「黙示録」琉球の舞踏家一代記 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

黙示録 (単行本)/角川書店

壮大:☆☆☆☆ /5
のめりこみ:3737373737 /5


池上永一さんの
「黙示録」を読みました。


母が病にかかり
村を追われた蘇了泉(そりょうせん)は
大道芸の一座で鉦を叩いて暮らしていた。
ところが、ある日一座の花形が
3回転宙返りを失敗し、即死する。
一座は解散となり
了泉はたちまち生きる術を失ってしまった。

そんな中、王府の踊奉行である石羅吾(いしらご)は
彼に人の視線を集める才を見出し、弟子とする。
了泉は天才舞踏家として
みるみる頭角を現し始め――。


お久しぶりの池上作品です。
もちろん舞台は琉球です。

南国の風を感じる、外連味たっぷりの文章は
「これ!これですよ!!」とたちまち
池上ワールドに没入してしまう魔力がありますね。

主人公はとにかく目的のためには
むちゃくちゃをやります。
母の病を治す薬が江戸にあると聞くと
江戸へ向かう謝恩師に楽童子として加わろうと、
ライバルを闇討ちし大怪我を負わせ、
体を売ってまでその地位を手に入れる。
それでも溢れんばかりの踊りの才能と愛嬌で
ついつい応援してしまうキャラクターです。

品行方正なライバルの雲胡(くもこ)や
生まれながらの道化チョンダラー
妖怪じみた変態の與那城王子(よなぐすくおうじ)
家の再興を目指す計算高い少女の音地戸(おとちと)など
物語の前半はコミカルな登場人物たちが大暴れします。

そして登場人物たちの成長とともに
徐々にストーリーも深みを増して、
琉球の歴史、思想が
物悲しいような切ないような
何ともいえない気分にさせてくれますね。

かつての琉球という国だった島々が
現在「沖縄県」と呼ばれ
日本になっているという事実に
無常観いっぱいです。

「テンペスト」もかなり好きでしたが、
こちらもよかったです。
池上ワールド、やはりいいですね。