今日授業でグループホームの火災についての講義がありました。
今年1月に長崎の認知症高齢者が暮らすグループホームで火災が起きたそうです。
恥ずかしながら僕はこのニュースを知りませんでしたが、9人が入居しているこのグループホームの内、この火事で7人がお亡くなりになったそうです。
なぜこのような大災害が起きたのか。
まず、この施設にはスプリンクラーが設置されていなかった。
しかし、当時の法律では、老人ホームにはスプリンクラーが必要だが、少人数で構成されるグループホームにはスプリンクラーを設置しなくてもいいことになっていたのだ。
詳しく言うと(勉強不足なので間違いがあるかもしれません)、延べ床面積(各階の床面積の合計)が300㎡以上は必須だが、この火災にあった建築は279.12㎡。そのため、スプリンクラーは設置されていなかったのです。
もし、あと一部屋多く設計されていたら300㎡を超えていたかも知れず、スプリンクラーを設置していたかもしれないのですが…
建築では大抵、ギリギリ収める手法が使われます。
僕らの学生の課題では、建築面積をギリギリまで使いたいため、部屋の広さを大きくするにあたり廊下幅を建築基準法ギリギリにしたり、階段の高さをギリギリの高さまで上げたり(登りづらい)することはありますが…実際にもこうしてなんとか法律をかいくぐる設計をしていくことがあるようです。
それから、消火栓は敷地から600mも離れた場所にあったことにより、消防車が到着してもホースをつなげるのに時間がかかったようです。
600mって言葉にすると短い気もしますが、消防ホースは1本20メートル。それを30本近くつなぐのです。
それに今600m走れと言われたら走れません。
勤務体制は深夜の見張りが一人。
ここの体制が『夜勤』ではなかったため、火災発生時、たった一人の『担当者』は仮眠を取っていたとのこと。
そのため、火事の発見が遅れてしまいました。
この仮眠も決して法律違反ではないようです。
窓は痴呆老人が簡単に移動できないように高い位置に設計されていたことも、救出が遅れた原因のひとつでしょう。しかし、窓が低かったり、掃きだし窓だと徘徊していなくなってしまう危険性もあります。
今回難しいところは、高齢者の安全を考えなかったのか、どうしてスプリンクラーを設置しなかったのか。ということです。
しかし、スプリンクラーの設置には数千万円がかかります。
ただでさえ借金を抱えながら、人件費を削りながら経営している施設。
5年ほど前は700棟くらいだった施設ですが、現在グループホームは8~9000近くつくられており、経営が不安定なところが多いようです。
その苦しい経営の中、高齢者の安全のために1000万出しなさい、消火栓を近くに設置するために1000万出しなさい、他にも安全のために○○するからお金を出しなさい、と言われても、簡単に出せない状況が多いようです。
第一、法律違反はしていないのですから。
安全のために無理をしてでもお金を出すべきでしょうか。
僕の考えは…
もともとグループホームは在宅介護ができない家庭、もしくは疲れてしまった家庭が、高齢者を施設に預け、在宅では得られない生活を、アットホームな生活を送ってもらおうということでつくられています。
つまり、高齢者は『豊かな生活』を求めてここにいるのです。
しかし、決して楽ではない経営、それでもなんとか豊かな生活を与えているところに高価な安全装置を設置することで食事の質が落ちたり、その他サービスが低下してしまっては本末転倒です。
さらに、もし、高齢者の命をないがしろにするなというなら…今の住宅ではどうでしょう。
家にスプリンクラーはついていますか?簡易なものでも数百万するそうです。これを簡単に設置できますか?
高齢者の命だけ大切にすればいいのですか?子どもは?我々は?
命を大切にしなさいというとさまざまなところで矛盾や無理が生じるのです。
もちろん、我々が住む『箱』はいのちを守る箱であることは大前提であり、この無理や矛盾を解消することも建築のひとつなのでしょうが…
(やはり、お金の問題が絡んでしまうようです)
決して火事にあったグループホームも許されるものではありません。
経営が大変でも、夜間勤務体制が弱かったことは確かで、人の生活を預かっている以上、安全を十分考えることは最優先であるべきです。
その点に置いて、責任感が足りなかった結果でもあると言えます。
いのちを最優先に考えるべきか
(死んでしまっては全てがお終いである)
豊かな生活を最優先に考えるべきか
(人は生きることだけに意味を持っているのではない)
不自由な選択です。
あなたならどう考えますか?
ふぅ…
結局僕もはっきりとした答えがわかりません。
しかし、おちゃらけてばかりはいられません。
( ̄□ ̄;)
今日中にワークショップの企画を考えてまとめなくちゃいけないのに…
あまりに考えさせられる講義だったためつい…
おぉぉぉぉぉ…
やばいっす。