箪笥のなか (講談社文庫)/長野 まゆみ
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あらすじ

親戚の家からゆずりうけてきた古い紅い箪笥。ひとつだけ金具が違うひきだしは不思議なものが現れる。そして箪笥はこの界ならぬ人々をも引き寄せる――現実と非現実の淡い世界をたゆたうものを細やかに描く連作短編集。



これの前に同作者さんの「あめふらし」を読み、この世界観にはまり手にしたのが「箪笥のなか」です。


この物語、何が良いって登場人物が素敵なんです。

嫌な感じの人が誰一人もいない。

語り手は「わたし」なのですが、その弟は何かを引き寄せる力がある体質で、割と何でも受け入れるタイプです。なんだろう。そういった人を描くときの特徴なのか、この弟しかり、夏目友人帳の貴志しかり、受け入れた人は柔らかい性格を持っています。言い方を変えると器がでかいといいますか、どんとこい、なるようになれという感じで良い具合にマイペース、まさに「いい加減」の持ち主。

こういう人物像は読んでいて気持ちがいいですよね。

先に言ったようにこの弟だけでなく、「わたし」も弟ほど受け入れる形は無いにしろ、例えば箪笥が酒を飲み干そうがあらまと受け入れる度量がある。弟の嫁は変わり者で、もしかしたら一歩間違えると扱いづらいタイプなのかもしれませんが不思議とへぇ~っと読んでいるこっちが受け入れてしまう。


そういった人たちが住む世界ですですから、出てくる「この界ならぬもの」も恐怖とは全くベクトルの違うもので、読んでいてぞっとすることはありません。「あめふらし」ではすこし湿ったものを感じましたが、こちらはどちらかというと乾いた感じに近いです。いや、乾いているともちょっと違うか。

言うならばシンクに蛇口から水が ぴちょんぴちょん と落ちている感じはあるのですが、じめっとしていない感じで・・・って恐怖がうんぬんと矛盾してしまうか。

とりあえず不思議な感覚を常に背負いながら読むのは確かです。


これも連作短編の形をとっていて、僕が好きな話は「箱屋」です。

多分これを読んだ人はこの話をあげる人が多いのではないかな?ってくらい魅力的な話です。不思議な箪笥に愛情がわいてしまうようなかわいらしい話でした。


「この界ならぬもの」の立ち位置(立場)が絶妙なバランスを保っているような作品で、怪談ではない、妖でもない、どこか柔らかくて、でも何かもの悲しい、そんな世界に一歩足を踏み入れてみてはどうでしょうか。



ふぅ…


ミスドの和ドーナツ、ポンデ・ダブル紫いもと、塩あずきホイップを食べましたが

どちらもおいしいけれどもうひと味足りない気がしました。

紫イモはイモっぽくないし、塩あずきは塩気が足りないような…

ただ、なんだかんだでうん、美味いとぺろりと食べてしまうから気にならないといえば気にならないのだけれど。

万歳味覚バカ。

万歳、美味いか好きじゃないかの2択バカ。