- 源氏物語九つの変奏 (新潮文庫)/新潮社
おもしろい: /5
クセになる: /5
「源氏物語 九つの変奏」を
読みました。
『帚木』 松浦理英子
源氏は方違えとして伊予の守のもとへ出向いた。
そこで頭の中将たちとの女性談義の際に話題になったような
”中の品の家の女”というべき女性を見つけてしまう。
『夕顔』 江國香織
世話になった乳母を見舞うべく立ち寄った家の隣家から
源氏は扇にのせた夕顔の花を受け取る。扇からはやさしい
香りが立ち上り美しい詩が書かれていた。
『若紫』 角田光代
洗い物を終え一息つくと、店の方から声がかかった。
おばさんに言われるまま飲み物を三番テーブルへと運ぶ。
おねえさまたちに囲まれてそこにいた男は若く美しかった。
『末摘花』 町田康
大輔の命婦から聞いた故・常陸宮の姫君に興味津々の
源氏。強引にことを運ぼうとするが、
命部はどうにも頼りなく、頭の中将ときたらウザい。
『葵』 金原ひとみ
妊娠検査薬で陽性を確認した葵は、光にこのことを
告げた。二人とも親との関係はよくないが、
光は葵の妊娠のことを母親に告げないようだった。
『須磨』 島田雅彦
朧月夜との件で須磨へと流されることになった源氏は
何度も妻を連れて行きたいと考えた。しかし自身の
処遇を考えると諦めざるを得ない。寂しい日々であった。
『蛍』 日和聡子
源氏の大臣は玉鬘の姫君に懸想をほのめかされるので
姫君はたいそう気に病んでいた。
父と娘のような関係なのである。
『柏木』 桐野夏生
六条院のもとに降嫁した朱雀院の娘三宮は
まだ14歳だった。完璧を求める六条院のもとで
息が詰まるような生活にうんざりとした。
『浮舟』 小池昌代
今年はいよいよ定年となる。女は毎晩源氏を読み進め、
胸にはウキフネという女が住みついていた。
ある日、寝入った女はウキフネと一体となり……。
源氏物語のオマージュ(?)というか
ちょっといじった短編みたいなものが
9編入っていました。
読書会のちゃありぃさんに
お借りしましたよ。
どうもありがとうございます。
原作のイメージがそのままのものから
舞台を現代に移したものなど
読み応え十分でしたよ。
特にお気に入りは
町田康さんの「末摘花」。
これはすごかったです。
町田作品の主人公そのままの源氏に
ウザさ満点のストーカー頭の中将、
源氏の頼みをとぼけてかわす大輔の命婦
強烈な容姿描写をされる末摘花
そして、
笛でセッション、琴の音がミュートなど
微妙に現代語とまぜまぜした表現が
新感覚です。
この源氏キャラでもっと読みたいと
思いました。
あと気になったのは
桐野夏生さんの「柏木」ですかね。
今まで源氏側からしか見てなかったので
女三宮サイドからのストーリーが
新鮮でした。
源氏物語を別サイドから見るって
面白いですね。
原作だと源氏が何よりも素晴らしい
完璧な紳士ってことになってるけど、
登場人物たちの中には
裏でいろいろ思うところがあったりして。
興味深い想像ですね。
どの短編も一読の価値ありで
よかったです。
ちゃありぃさん、ありがとうございました!