最近読んで感動した本。(完全ネタばらしの感想なのでこれから読む方はどうかご注意を…。)
「時の旅人」 アンソン・アトリー作
儚く、切なく、ただただ美しい物語。
読み終わった後の、胸をしめるこの感情はなんだろう。
そこに確かにあったのに、過ぎ去ってみれば跡形も無く消え去っていて、でも、じゃあ意味がなかったのかといえば絶対に意味はあったと言える。
でもそれがなぜかは分からない。
そんな話。
捉えようのない、少し悲しくて泣きたくなるような、でもとても美しく、小さくきらめく物語。
主人公はペネロピーという女の子。
体が弱く、療養のためにサッカーズという田舎の屋敷に来る。
温かな人々に囲まれ、穏やかな日々を送っていたが、かつてそのお屋敷に住んでいた人たちの姿が見えるようになり、過去と現在を行ったり来たりする。
その過去と現在の行き来が非常に幻想的で、ぱっと何かの合図があって切り替わるのではなく、気付いたら過去にいて、気付いたら現在の人がそばにいるような…。
ふっと時空をこえるので、追ってる自分も一緒に時間に惑わされている気分になる。
過去は、16世紀。
お屋敷に住んでいるのはアンソニーという領主とその奥方、弟のフランシス、召使たち。
当時のスコットランドには、幽閉されているメアリーという女王がいて、アンソニーは妻を愛しながらもメアリーに忠誠を誓い、救い出す計画を立てている。
ペネロピーは未来から来たので、女王を救い出す計画が失敗し、メアリーもアンソニーも処刑されることを知っている。
でも過去は変えられない。
知っていながら、アンソニーやその奥方、フランシスたちと交流を深めていく。
そしてやがてフランシスとの間に恋が芽生えていく。
フランシスは正義感強く、アンソニーの計画を知って憂えていながらも、快活で、ペネロピーを信用し、心のうちを打ち明ける。
このフランシスが、緑の服を着ているペネロピーを見て、その姿に見惚れつつ、からかうように「グリーンスリーブス(緑の袖)」を歌うのだ。
グリーンスリーブスはわがよろこびよ
グリーンスリーブスはわがたのしみよ
グリーンスリーブスはわが心の宝
ああ、うるわしのレディ・グリーンスリーブス
絹の袖ゆるやかに、
草の緑の服を着る君、
君こそ、われらが取り入れの女王。
ああ、されど君、われを愛したまわず。
グリーンスリーブスはわがよろこびよ、
グリーンスリーブスはわがたのしみよ、
グリーンスリーブスはわが心の宝、
ああ、うるわしのレディ・グリーンスリーブス
未来に生きているペネロピーは、ずっと過去にいれるわけではない。
自分の意思とは関係なく、未来と過去を行きつ戻りつする。
消えては現われ、現われては消えるペネロピーが、未来から来た人間だということをフランシスは理解する。
アンソニーや奥方や、他の召使たちも、不思議なペネロピーの存在を受け入れる。
ペネロピーは全て知っていながら、過去の人たちと心を通わせあう。
フランシスと共に人生を歩んでいくことが叶わないことを理解していて、現在の世界で姉に「私は結婚しないわ、恋もしないわ」とフランシスを想いながら口にする。
計画は失敗するが、物語ではアンソニーやメアリー女王が処刑されるところまではかかれていない。
でもアンソニーは自分が命を失うであろうことを知っている。
知った上で、自分の命をメアリーにささげることを静かに決意している。
奥方は、自分やお腹の子供のために生きていてほしいと願いながらも、結局は女王に忠誠を誓うアンソニーを悲しい笑顔で受け入れる。
フランシスやサッカーズの召使たちは、アンソニーと運命を共にする覚悟を決めている。
全て分かった上で彼らは勇敢に受け入れてるのだ。自分たちの運命を。
過去を変えられないペネロピーは、何も出来ないことを悟っていながらただ祈る。
そして彼らと、フランシスと共にいたいと願う。
でも時は容赦なくペネロピーを現在へ連れ戻す。
消えていくペネロピーにむかって、フランシスは「ペネロピー!そこにいてくれ!ぼくたちを置いていかないでくれ!」と追いすがるが、ペネロピーは影のように消えていく。
最早体は過去にいれず、ただ心だけが過去の残像を見れている。
「ペネロピー!ここにいてくれ!」とささやくフランシスの声が聴こえる。
そして、フランシスが空に向かって物悲しく、からかうような声で歌っているのが聴こえる。
グリーンスリーブスよ、いざさらば!
神の恵み、君が上にあらんことを。
われ、今も君を愛す、
ふたたび来たりて我を愛せ。
グリーンスリーブスはわがよろこびよ、
グリーンスリーブスはわがたのしみよ、
グリーンスリーブスはわが心の宝、
ああ、うるわしのレディ・グリーンスリーブス。
ペネロピーは、その姿を最後に、生きているうちに彼らと会えるのは二度とないだろうことを悟る。
でも、いつか、自分がその生を終えたとき、彼らのところに戻り、一緒になるだろうと思う。
そして物語は終わり。
なんていう余韻…。
ペネロピーは過去にいけるけど、厳格な時に阻まれて、何も変えることができないのだ。
運命は何一つ変わらない。
でも、意味がなかったわけではない。
なんていったらいいのだろう、この感覚は…と思っていたら、この物語を雪に例えている人がいた。
アマゾンのレビューから引用↓(勝手に引用、怒られるかしら…)
「読み終わった今、私の心には、美しいものを見たあとの疲れが残っています。例えるならば、雪みたいな美しさ。雪は、溶けて見えなくなるけれど、無くなってしまうのではなく、空気をうるおし、土を濡らして、いつかまた空へと戻っていくだけ。それが分かっていても、きれいで、はかなくて、泣きたくなる。そういう感じ。
静かな、一人になれる場所で、少しずつ読みたい本です。おすすめです。」
まさしく…。
劇中に出てくるグリーンスリーブス、私は小学校のときに知った曲だと思うが…。
そのときはタイトルと曲しか知らなかった。
小学生だったので、グリーンが緑だということは知っていたけど、スリーブスが「袖」ということは知らなかった。
物悲しく美しい旋律と、グリーンがタイトルにつくことから、勝手に田園とか森林とか、自然を歌った曲なのだと思っていた。
それが、緑の袖の女の人を意味する歌だと知ったときはちょっと残念だったのだけど…。
でも今後は、グリーンスリーブスを聴く度に、サッカーズの豊かな自然と、ペネロピーとフランシスの儚く切ない恋を思い出すだろう。
話は変わって今日のこと…。
今日は新入社員のときに同じ部署でお世話になっていたS先輩のお宅へ、もう一人のT先輩と遊びにいった。
S先輩、今年ご結婚されたので、新居へ。
旦那様は同じ職場の建築職の方なので、職業柄(?)かお洒落なマンションだった。
お好み焼きパーティー![]()
旦那様はイケメンで爽やかで…S先輩も童顔でかわいらしい方なので、本当にお似合いだった![]()
結婚したくなっちゃうな~![]()
夜は近所の友達たち何人かと会って、話の流れでお台場までドライブにいってきた![]()
レインボーブリッジと、高層マンションの夜景と…。
短時間のドライブだったけど、きっとこういう夜を何年かあとに懐かしく思い出すのだ。
さて、満喫した土日だけど明日は会社…![]()
気持ちを取り戻して、あと三日、頑張ろう![]()


