「よもつひらさか」すごくおもしろい"どこかで聞いたような話" | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

よもつひらさか/今邑 彩

月夜さんのブログでご紹介されていた今邑彩さんの

「よもつひらさか」を読みました。


不思議な話好きとしては月夜さんのレビュー内容にとても

惹かれました(^▽^)

ホラー短編集です。



『見知らぬあなた』

 近所の公園でバラバラ死体が発見された。

 他人事だと思っていたが一向に犯人が捕まる気配がない。

 ニュースで被害者の特徴を聞いた”私”はそれが自分のよく知る

 人物ではないかと思い始める。


『ささやく鏡』

 祖母の遺品の鏡を覗き込むと中学3年生だった”私”が行きたかった高校の

 制服を着てこちらを見ていた。

 「あれは恐ろしい鏡なんだから」

 祖母の最期の言葉の意味が分からなかった”私”はことあるごとに鏡を

 覗き込み未来の自分をうつし出した。


『茉莉花』

 作家・添田康子の本名はペンネーム以上にペンネームらしい

 ”茉莉花(まりか)”という。

 添田は父がつけたというその名前が大嫌いだった。

 その理由とは……


『時を重ねて』

 一枚の写真がある。

 教会の前に佇む男女の写真だ。

 実はこの写真は一見なんの変哲もないものだが実は”ありえない写真”

 なのだ。それは探偵をやっている”私”に旧友・小泉が依頼した

 浮気調査を発端とした小さな事件だった。


『ハーフ・アンド・ハーフ』

 妻の真由子に別れを切り出した。

 もともと半年の結婚生活だと約束していたため妻はあっさりと承諾するが、

 これから一緒になりたい女の話をすると驚きを隠せない顔をした。

 何でも折半することに執拗に拘る同性愛者の妻のとった行動とは……


『双頭の影』

 何となく足を踏み入れた骨董屋に置かれていた1万5千円もする小さな箱。

 店主は中には”話”が入っていると言う。小説のネタに困っていた”私”は

 それを購入してみることにしたが、中に入っていたのはろうそくだった。

 「これからこのろうそく一本分の話をしよう」

 そう言って店主が始めたのは双頭の影の話だった。


『家に着くまで』

 「お客さん、テレビに出ている人じゃない?」

 タクシーの運転手にそう声をかけられたので人違いの振りをして

 無視を決め込んだものの運転手があるニュースキャスターの死の謎解きを

 はじめその推理に思わず引き込まれてしまう。


『夢の中へ……』

 夜の学校へ忍び込む少年は楽しかった小学校時代を思い返していた。 

 今はすべてがむちゃくちゃになっていた。

 あの頃の夢の中で過ごしたい、その思いで少年はプールに飛び込む。


『穴二つ』

 良一はパソコンのメール交換にハマっていた。 

 妻帯者でありながら女性を騙って女子大生とメールしているのだ。

 ところが事態は思わぬ方向へと進み良一は追い込まれてしまう。


『違い窓』

 壁に掛けられた絵の様子がおかいしいことにはすぐに気づいた。

 どこかの外国の町並みが描かれているその絵の中のアパートメントの

 鎧戸が前に見たときと違って開いている。


『生まれ変わり』

 夜のコンビニで出会った女は叔母にそっくりだった。

 叔母は22歳という若さでこの世を去った。

 叔母のことが大好きだった子どもの私に生まれ変わったら結婚しようね、

 と言ってくれたのだ。コンビニで出会った女は年齢的にも容姿も

 ぴったりで叔母の生まれ変わりに違いないと思い……

 

『よもつひらさか』

 ひとりでこの坂を上ってはいけない。

 なぜなら死者がやってくるからだ。

 そんな昔ながらの伝承がのこっている「よもつひらさか」で

 貧血を起こしてしまった”私”に一人の男が水を飲ませてくれて

 介抱してくれた。


                      (以上全12編)



全部おもしろかったです。

お気に入りを決めるのは難しいですが、やっぱり表題作の

『よもつひらさか』でしょうか。


典型的な怖い話の形態なのですが、雰囲気や話の持っていき方が

”ホラーらしく”って好きです。


全体的に何となく先が読める話だな、と思わせておいて最後に

「お!」と思わせる結末が用意されているという展開が多かったです。


でも決してマンネリや飽きがくる感じじゃないんですよ。

不思議ですが。


12編の短編なのですが、何編か読んでいるうちに

最後は必ずおもしろい結末になってるだろうという妙な安心感があり、

早く読み終ってしまった。

ちょっともったいなかったな。


読み終わってストーリーだけ追うとあまり目新しくない感じはするんです。

どこかで聞いたような話、なんですよね。

でも引き込んで”読ませる”文章です。


どこかで聞いたような話で、ちょっと考えてみたんですが、

小学生の頃に流行っていた七不思議とか怖い話の展開に

何となく似ている。

『ささやく鏡』とか『ハーフ・アンド・ハーフ』『よもつひらさか』なんかは

特に。

似た話があった気がします。

怖い話や民話、伝承好きなとしても今回読んだこの作品楽しめました。


まさに今「紫色の鏡」という怪談を思い出してしまいました。

知っている方はいるでしょうか。

20歳までおぼえていたら死ぬという時限爆弾付きの怪談です。

20歳を過ぎて思い出した場合は「無効」だといいな……