そのうち、景子は、部屋からほとんど出てこなくなり、私が部屋に入るのも嫌がりました。

 

部屋はどんどんひどい状態になっていきました。

もちろん、勉強どころではなかったので、成績も下がっていきました。

 

景子は、イライラして激しく感情を爆発させる日と、暗く落ち込む日の波が、大きく小さく日々繰り返されていました。

いじめがあった訳でもなく、学校に行かない理由を聞いても「わからない」としか、言いませんでした。

それは、私にとって、眼に見えない敵との壮絶な戦いでした。

 

一日の戦いは、朝の余裕が一番ない時間に始まります。

 

先ずは、ベットから起きれない。

何度も何度も部屋に行って、不機嫌にならないように気を使いながら、起こすのはとても神経を使います。

  

この頃から特に、夜更かしが目立つようになっていましたから、起きれないのは当然です。

時に大声を出したり怒鳴ったりと、とにかく起こすだけでも必死です。

 

やっと起きて着替えを始める後ろ姿を見て、ほんの少しホッとします。

他の子どもたちも学校へ行く支度をしながら、自分は動きながらパンをかじるような朝です。

 

 やっと着替えて玄関で靴を履く姿に、胸をなでおろすと

その瞬間

景子は玄関に座りこみ、お腹が痛い頭が痛いから始まり、「行けない。行けない。」と泣き出します。

 

私の出勤時間は迫るし、仕事に遅刻なんかできません。

 

苛立ちと切迫感と悲しみが入り混じりながら

なんとか景子が学校に行けるために、私は何をしたらいいのか?

その事を必死で考えながら、時間にジリジリと追いつめられていきます。

 

この一日の登校が、明日の不登校に繋がると思うと私も必死です。

 

「時間がない。時間がない…」頭に何度も、その言葉が鐘を鳴らしたように鳴り響きます。

景子は泣きだします。

 

「泣きたいのは私の方!」

 

と、怒鳴りたくなるのを必死で我慢するだけで精いっぱいになります。

 

夫は、とっくに出社してしまい、他の子も学校に行った後の、景子と私の二人の真正面からの死闘です。