TPPを慎重に考えてみる

TPP(Trans-Pacific Partnership = 環太平洋経済協定 あるいは 
Trans-Pacific Strategic Economic Partnership = 環太平洋戦略的経済連携協定)
のメリットデメリットを比較してみました。
結論から言えば、日本人の大衆側にとっては派遣法解禁を超える不味い事態になります。
まずTPPとはどういう物かという事についてですが、これは以下の資料を

TPPとは-新語時用語辞典
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の概要と意義   石川 幸一 (財) 国際貿易投資研究所 客員研究員
ちなみに石川氏はTPP賛成派で、こちら の記事も書いております。
又、EPA (Economic Partnership Agreement = 経済連携協定)の概念も混ざるかもしれません。まとめとしては

  1、基本的に関税が100%撤廃され、例外が極めて少ない(カナダの交渉例を考えると皆無かもしれない)
  2、投資・労働・環境も相互補完していく つまり人と金の流れの自由化

この二つが主な特徴に挙げられます。その上で、各効果を自分が手に入る資料と分析能力の許す範囲で比較します。

1、関税撤廃によるGDPの影響

 メディアではTPPの問題を 農業 対 それ以外の全ての産業 に捕らえ、経済活動を取るか自給率を取るかという問題に挿げ替えてますが、とんでもありません。TPPは全ての関税を撤廃します
日本の関税率に関しては実行関税率表 をごらん下さい。関税廃止により被害を受ける産業は以下の物です。

1、壊滅的被害を受ける物とその理由 ()内はその産業のGDPでの規模
 ・農業  漁業  酪農 等 一次産業の全て(6.5兆円) : 大幅な関税低下
 ・食品加工業(12兆円) : 国産材料の調達難 海外加工輸入品の関税撤廃
 ・伝統的工業品  製材業界 (9000億) 靴や革製品  : 度重なる体力低下 + 関税撤廃
2、大幅な経営環境の悪化が予想される物とその理由 GDPでの規模
 ・運送業(23兆円) : 上記産業が衰退する事により取引相手激減
 ・卸売業(40兆円) : 上記理由に同じ。海外生産では流通段階の最終部分しか卸売り余地が無い。
3、上記ほどではないが経営環境悪化が予想される物。
 ・現時点で無課税である機械工業品を除く全ての製造業
 ・内需に依存する国内3次産業

木材・繊維自由化で起きた事を考えれば、 2極化→極一部のブランド以外死滅 或いは 海外生産への切り替え により、1次産業と食品加工業の7割から9割程度が国内では停止すると見ております。大幅な経営悪化を強いられる所は半減し、そうでなくとも経営環境の悪化により体力が弱い1割から2割程度が廃業する業界もあるでしょう。
具体的な試算は、各業界に頼んで被害予想を算出し、それを集計しなければならないでしょうが、数十兆円規模のGDPに対する打撃は確実だと見ております。失業者も数百万人 悪ければ一千万人に登るでしょう。

2、人や金の流れの自由化による影響
 人の自由化という事は移民の解禁を意味します。その弊害については移民問題 人権擁護法案 外国人参政権 文化侵略 人口爆弾 雇用喪失 といったキーワードがそのまま当てはまりますので、それらのサイトの参照をお願いいたします。
一つだけ動画リンクを オランダの悲劇

3、TPPによるメリットの検証
 メディアや菅周辺の人間はこぞってメリットを強調しますが、ここでは軽くその論理の危うさに触れておきます。

1、TPP加入により貿易が大幅に伸びる論 に対して
 相手国の工業品の関税(WordlTariff より)はアメリカで3%から5%程度です。途上国は関税率が高くなる傾向にありますが、貿易規模は小さいです。
 相手国での販売価格が ドルで見た原価 + (円で見た人件費÷1ドルの値段) とすれば、3%の関税低下は原価4割 1ドル80円で5円程度の円安に相当します。小さくは無い額ですが数十兆の損失を埋める事にはなりません。
 為替変動も忘れてはいけません。日本は貿易規模が大きい為、輸出が大きく伸びれば即座に円高によって修正されるでしょう。国内産業と農業を犠牲にして得た物があっさり失われる訳です。

2、企業利益改善で雇用が伸びる論 に対して
 企業利益が伸びればその全てが日本の労働者に還元されるのであれば正しい論理でしょう。しかし、工場の海外移転 逆輸入 労働分配率の低下 といった現実の前に対しては儚い理屈です。

3、早い内から枠組み作りに参加するべき 論に対して
 尖閣問題であれだけグダグダなのに、複雑な経済協定でアメリカカナダオーストラリアを相手に日本が有利な話し合いを進められると考える方が・・・

4、TPP加入により、日本に起こりうるリスク
 上記の推察を総合して考えれば、TPP加入により日本に起こりうる事は

1、国内経済の崩壊 及び 膨大な失業者 : 大段落の1より
2、海外への工場移転の加速 : 加工製品の関税までもが撤廃される為、国内で加工するメリットがなくなる
3、大量の移民 なし崩し的な外国人参政権等の可決 : 大段落の2より
4、食の安全の崩壊 : 2極化と低価格品が輸入品に駆逐される為、大衆向け国産食品がなくなる。皮肉にも極一部の安全な国産ブランド食品を食べるのは、食の安全を崩壊させた張本人達のみになる。
5、デフレの加速 : 輸入品により物価指数が下がり、同時に失業者が増える。結果更なるデフレが待っている。
6、食料という致命的弱みを作る : 自力で食料生産が出来ない為、国防面では海上封鎖だけで戦えなくなり外交面では食料輸出カードが致命的なカードになり、金融面でトレーダーに絶好の攻撃材料を与える
7、超長期で見た場合 日本という国の崩壊 : 国内生産力低下によるハイパーインフレ 移民増大・少子化加速による日本人のマイノリティ化  税収低下で社会維持機能全ての崩壊

5、TPP加入に対する代案
 TPPのメリットは結果的に海外販売価格を下げる事です。これは円安によっても達成されます。
デフレ、円高こそが日本経済を20年にも渡り衰退させてきた原因ですから、その対策は積極財政と金融緩和しかありえません。。
中央銀行制度は借金と引き換えにお金を生み出す 制度ですから、借金をなくせ(=この世の円を消滅させろ)などという亡国論など無視して、国債を増やし、日銀に引き受けさせ、財政出動により適切な量のお金を民間に供給すれば円高は緩和されるでしょう。
今の状態であれば、年収400万で公務員の無条件採用を行うぐらいの事が必要だと考えます。結果労働者年収の下限が400万になれば住宅ローンと教育等で500兆を超えるリバウンド的な経済効果が期待できます。
ここの部分に関してはまたの機会に詳しく書きます。

総括
 日本にとってTPPは非常にリスクが高いでしょう。むしろ 日本を焼畑にして短期収奪をする としか思えない内容です。仮に上手くいくとすれば、まず円高・失業問題を先に解決し、逆輸入に強い規制を設けるが絶対条件です。現時点では私としては断固反対です。

追記
 能力・資料・気力・時間等の制約があり、現時点では十分に信憑性のあるデータが作れません。意見 間違い 資料提供等ございましたら気軽にお願いします。TWITTER もやっております。又、当ブログはリンク・著作権フリーです


1、財政問題。
 人口統計を利用し、推定予算を出す。





平成18年度の人口推計によると


http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02020101.do?method=extendTclass&refTarget=toukeihyo&listFormat=hierarchy&statCode=00200524&tstatCode=000000090001&tclass1=000001011679&tclass2=&tclass3=&tclass4=&tclass5=
0歳~15歳 の日本国籍の子供は230万人。
一人当たり2,6000円 修正案の年6回の計15,6000円とすると、3,588億円。
但し、外国人に対する金額は、不明。

財源の問題は2つの評価に分かれる。
① 財政規律を維持する場合。
2010/03月 の時点で日本の国債残高は895兆円。長期金利は1.3%。
2010年の推定利払い金額は推定およそ10兆円。
子供手当ての金額は日本人に限定した場合においては、利払い額の3%程度に過ぎず、子供手当てその物が直ちに日本の財政を悪化させる事は無いであろう。
国債の利払いという、子供手当てよりはるかに大きな問題があるためである。

② 財政規律を破棄し、日銀国債引き受け あるいは政府紙幣のような大掛かりなインフレ転換を行う場合。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100216/212780/graph01.jpg (名目GDP推移)
  インフレ目標をどの程度掲げるかによって変わって来る。
  インフレ目標2%であれば、名目GDPの伸びは10兆円程度。過去の財政出動より乗数が4として、財政出動規模は2.5兆円。子供手当てにインフレ財源の15%程度を使う事になる。
 他との兼ね合いで議論する余地があるだろう。

  次に失われた20年を取り戻すような過激なインフレを望む場合。すなわち年率10%以内 10年で100%程度のインフレ目標を掲げた場合。
 この場合、財政出動規模は乗数が4のままとし、10兆円規模の財政出動が必要となる。
 子供手当て財源は3%程度であり、もはや目玉とすら呼べない規模であろう。この場合には財源の面では全く心配ない。但し、貯蓄もその分減損する為、政治的な対立を乗り越えられるかが問題となる。

以上により、子供手当ての財源自体は大きな問題にならないと結論づけられる。
また、子供手当てにより子供の数が増え、支給額が増えた場合は、それは将来の人口増が望まれるので予算を増やして問題にならない。強いて上げれば世帯辺りの上限を設けるぐらいであろう。
ただし、この結論は対象を日本人に限った場合のみの話であり、特に海外政府やマフィアが悪用した場合規模が跳ね上がる事が予想される。