「八丈砥石工房」 〜八丈島産天然砥石を作る〜 | 八丈島観光協会blog

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みなさんは天然砥石を使ったことがありますか?

料理に使う包丁や刃物の切れ味を保つために欠かせない砥石、市場に出回っているそのほとんどが人造砥石です。昔に比べると今の人造砥石は質の良い製品が多くなりました。
しかし職人の域となると頑なに天然砥石を求める声も少なくありません。
昔の宮大工は天然砥石によってその腕が磨かれたといわれています。

国内の天然砥石の産地としては京都や熊本が有名ですが年々生産量が減少しています。
海外ではドイツ産やベルギー産、米国・アルカンサスストーンなどが有名ですが、いずれもその原料である石の埋蔵量が少なくなり世界的にみて天然砥石の希少性は年々高くなっています。

そんな天然砥石の原石が東京の八丈島にある。

八丈島の石から天然砥石を作る八丈砥石工房を訪ねました。



八丈砥石工房を構える高橋栄治さん。八丈島の自然と石に魅せられ東京・板橋区から昨年2014年2月に中之郷へ移住してきました。

島に来る前は都内の病院に勤務し、施設の保守管理をされていました。若い頃には石材を扱う仕事もされており、石に対する知識は豊富。その腕を買われて手術に使うハサミやメスを頼まれて研ぐこともあったそうです。

本格的に砥石を作るようになったのは約3年前。釣り好きで八丈島にはよく通っていて、島にある石が砥石に使えることを知ったそうです。
八丈島の物件を探していると運良く空き家が見つかり、これを機に島への移住を決心されました。




中之郷にあるラーメン店「蓮華」、向かってその右隣にあるのが高橋さんの工房です。
自宅に併設された工房の総工費はおよそ4万円!
知人からサッシやタイルなどの廃材をもらい、自力で砥石工房を建てられたそうです。



決して広くない工房の中では材料の石が無造作に置かれ加工される順番を待っています。
砥石になるのは粒子の細かい凝灰岩や泥岩。これらは粘土や泥が堆積して地中の圧力で固められた物。それが長い年月を経て地表に露出してきたとみられます。





電動石切断機の前に立つ高橋さん。
硬い泥岩や凝灰岩の原石をダイヤモンドカッターで切断します。油断すれば大事故にもなりかねない作業を長年の経験や知識を活かし慎重に進めていきます。
工房内に響く大きな機械音、カッターと石が接触する部分に水をかけながら摩擦熱を冷まし、好きなサイズにカット。



切断後は研磨作業に移ります。その際に使う研磨材も全てダイヤモンド。
こうしてただの石が高橋さんの手によって磨かれて貴重な天然砥石となるのです。







高橋さん自慢の砥石を見せていただきました。表面を水に濡らすと石が持つ独特な光沢が出て、天然砥石の風格が感じられます。

八丈島産天然砥石の最大の特徴は世界的にも珍しい「水でも油でも研げる」仕上砥石
デュアルストーン、マルチストーンだということ。

人造砥石はしばらく水に浸してから使いますが、天然砥石はその準備は必要ありません。使う前に水でさっと濡らしたり、油を軽く塗ればいいのです。

使う油は油砥石専用油(オイルストーン用)、ミシン油、食用油(熱を通していないごま油や大豆油等の抗酸化油)。椿油も酸化しづらいので適しているそうです。
ただしオリーブ油や熱を通した油は酸化しやすく、砥石の目を詰まらせてしまうので使用不可です。





手先が器用な高橋さん自作の柄付砥石。ニッパーやハサミなどの通常の砥石では難しい部分を研ぐことができる優れもの。
石と道具を知り尽くした高橋さんならではの砥石です。



貴重な天然砥石は、どのような原石なのでしょうか?

高橋さんの案内で工房の周りを散策しました。

工房に近くにある玉石垣を指さし、この玉石にも砥石に適した石が使われているのだそうです。
江戸時代に八丈島に流された流人が荒波によって削られた玉石を海岸から運び作られたといわれる玉石垣。最も有名なのが大里地区ですが、ここ中之郷にも玉石垣の風景を眺めることができます。
三根や大賀郷の坂下地区のほとんどの玉石は砥石に向いていない物が多く、中之郷の玉石の方は砥石に適している石が多いそうです。

高橋さんは言います。砥石に向く石は粒子が細かく重さもある。大里地区の玉石は中之郷の物と比べて比較的軽い石が多い。きっと流人はなるべく負担のないよう同じ大きさでも軽い石を選んで運んだのではないだろうかと。

玉石垣が場所によって石の種類が違うというのは気づきませんでした。
石を熟知している高橋さんならではの視点にとても感心させられました。


大きなスダジイの木が工房の近所に立っていました。いくつもの大きな根が剥き出し、その巨木を支えています。



その根の中に食い込むように露出している玉石。これも砥石に加工可能な原石だそうです。畑を耕して畝作りの時に出た石を知人からもらったり、本来なら希少な石が八丈島では手に入るそうです。
まさに八丈島という大自然からの贈り物です。
(※八丈島では自然公園法等により自由に石を採取ことはできませんのでご注意ください)



中之郷にある農産物直売所「えこ・あぐりまーと」。
こちらで八丈砥石工房の天然砥石を購入することが出来ます。お求めやすい価格の砥石から本格的な砥石までバラエティに富んでいます。
2105年八丈島産業祭にも初出品し、見事初入賞を果たしました。
島内の飲食店で使用されている所もあり、その需要はますます増えています

現在、島内だけでなく下記の取り扱い店でも購入できるようになりました。
天然砥石の持つ品質と使い心地をぜひお試し下さい。



天然の八丈砥石は全て一点もの。購入すれば一生お使いいただけます。
日本料理は年々その価値を高めて世界的に有名になりました。ただしそれを作るにはよく切れる包丁が必要です。鋭い切れ味を保つためには質の良い砥石は不可欠な存在。
いい砥石にこだわる料理人も多く、日本の包丁や研ぎの技術に興味を持つ外国人も少なくありません。

希有な天然砥石を求めて外国の方が八丈島に興味を持ってくれたり、島に来てくれたら嬉しいと高橋さんは語ります。

東京・八丈島産天然砥石、メイドイン東京・メイドイン八丈島の逸品が世界の人々に使って頂く日もそう遠くはありません。

水でも油でも研げる天然仕上砥石「八丈砥石」。

高橋さんの挑戦は今始まったばかりです。


【八丈砥石取扱店】

島内
・民芸あき本店    TEL 04996-2-2093
・民芸あき空港店   TEL 04996-2-3939
・えこ・あぐりまーと TEL 04996-7-1808

島外
・釜浅商店(浅草合羽橋)
 東京都台東区松が谷2-24-1
 TEL 03-3841-9355

・森平(高級刃物・天然砥石販売店)
 東京都台東区浅草橋1-28-6
 TEL 03-3862-0506

・東京愛らんど 特産品 Shop 「TOKYO ISLANDS CAFE」(ハート型砥石の販売)
 東京都港区海岸1-12-2 竹芝客船ターミナル内
 TEL 03-5472-6559




天然仕上げ砥石 製作・販売
八丈砥石工房

〒100-1623 東京都八丈島八丈町中之郷1696-2
TEL   04996-9-5996
E-mail toishikobo@kyj.biglobe.ne.jp
H P http://www7b.biglobe.ne.jp/~hachijo_toishikobo/index.html

八丈砥石工房は、八丈島観光協会 の会員です。