現在、大手のITベンダーさん(総合家電メーカーになるのかな?)でお仕事をしている。私の目から見れば彼らは「可哀想」である。

私自身は規模の大小を問わず、幾多のプロジェクトに携わってきた。大きいところでは「業務的にも技術的にも、狭く、深く」、小さいところでは「業務や顧客の要望を広く深く、技術的なところは基本既存の知識で、必要なら調査」ということをやってきた。
小さいプロジェクトでは、顧客の要望から顧客の業界がとりまく経済状況、競合他社、そこの社の商品力など、顧客の視点、場合によっては顧客以上に顧客の置かれている境遇を調べ上げ、その中でのご提案したり、全体のコントロールをしたりと、プロジェクトに対して責任は重いものの、私がIT業界に携わって最も面白いと感じられる部分をたくさん経験したが、大手のITベンダーさんでは「小さいプロジェクト」というものの受注が極めて少なく、そういう経験をする機会がめったにないらしい。

ちなみに、いわゆる「優秀な人」が多い。聞けば有名私立大学出身だとか、ゴロゴロいる。しかし、仕事がなぜかうまく進まない。

私の目から見れば理由は一目瞭然で、「上からの指示を待ってしか仕事ができないから」である。要するに自立的に「こうするよ」と働きかけることができず、立ち止まっているからだ。
指示待ちの体質は下請け専業のベンダーも同様のようである。

私は「こういう問題があるからとりあえず私の責任でこうしておきます」「こうしてると今後こんな問題がありそうだから、それを考慮してこういう方向で仕事を進めておきます」と勝手に宣言し、仕事を進めている。それが結構顧客やベンダーの上層部から受けがいい。
つまり、顧客も、ベンダーのマネジメント層も、自律的な人材を欲しているのである。

私の昔話をすると、この業界に入る際、業界では結構早い時期に上場したITベンダーに入ることができた。そこは「大きな仕事」のみならず「小さな仕事」も大切にしている会社であり、小さく短いプロジェクトを数多く経験でき、更にある程度の権限を委譲してくれたので、2年目までにお客さんとの打合せに参加し、設計から製造、運用まで、一通りの工程を経験させて貰った。顧客と向き合い、顧客の要望をITで実現する際の方向性がおかしくないかを考え、何が適切かを考える機会をその会社から頂いたことになる。

その私の経験に重ねると、自律的な人は「責任ある仕事に就けないと育たない」のではないかと思う。もちろん、責任だけではなく権限も与える。更にコーチ役を勤められる人材にコーチ役をさせて、暴走するリスクを抑える、ということも必要だろう。私の場合、いつも私に目をかけてくれた課長が背後に居た。
経験をつませることで、そこからの知識を吸収し、プロジェクトのどの局面でどうすればいいのか分かっている人を作っていくことで、「こんなときは」とその知識を使える人材を増やしていくと、もっとプロジェクトはうまくいくのではないだろうか?

ただし、断っておくが、本来は「脊髄反射的に動ける人」を自立的に動ける人と定義するべきだろう。前段で書いたのは「知識や経験に基づいてだが、その状況は経験があるので動ける人」になるので、厳密には違う。本来的には前者の資質を持つ人が望ましいが、絶対数が少ないので「知識や経験ベースででも動ける人」を育成するしか手は無いだろう。

私が携わるプロジェクトでは人材育成の目標として、そういうものを掲げていければ、と思う。