「水銀虫」これぞ正統派ホラーかもね | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

水銀虫/朱川 湊人

ゾっとする怖さ:ホラーホラーホラー /5

のめり込み:ワクワクワクワクワクワクプラスα /5



朱川湊人さんの「水銀虫」を読みました。



『枯葉の日』

 山中はコーヒーショップで女に出会った。力仕事がたたって

 腰を痛めていた彼の前に相席をしたその女は妙に馴れ馴れしい。

 どうやら街娼のようだった。


『しぐれの日』

 その冬の日に雨に降られ、行く場所がなかった薫は

 若い女性に声をかけられて部屋に入れてもらった。

 とても優しく接してくれる彼女の部屋の奥で何かの声が聞こえた。


『はだれの日』

 高志はその女を殺したために拘留されていた。殺した事を悪いとは

 思っていない。なぜならその女が生きていればさらなる被害者を

 生むからだ。高志の口から語られる姉の自殺の背景とは……


『虎落(もがり)の日』

 富士子は孫の健斗を連れて友人・雅江の家へ出かけた。

 雅江は孫の遼平を亡くしたばかりで精神的に不安定だった。

 是非健斗くんを連れて遊びに来て、と言われたが……


『薄氷(うすらい)の日』

 奈央はその日幸福な人生へのパスポートを手に入れるはずだった。

 事業に大成功している裕福な恋人からのプロポーズを受けると

 思い込んでいたのだ。


『微熱の日』

 信也は体調が悪いにも関わらず一真と秘密基地のある山の頂上へと

 向っていた。田舎で悪い遊びをするにはそれくらでないとすぐ

 見つかってしまうのだ。ところが途中で優等生の恒夫に出会ってしまう。


『病猫(やみねこ)の日』

 大学の図書館で事実上トップに立つ八重樫充にはうつ病気に

 なってしまった妻・綾子がいた。綾子を心配しつつも若く明るい性格の

 部下・会田奈緒子に惹かれてしまうのを止められない。



七夕ですが、ホラーです。


やはり朱川さん、何よりも先が気になる展開で

楽しませてくれます。


視覚的に怖い、と思ったのは『虎落(もがり)の日』と『微熱の日』

で、精神的に怖かったのは『はだれの日』でした。


『虎落の日』では富士子が友人宅を訪れたときにすでに

「生臭い臭いがする」と感じていて、何となくラストが読める。

予想通りなハズなのに、怖い……


『微熱の日』はひたすら表現が怖かったです。得体の知れない

無抵抗なものをいたぶっている子ども達が怖い。

その得体の知れないものがとてつもないを反撃しそうで怖い。

オチも怖い。

実はこの短編が一番怖かった。

若干、苦手意識すら感じる……


『はだれの日』は人の二面性がホラーでした。

初め”人殺し”として登場した高志に最後は思わず

賛同してしまいそうになります。

こういう裏表のある女っているよね……


いくつかお気に入りを挙げましたが、全編がそんなにムラもなく

おもしろくてサクサク読めました。


「予想通り」の展開が多いのに面白い。

怖い展開の「予感」があるから余計に怖い。


その怖さも正統派といった感じで、決してグロさだけに

頼っていないところが好印象でした。



ただ、表紙がすごいですよね。

何だかマンガの「もやしもん」を思い出しました。


非常にマニアックなことを申しますと、

このマンガで菌を体中にまとわり付かせている

おじいさんが出てきたんですが、

「水銀虫」の表紙、似てる……気がした。

もやしもん/石川 雅之