その後、母が突発性難聴になり
私は稼業を手伝うようになる
色々な傷を洗い流すように
仕事に打ち込む日々
そんななか仕事先で出会ったのが
Mだった
Mは私の8個上
お互いの時間を埋めるように
毎日仕事場に迎えにきた
子供だった私にとっては
紳士そのものだった
料理の取り分けから
何から何まで
お姫様のように扱ってくれた
私は彼にどんどんのめり込んでいく
必ず週末は旅行
色々なところに連れていってくれた
私の両親にも紹介し
心から幸せだった
この幸せがずっと続くと思っていた
その頃、半同棲していた部屋を
引っ越すことになり
引っ越しの準備の最中
彼のクリーニングの札が
女の人の名前だった
おかしいと思い
共通の友達に相談するも
知らないという
そんな時私の妊娠が発覚した
喜んで彼に報告する
すると返ってきたのは
「今は仕事が大変だから、
あと3年待って欲しい」
「そしたらちゃんとするから」
そう謝られた。
愛する人との赤ちゃん
本当に産みたかった。
産んであげたかった‥
でも1人では
どうすることもできなかった
まだまだ1人で産む決心が
出来なかった‥
彼の言葉を信じて
泣く泣く諦めるしかなかった
病院に付き添いに来ていた彼
手術が終わると助産婦さんから
「あんな男辞めな。
考えた方がいい」
そう言われ、その言葉が引っかかる
家に帰り
共通の友達にそのことを報告すると
泣きながら謝る友達
衝撃の事実を聞かされた
彼は本当は結婚して子供もいた
私と出逢う前に子供が産まれ
出逢ってから家に帰らなくなった
子供も病気がちなのに
家にお金も入れないような状況で
奥さんの貴金属も勝手に持って出て
連絡もつかない‥
とのことだった
頭をハンマーで殴られた
そんな衝撃だった
彼女は最初から知っていて
Mから口止めされていた
もっと早くに私に伝えてれば
私が傷付くことはなかったと
謝られた
最愛の人の裏切り
心が張り裂けそうだった
無情にも彼からの引っ越し完了の連絡
話があるとだけ告げる
次の日
術後間もない身体で
新しい新居に向かう
新居は彼が一人準備していて
綺麗に片付いていた
それを思うだけで泣きそうになる
やり場のない怒りを
本当は全てぶつけたかった
全部言えたらどんなに楽か‥
けれど
話してくれた友達にも迷惑はかけられない
「別れよう」
ただそう告げると
彼が整理して運んでくれた
私の荷物をまとめる
「さようなら」
溢れる涙を見せないよう
そっと部屋を後にした
彼の番号もアドレスも全て消去した
彼といた時間を
1日でも早く忘れられるように