「花宵道中」諸行無常 | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

花宵道中 (新潮文庫)/宮木 あや子

儚くも美しい遊女の恋:☆☆☆☆ /5

涙:かなしいねかなしいね /5



宮木あや子さんの「花宵道中」を読みました。

みやこのさんのオススメです。



江戸吉原の小見世「山田屋」の遊女たちの物語。


『花宵道中』

 山田屋の朝霧は器量は悪いが、体にある特徴があり、

 客受けがよかった。ある日、八幡様の店を見に行き、

 草履をなくした朝霧を浪人風の男が抱き上げた。

 

『薄羽孵蝣』

 茜は好いた男に会うために茶屋に向かった。山田屋の新造である

 茜はあと二月で初見世を迎える。それからは姉たちのように

 客をとらなければならないのだ。


『青花牡丹』

 母は自害し、父は怒り、娘である霧里を犯した。弟の東雲は

 姉を助けようと、父に体当たりし、頬を切りつけられる。父がいなくなり、

 霧里は島原へ、東雲は絵の才能を活かし反物の職人となった。


『十六夜時雨』

 馴染みの髪結い・弥吉が年で右手がしびれると訴え、

 これからは弟子の三弥吉をよこすと言った。八津は下手糞は嫌だと

 不満を口にしたが、やってきた男は腕も確かで、しかもいい男だった。


『雪紐観音』

 山田屋の看板遊女・緑は三津の死に泣きくれた。新造の頃、

 子ども頃の心の傷からか口がきけなかった緑に三津は

 気負わず親しくしてくれた。



官能的で美しい、

そして儚い遊女たちの物語でした。


とても好きな雰囲気です。


時間軸はバラバラですが、

どれも「山田屋」という小見世を舞台にしたお話です。


遊女が妹分を育て、その妹分がさらに

その下の妹分を育て、

遊女たちの系図が脈々と

つながっていきます。


そんな中で彼女たちは男に惚れて、

別の客に抱かれ、病気で死に至り、

絶望し自害する……。


どれも物悲しくて、切ない短編です。

諸行無常です。



お気に入りは表題作『花宵道中』と

その対になるような『青花牡丹』という短編です。


『花宵道中』では遊女・朝霧が祭りで出会った、

男との悲恋が描かれているのですが、

『青花牡丹』ではその男の視点で朝霧との出会いが

書かれています。


二人の出会いに、意外な事実が

あることがわかるんですね。

お見事な感じです。


もっとこの世界に浸っていたい、

そう思える作品でした。


宮木あやこさん、いいですね。

みやこのさん、勝手に名前出してスミマセン。

ありがとうございました。