―GOAAAAAALLLL!!!―
テレビ画面には青葉が使うキャラクターのガッツポーズが表示されている。
「やった~。また勝ったよ~」
「なんでヘビー級キャラで勝てるんだよ!」
「ふっふっふ~、ライト級キャラも確かに速いけれど、使いこなせば実はヘビー級の方が早いんだよ~」
「くそー!もう一回だ!」
 
俺は今、青葉(あおば)の部屋でゲームをしている。
ちなみに、現在プレイ中のゲームは「みゃりおカー ツインダッシュ」というゲームだ。
「やっぱり家で遊ぶときはプレーキューブが一番だよね~。最近発売した『うぇーいww』も悪くはないと思うけど、どっちかといえばネット中心だからね~。あ、次、スマシスでもやる~」
「おっ、懐かしいな。おれの『フォッ娘』でリベンジしてやるぜ!」
 
「スマシス」とは、「大戦争スマッシュシスターズ」の略である。
プレーキューブの発売会社のキャラクターが作品の枠を超えて戦うバトルものだ。
「じゃあ私は『きゃぴー』かなぁ~」
簡単に説明すると、「フォッ娘」はスピード重視のキャラクター、「きゃぴー」は復帰力の高いキャラクターと言ったところか。
「ストーンしか能のないピンクの悪魔など、俺のフォッ娘のコンボでめっためたにしてやるぜ!」
「いつまでも昔の私じゃないことを思い知らせてあげるよ~」
 
―結果―
 
「ぐあー!!なんでそこでストーンがあたるんだよぉおおお!!!」
「フォッ娘はスピードも速いけれど、決め技の上スマッシュを使うときに一瞬硬直があるんだよ~。お兄ちゃんは下投げから上スマッシュのコンボが多いしね~。まあ、口で言うと簡単だけど、実際抜けようと思うとタイミングがシビアなんだけどね~」
ちくしょう……完全に読まれていたということか……。
「それにしても、ゲームなんて久しぶりだなぁ」
「そうだね~。私も最近はどっちかというとパソコンゲームで遊ぶことが多いからね~。久しぶりにプレーキューブで遊んだよ~。あ、ちなみに、最近遊んでるゲームはね~」
「い、いや!出さなくていいから!!」
 
何を隠そう、青葉はエロゲをこよなく愛するエロゲーマーなのである!
 
「じゃ~ん!『四葉の日々』だよ~。双子の義妹が可愛くてたまらないんだよ~」
しかもなぜか妹属性を持つキャラを異様にプッシュするのである!
なぜか自分が妹のはずなのにっ!
「好き好きオーラを出しているのにいざお兄ちゃんへの想いを意識すると控えめになっちゃう妹、強がっているけれどもお兄ちゃんへの想いを隠し切れていない妹、どっちも可愛いよ~」
そう言いながら、青葉は頬を染めながらゲームのパッケージに頬ずりする。
そんな青葉をみて、思わず普段感じていた疑問を尋ねる。
 
「なんで青葉は妹キャラばっかり好きなんだ?」
 
尋ねた瞬間、青葉がこちらを見て答える。
 
「わからないの?」
 
不意に声の調子が変わり、普段は見せない真面目な表情に変わる。
青葉は、俺の前まで近づき、頬に手をそえる。
「私が妹キャラばかり好きなのは……」
少し頬に朱がさし、潤んだ瞳で俺のことをじっと見つめる……。
「あ、青葉……」
か、顔が近いっ!こ、このままじゃ!キ――
 
「なんてね~」
「へっ?」
突然、青葉は普段の様子に戻る。
「お兄ちゃんは何を期待しちゃったのかな~」
いつもの、ふにゃっとした、少しからかうような感じの表情。
「あ、青葉ー!」
「その様子だとアプローチは大成功みたいだね~。これで私のアプローチは終了だよ~」
青葉はにこやかな顔でそう伝える。
「まったく……一瞬本気かと思ったじゃないか。じゃあ、俺はもう帰るよ。ゲーム結構楽しかったぞ」
「私も楽しかったよ~。また時間があったら遊ぼうよ~」
「おー、そのうちなー」
そう言いながら、俺は部屋を後にする
―バタン―
 
「……本気だと思ってもらっても、私はよかったんだけどな~(ぼそっ)」