力できるとマニュアル上に明記されているものの、通常の動作で出力できるのはA3,A4のみ。他のサイズは特種な操作が必要になる。


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例2:あるツール
データを変換するためのツールで、客先のデータを入れ替える際にそのツールを使うようにという話があった。
しかし、実際に使うと動作が遅く、データ件数によっては顧客の業務を止めてしまうことになる。他の方法であれば現地での対応時間を5分で済ませられるものが、60~80分もかかる。



上記、利用者が「使いたい」と思うだろうか?

「それは品質ではない」と反論される方もいらっしゃるかも知れない。しかし、数ある品質の定義の中でも、上記は「品質」の範疇に入る。


現在、ASP,SaaS、クラウドなどと表現されるサービスに置き換えて考えればどうだろうか。使いにくい、時間がかかる、というのならそれは「サービスが悪い」のであり、そのサービスとは「サービスの品質」が悪い、ということになる。

なお、SQuBOKに記載があったが、今では「品質」というと誤解があるので「質」という言葉を使うように改めているらしい。

質に対する考え方、指標、観点はまだまだこんなものではない。実務との融合を図っていける情報発信をできればと考えている。