「おい!タカや!!」
来た……。
ガガが突然、声を張り上げた。
パソコンをカタカタ、文章を打ち込んでいた僕の指が止まる。
今日は一体何事だろうか?
「どうしたんですか?」
僕は聞く。
まあ、いつものように大したことではないだろう、とは口には出さない。
「意味だがね!!意味の意味を履き違えている輩のなんと多いことよ!!」
「意味? 一体なんの意味ですか?」
まさしく意味がわからない。僕は眉間に皺を寄せて聞き返す。
「我は、『やりたいことをするのだ』と言ったがね」
「言いました。思ってもやらない人が多いのだと」
興味を持っても、やりたいと思っても、いろいろと理由をつけて行動しない人が多い。
ガガは常々、そう言っている。
やりたければ行動する、それが大事だと。
「おまえ!!ちゃんと伝えると言ったではないか!!」
クワ―――っ!!!ガガ、激高。
とはいえ、何を言いたいのかわからない。
困った……。
するとそこに、
「ガガさん、落ち着いて下さい」
黒龍号が現れた。
「黒龍さん!!助かりました!!」
僕を守ってくれている龍神様。
頭は固いが、理論派で細かい説明が得意なのだ。
「じゃ、黒龍さんに説明してもらおうよ。ガガ、興奮しててうまく説明できなさそうだからさ。ま、落ち着いててもわかりにくいけど(笑)」
妻、ワカがカラカラ笑いながら言った。
僕と龍神さんとの会話はすべて妻、ワカを介して成り立っている。
「ガガさんが言いたいことはつまりこういうことです」
黒龍さんの話によると、ガガは僕たちが「やりたいことをする」という話をした後に、こんな人たちを見つけたらしい。
・レストランで大声で騒ぎたい
・車で制限速度を超えてぶっ飛ばしたい
・子供の面倒を放棄して遊びに行きたい
「やりたいこと」だからやってもいいんだよな。だって、おまえらやりたいことをやろうよってオススメしてるじゃん。そのほうがうまくいくんだろ?
まあ、簡単に言えばそういう人たちだ。
「キエーーーっ!!!我が言う『やりたいこと』とはそういうことではないがね!」
ガガはもう一度叫ぶと、こう続けた。
「『本当にやりたいこと』というのは何があっても『したことを後悔しないこと』なのだ」
「もし失敗しても、自分がしたかったのだから!と納得できるということですか?」
どうどうどう。僕もガガを落ち着けようと続ける。
「さよう。レストランで騒いで叱られても、スピード違反で捕まっても、子育てを放棄して家庭不和になっても。それは自分のやりたかったことだから、と後悔しない、納得できるのであれば勝手にすればいいがね!!!」
しかしだ!ガガはその大きな口をこれ以上ないくらいに開けて言った。
「そういうヤツらはみんな決まってこう言うのだ。『やらなきゃよかった』とな」
僕はガガの声を聞きながら、うなずいた。
なるほどね。そういうことか・・・。
「それは『やりたいこと』と『ただのわがまま』の違いですね」
僕の言葉に、そうなのだとガガが言う。
少し落ち着いたのだろうか。
「だから『やりたいこと』をするのには覚悟がいるのだ。その行動を誰に批判されようと、変な目で見られようと、後悔しない。そういう覚悟だ。」
「でも、他人の反応でやったことを後悔するのであれば・・・」
「それは本当にやりたいこととはいえんがね。なぜなら『他人の評価』の方を優先する、その程度のことだからな」
ガガは僕の方に顔を向けて続ける。
「タカや。おまえ、選挙落ちたろ。その時、泡まつ候補だとか、バカなことしたとか、散々言われたよな」
「ええ。言われましたね」
僕を憐れむような目、バカな男だなという目、どうせ利権目当てだったんでしょという陰口を思い出す。
ま、バカな男だという意見には賛成だけど(笑)
「おまえ、後悔したかね?」
「いえ、一度も後悔したことないです。だって本気でしたから」
震災の時のひどい政治をみて、本気でなんとかしたいと思ったんだ。後先なんて考えていなかった。
「それが我の言う『本当にやりたいこと』だがね。絵を描きたい、歌を歌いたい、本を書きたい、人にはいろいろな夢がある。本気でやりたいと思ったらすればよいのだ。本当にそれがやりたければ他人の目なんか気にならんがね」
本当にやりたいこと。それはしたことを絶対に後悔しないこと、か。
やってから結果次第で
「やらなきゃよかった」「しない方がましだった」
と言う言葉がでるうちは、まだまだだということだ。
ガガはすごい。本当にすごい龍神様だ。
僕は心からそう思った。
すると
「話は変わるが!!」
ガガが声を上げる。
「我はチョコレートの海で泳ぎたいがね!!」
「はっ?」
目が点。オイオイ、せっかくここまでいい話風に来たのに何言いだすんだよ(=◇=;)
「我は知ってしまったのだ。チョコレートの噴水が存在することを!!人間がそこに棒を突っ込んで食べておるがね」
「あ、チョコレートフォンデュね……」
ワカが困ったように声を上げる。
「すぐにそれを用意したまえ!!その中で泳いでみたいがね!!今すぐ!!」
チョコレートまみれの龍神様。
というか、甘くてなんだか美味しそうなんですけど・・・。
「ガガさん、チョコの噴水に飛び込むとベタベタになっちゃいますけど、後悔しませんか?」
「しないがね!!」
……。説得には時間がかかりそうである……。
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今日もご愛読ありがとうございました!!