「人は思い出にのみ嫉妬する」死んじゃうのはズルいね | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

人は思い出にのみ嫉妬する/辻 仁成
辻仁成さんの
「人は思い出にのみ嫉妬する」を読みました。
辻さんはお久しぶりです。

カタリテである”私”が栞と戸田の複雑な

恋愛を小説のように語る。


戸田と周愛麗(ジョウ・アイリエン)は恋人同士で

栞は愛麗の妹のような存在。

三人多くの時間を共有していた。


しかし愛麗の突然の死によって

その関係は終わった。

戸田に恋心をもっていた栞は傷ついた

戸田の側で支え続け、

やがて恋人のような存在となる。

ところが戸田の愛麗との思い出が

栞の心を乱し、二人の関係をも

脅かし始める。



後書きに書いてあったのですが、

これは実話を小説向けに脚色した

物語らしいです。

どこまでが実話なのか分かりませんが、

結構悲しいお話でした。

でも現在主要な登場人物のモデルさんたちは

とても幸せそうだ、ということなので

ちょっと救われた(^^;)


”思い出”だけは動かせないし、

どんなに頑張っても勝てない。

それが既にいない人間との思い出だと

美化すらされてしまう。

だからいい思い出を作って

さっさと死んでしまう人って

ズルいなって思っちゃいました。


自殺を安易に考える人はちょっとそこの

ところも気付いて欲しいですね。

その人との思い出が

これから生きていかなきゃならない

人も縛り付けることになるわけだし。


精神的に追い詰められた

栞が”未来の思い出”を語り出すシーン

は痛々しく感じました。

詳しい状況はネタばれになっちゃうの

で書けませんが、ちょっと泣きそうになりました。


乙一さんの「失われた物語」を

ふと思い出した。


久しぶりの辻さんは

相変わらずちょっと悲しい気分にさせて

くれました。