これは、本番よりも準備段階の注意点になろうか。

例えばセミナーなどの講演の場合。
講演者と聴衆とが分かれて、見通しが利くなら仕切る立場としても簡単である。聴衆の様子を見ながら空調を調整する、私語の多いところに注意に走る、など、通常のレベルでOKだ。

しかし、このようなことは事前に「講演者とサインを決めておくのか、こちらの判断で動いていいのか」や「どのレベルに達したらそうするのか」などを決めておく必要がある。私の場合、大体経験上の話をして、そのレベルでよければそのまま適用させて貰っているので、講演者とサインを決めることはほとんどない。

次のようなことは、そこそこ広い会場なら事前に講演者へ「勝手にやります」と宣言している。
・空調であれば、服装を見て、上着を脱ぐ人が増えてくれば少し温度を下げる。
・講演者の水分摂取が多く、飲み物が切れ掛かってきたが講演時間がまだありそうなら次の飲み物を用意する。
・聴衆の最前列で聞こえる私語が、講演者の声を邪魔するようなら注意に走る。


講演は仕切りとしてはかなり楽な部類だ。気を張り詰めるのが、音楽会の本番の場合。


私がやったことのあるのはおおむね2種類。
・一度舞台上に立てば長時間舞台裏に引っ込まないタイプのもの。合唱団の演奏会やプロの演奏者の場合はこれだ。
・演奏者が数曲演奏すれば次の演奏者へと次々変わっていくタイプのもの。音楽教室の発表会などがこれだ。

難易度が高いのは後者。ピアノの発表会であれば個別のいすの高さ、座布団の有無、また、たいていプロの写真屋が撮影しているので、髪の長い子にはヘアピンなどを用い、顔が隠れないようにする、なども必要である。ひとりづつ楽器が違う場合は、大きさにも依るが楽器の運搬や楽器を置く台が必要な場合もある。
演奏者が入れ替わる際、舞台が暗転しアナウンスが入る。その間が準備に充当できる訳だ。この際も準備に時間が掛かりすぎたり、ドタバタと音を立てたり、動いている姿が目立つようでは、聴衆は興ざめである。

これらをうまく運営するには、どの演目で、誰がどの配置で、どの用具を使い、ということをの配置で、というものをリハーサルの際にすべて確認しておくことが重要である。
また、スタッフもスタッフだけの立場ではなく、観客席からスタッフの動きのいい例/悪い例を見せて、本番で「悪い例」を実施しないように指導しておかないと、意外やってしまうのだ。

演奏に対してはずっと練習してきたもの。それを裏方の配慮のなさで観客、演奏者に嫌な気持ちになってもらっては申し訳ない


そういうことができるのも、事前準備を怠らないからで、要求されたことはこれで進めることができる。要求以上のことを行うためには心に余裕が必要で、事前準備を十二分に行っているから余裕が生まれているのだ。


マネジメントでもPDCAのP(Plan 計画)が最も重要である。走りながら考える部分があってもいいが、無計画で走るのは無謀といわざるを得ない。