「かたみ歌」不思議であたたかい。 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

かたみ歌 (新潮文庫)/朱川 湊人

切ない:かなしいねかなしいねかなしいねかなしいね /5

古きよき……:☆☆☆☆ /5



朱川湊人さんの

「かたみ歌」を読みました。


ブログ友達の

naminnieさんにお借りしました。



『紫陽花のころ』

 30年ほど昔、比沙子と都電沿いのアパートへ移り住んだ。

 散歩に出た近所のアカシア商店街にあるラーメン屋「喜楽軒」の

 そばで怪しげな人物がじっと店の2階を見つめている。


『夏の落し文』

 「ケイスケアキミレス」と書かれた紙が電柱に貼ってあったらしい。

 喘息持ちの啓介は自分が「秋見れず」、夏の間に死ぬのではないかと、

 不安を抱く。聡明で優しかった啓介の兄は……。


『栞の恋』

 酒屋の邦子はたまに通りがかる学生風の男に憧れていた。彼が

 古本屋「幸子書房」で難しそうな本を立読みしている見た邦子は

 彼がはさんだ栞のページにそっと手紙を忍ばせた。


『おんなごころ』

 スナック「かすみ草」のママ初恵は酒飲みの夫から逃げてきた豊子と

 娘の満智子をかくまっていた。だが、豊子は夫と別れようとしない。

 初恵がやきもきしているうちに、豊子の夫が死んだという連絡が入った。


『ひかり猫』

 マンガ家を目指していた「私」のアパートに猫が一匹住み着き、

 チャタローと名づけてかわいがっていた。ある日、編集者にひどい言葉を

 浴びせられ帰宅した「私」は、猫のような動きをする光る玉を見つけた。


『朱鷺色の兆』

 初めはピンクの花束を持った老婆だった。彼女はミキサー車に

 轢かれてしまった。後に友人に聞くと、老婆はピンクの花束など

 持っていなかったという。

 

『枯葉の天使』

 久美子は出版社勤めの夫と覚知寺のそばに引っ越してきた。

 覚知寺には毎日朝と夕方に一人の老人が参拝くる。彼は必ず

 石灯籠の穴を覗き込んでいく。久美子は不思議に思っていた。



昭和40年だい半ばの

「アカシア商店街」を舞台にした

連作短編でした。


各短編の主役達が

過去を思い出す形で語るちょっと不思議な

お話です。


すべての短編に古本屋の「幸子書房」と

あの世とこの世を結ぶという噂のある

覚知寺が登場します。


そして短編全体を通して

幸子書房の店主である老人と

覚知寺をめぐる

もう一つの物語があらわれてきます。


この時代を知っているわけじゃないのに

懐かしく感じる、そんな作品でした。


お気に入りは「夏の落し文」です。


兄弟が想い合う姿が

朱川作品の「わくらば日記」シリーズを

彷彿とさせます。


好きなシリーズなんですよね。


不思議でありえない現象が

多いのに、

素直に受け入れられてしまう。


朱川作品マジックです。