彼の出て行く日

彼の使っていた部屋は

何もない引っ越したばかりの

状態になっていた




様々な想いが頭を駆け巡る

彼との3年の日々‥



実際には

楽しい思い出の方が

少なく



数えきれないくらいの

喧嘩の日々



辛いことも悲しいことも

沢山あった



涙も数えきれないくらい流した



あんなにも憎くて

離れたかったのに



なのに悲しいのはなんでだろう



複雑な心境だった



1人になるのが寂しいだけ

この時はそう思ってた



今までの恋愛のように

時間が経てばすぐ忘れられる‥



そう思ってた



「今までお世話になりました」



彼の深々と下げた顔は



泣いてるように見えた



「こちらこそ。

 本当にお世話になりました。

 今までありがとう」



彼の出て行った

玄関の扉の音だけが

無情にも部屋に響いた



これで本当に終わったんだ‥



そんな心とは裏腹に

実感がないのが本音だった



私達の3年間が

こんなあっさり終わってしまうとは

信じられない気持ちだった



夕方出て行った彼から着信が

仕事中だった私は

少ししてから掛け直す



号泣した彼の声



「笑顔に出来なくてごめん。

 ちゃんとさっきは言えなかったから

 どうか幸せになってほしい」



私も声にならない想いで

涙が溢れ出す‥

胸が締め付けられるような

想いだった



これが私達の

サイレントの幕開けだった