「ふたたびの恋」脚本ってこうやって書くのかな | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

ふたたびの恋 (文春文庫)/野沢 尚

ロマンス:好好好 /5

脚本家の仕事って:ワクワクワクワクワクワクワクワク /5



野沢尚さんの「ふたたびの恋」を読みました。



『ふたたびの恋』

 脚本家室生晃一は休暇をのんびり過ごすために沖縄へ

 むかった。到着してタクシー乗り場で見かけたのはかつての

 教え子であり不倫相手でもあった大木新子だった。


『恋のきずな』

 ある日高校生の息子がサッカー部の友人・英介を夕食へ招待した。

 親元を離れている英介は嬉しそうに食事を平らげ聖子(さとこ)は

 そのそよ風のような笑顔に心を乱されていた。

 

『さようならを言う恋』

 離婚して1年半がたった妻からホテルへ呼び出された。

 息子をなくして一緒にいることが辛くなり別れる事になったのだ。 

 今さら何の用事があるのかと訝りながらホテルへ向うと……



久しぶりの野沢尚さんです。


3編とも恋愛ですが、どれもこれもドラマティックで

ロマンティクでほろ苦なお話でした。


個人的には「ふたたびの恋」で脚本家の室井が

元教え子(で元恋人)の大木と一緒に脚本のプロット作りをする

シーンにほほぉーと感心してしまいました。


野沢さんもこのように脚本を考えたのでしょうか。


不倫のドラマの脚本を任された大木がベテラン室井の

助けを借りて男女の設定を考えるシーン(以下抜粋・一部略)


室井「男の職業は」

大木「小学校の先生」

室井「何故」

大木「聖職者っていうモラルに縛り付けられた環境が、

   不倫の足枷のなるから」

室井「じゃ、女の方は?」

大木「普通の主婦じゃないかな。小さな子供もいて……」

室井「子供はやめておいたほうがいい。自分の母性とまで

    戦わなくちゃならない」

大木「だからドラマティックになるんでしょ?」

室井「七十五分の物語だ。風呂敷は広げるな」


物語をプロっぽい捉え方をしているのが

おもしろかったです。

室井と大木の関係がどうなっていくかというよりも

作中作になる不倫劇をどうやって終結させていくのか、

という点に興味がいきました。


子どもの頃の様子やおかれた境遇、トラウマまで

その人物をかなり丁寧に作るものなんだなぁ。



『恋のきずな』とか高校生と40歳の主婦の話なので

「ありえない感」はただよいますが、

結局、結末が気になって読み進めてしまいます。


『さようならを言う恋』はちょっと身勝手な元妻なほに

イライラさせられますが、まぁ、読めました。


野沢さん、やっぱり「展開」がうまいですね。

途中でガラっと状況が覆るという話が多くて、

驚かされます。