- 黙示録 (単行本)/角川書店
壮大: /5
のめりこみ: /5
池上永一さんの
「黙示録」を読みました。
母が病にかかり
村を追われた蘇了泉(そりょうせん)は
大道芸の一座で鉦を叩いて暮らしていた。
ところが、ある日一座の花形が
3回転宙返りを失敗し、即死する。
一座は解散となり
了泉はたちまち生きる術を失ってしまった。
そんな中、王府の踊奉行である石羅吾(いしらご)は
彼に人の視線を集める才を見出し、弟子とする。
了泉は天才舞踏家として
みるみる頭角を現し始め――。
お久しぶりの池上作品です。
もちろん舞台は琉球です。
南国の風を感じる、外連味たっぷりの文章は
「これ!これですよ!!」とたちまち
池上ワールドに没入してしまう魔力がありますね。
主人公はとにかく目的のためには
むちゃくちゃをやります。
母の病を治す薬が江戸にあると聞くと
江戸へ向かう謝恩師に楽童子として加わろうと、- ライバルを闇討ちし大怪我を負わせ、
体を売ってまでその地位を手に入れる。
それでも溢れんばかりの踊りの才能と愛嬌で
ついつい応援してしまうキャラクターです。
品行方正なライバルの雲胡(くもこ)や
生まれながらの道化チョンダラー
妖怪じみた変態の與那城王子(よなぐすくおうじ)
家の再興を目指す計算高い少女の音地戸(おとちと)など
物語の前半はコミカルな登場人物たちが大暴れします。
そして登場人物たちの成長とともに
徐々にストーリーも深みを増して、
琉球の歴史、思想が
物悲しいような切ないような
何ともいえない気分にさせてくれますね。
かつての琉球という国だった島々が
現在「沖縄県」と呼ばれ
日本になっているという事実に
無常観いっぱいです。
「テンペスト」もかなり好きでしたが、
こちらもよかったです。
池上ワールド、やはりいいですね。